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Tシャツとサンダルの候

肥薩線 観光列車の旅 その弐

 

人吉駅周辺で、次の発車まで1時間ほど時間を潰さねばならない。

かと言って、うっかりすると溶けてしまいそうな暑さだ。

家内の提案、

 

「すぐ近くに青井阿蘇神社があるよ。ものすごく由緒があって・・・」

 

などは、

 

「暑い!まっぴらだ。」

 

娘達に、一刀両断で否決された。

娘達の判断は、至極真っ当と言わねばならぬ。

私も即座に同意したのは、言うまでもない。

結局、涼みがてらに喫茶店で時間を潰した事は、前回書いたとおりである。

時間になり駅に戻って来たら、ちょうどタイミングよく、からくり時計が賑やかな音を奏でていた。

庄屋どんに扮した人吉の殿様が、城下を見物しながら、温泉や球磨焼酎を楽しむというストーリーになっているんだとか。

これから私らが乗るキハ型車両『いさぶろう・しんぺい』である。 

この観光列車の場合、下り線では『いさぶろう』の名で呼び、上り線は『しんぺい』と呼ぶようになっているが、使われる車両は同じである。

因みに『いさぶろう』も『しんぺい』も、肥薩線建設当時の逓信大臣と鉄道院総裁の名から付けられているとの事。

 

それでは乗車しよう。

落ち着いたトーンの内装。

 

ではでは、

人吉で買った駅弁鮎寿司をば。

 

モグモグ


うん。

思い描いてた通りの味わいである。

何の衒いもない、昔ながらの素朴な姿寿司の味だ。 

これがいいのだ。伝統とはそうしたものだろう。

大畑(おこば)駅

 

何だかわからないが、ここに名刺を張ると出世するのだそうだ。

凄まじい量である。

 

この路線の魅力は、スイッチバックと山の地形を生かしたループ軌道である。

大畑駅を発車するとすぐに、スイッチバック軌道に入る。

向こう側のレールがそれである。

少し傾斜が付いているのがわかるだろうか。

説明が下手で恐縮だが、列車はZ型の軌道を、進行方向を変えながら登っていく。 

列車が一段目の軌道の終端で一旦停車すると、

運転士はハンドルを持って、最後尾の車両へと移動しなければならない。

2段目は進行方向が変わるためである。

次に2段目の終端まで来れば、再度列車は一旦停車。

今度は最後尾から先頭車両に、運転士は移動する事になる。

スイッチバックの運転手は、誠に忙しいのだ。


その後はループ軌道で、標高を上げていく。

先ほどのスイッチバックポイントが、車窓のはるか下に見えてきた。

画像では、上側真ん中やや左寄りに見えるのがそれだ。 

矢岳駅。

標高536mにある高原の駅である。 

ここには、D51の展示がある。

 

矢岳駅を過ぎると、日本3大車窓に差し掛かる。

韓国岳を主峰とする霧島連山が一望できるポイントである。

線路上ではあるが、ここで列車は暫時停車。

生憎とこの日は、頂上付近は厚い雲に覆われはしていたが、


「窓をお開け頂き、爽やかな高原の空気と共に、存分にこの景色をお楽しみください。」(アテンダント) 


真幸(まさき)駅

この路線2回目のスイッチバックの箇所である。

列車背後の段差の上にはレールがあるのだ。

この段差を見れば、スイッチバックの高低差が良くわかるだろう。

ここでも当然ながら運転手は、車両を行き来せねばならぬ。

真の幸せという語呂で、この駅も人気らしい。

 

幸せの鐘を鳴らすオバサン。


・・・いい歳こいて

「なに!」


い、いや、なんでもない。 



いさぶろう号は最終の吉松駅に到着した。 

ここでは同じく、キハ型車両『はやとの風』と乗り換えである。

本日3番目の観光列車が、ホームに侵入してきた。 

サンルーフがある展望デッキが特徴。

 

『いさぶろう・しんぺい』とは打って変わって、明るい色調のインテリアとなっている。

 

漆黒の塗装に金文字。

外観も中々に格好いい。 

大隅横川駅

駅舎の柱には、米軍による機銃掃射の跡が今も残る。

嘉例川駅

GWにこの駅に訪れたことが、今回の観光列車の旅を思いつくきっかけとなった。

 

 

明治36年開業の肥薩線最古の駅舎である。

 

そして何より、会いたかったのが・・・ 

あらら。

・・・にゃん太郎。

 

大丈夫だろうか?

駅長としての任務はそこそこにして、ゆっくりと療養してほしいものだ。 

 

隼人駅を過ぎると、錦江湾沿いを列車は走っていく。

「皆様、左手に桜島が見えてまいりました。横にたなびいている灰色の雲の様なものは、噴煙でございます。」(アテンダント)

 

おお、なるほど。


そして、

 

「皆様、当車両は最終の鹿児島中央駅に近づいてまいりました。」(アテンダント)

 

どうやら、列車旅行も終わりに近づいて来たようだ。

終着駅鹿児島中央駅である。

ここで、久留米までの九州新幹線に乗り換えだ。 

700系さくらに乗り込む。

さあ、帰ろう。

18時7分鹿児島を出発だ。

 

そして当然、新幹線での晩御飯は、

こうなる。

 

『えびめし』

鹿児島名物だそうだ。

 

この日は鉄道で始まり、鉄道で終わった一日となった。


SL人吉いさぶろうはやとの風

どの運行も、構成と時間配分が良く出来ていて、見所はちゃんと見学でき、かといってだらだらと長すぎもせず、丁度いい具合に組まれていた。

ダイヤ調整の妙と言うべきだろう。

そして何より、客室乗務員を始め、機関士、運転士、車掌、駅員等総出の『お・も・て・な・し』に触れられた事がなによりである。

 

あー、面白かった。

次はどの路線の観光列車に乗ろうかな。

コメント一覧

minou_yamatai
言っておきますが、スワロー旅てのは、まさしく連れ合いからの避難です。
yamabousi
こう言う旅も有りでしたね
とても参考になりました! ハイ!

スワロー旅に、列車旅、夏旅、なかなかよか旅 、充実しておられますなぁ~

我が家も連れ合いには絶対服従です、
いらん事言うなら天罰が待っていますから。
minou_yamatai
近所の旅行社に任せたので、それぞれの明細はわかりませんが、
交通費は、久留米~熊本、鹿児島~久留米の新幹線代を含めて、16000円ちょっとでした。
出来るなら、鹿児島に一泊して、天文館でキューイってのが最高かも。
サガン山ザル
北海道への車旅の後は、観光列車の旅。暇人人生を謳歌していますね!(羨ましい限りです)
残念ながら、山登りの趣味は有りませんので、真似出来そうな列車の旅に行ってみたいです。下世話な話ですが、如何程の散財が必要ですか? 教えて下さいませ。
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