《1月31日 暮雨の滝氷結!》
そんな知らせが、2月1日のSNSから聞こえてきた。
その翌日、
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私達は𠮷部登山口にやって来た。
駐車場に停まるのは、赤口号一台だけ。
博多の義兄と2人、雪上に降り立ち、登山スタートだ。
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シンとした静寂に包まれる森。
聞こえてくるのは、時折鳴く鳥の声と、ザクザクと雪を踏みしめる音だけ。
この日の予定は、𠮷部~暮雨の滝~坊がつる~大船山&御池である。
下山は、同じルートを折り返す。
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すぐに、木の根が折り重なる急登に差し掛かる。
急登を登り切りしばらく進むと、それまでの静寂を破るかのように瀑声が聞こえてくる。
暮雨の滝である。
瀑声がハッキリ聞こえるという事は・・・
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残念!
2日間の時の経過は、氷瀑を無情にも消し去っていた。
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仕方ない。
気を取り直して前進だ。
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坊がつる到着。
快晴。
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天気が良いのはまことに喜ばしい。
が、思いの外気温が高い。
坊がつるでも、零下に至ってないのではなかろうか。
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何はともあれ、遙か彼方に聳える大船山を目指そう。
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平治&大船取り付き。
いざ!
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と、意気込んだわりには、
ハヒー、ハヒー
すぐに息が上がってきた。
こんな所で、もうバテてる。
大丈夫か?俺。
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段原の稜線が見えてきた。
この付近からは更にへばり、50m歩いては立ち止まりの繰り返しである。
「おかしか。バテ過ぎて足が前に進まん。」(私)
「暑かけんやなか?脱水しとらんね。」(義兄)
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どうにかこうにか段原到着。
やれやれとへたり込んでいると、今度は汗をかいた体が、たちまちのうちに冷えてくる。
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これはいかん。
とっとと、避難小屋まで行って着替えよう。
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真冬の大船山。
さぞかし寒かろうと、当然ザックには予備のインナーを入れている。
重ね着する筈のものが、真反対の理由で使う羽目に。
着替えようと、アウターを脱ぐと、
「ヒロちゃん、身体中から湯気が出とるよ。ハハハ」(義兄)
「確かに大汗かいとるね。ジュクジュクや。」(私)
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着替えがすんで湯気が収まった私。
湯気ホカホカのカップ麺でエネルギー補給である。
昼飯食ってしばらく休憩していたら、何だか体力も回復。
山頂に向かって出発だ。
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雪で嵩を増した登山道。
普段当たる事がない枝に、頭やザックを頻繁に引っかけてしまう。
「イテテ。えーい、鬱陶しい!」
前屈みになったり、イナバウアーしたり、
体を前後左右に捻り、木の枝を避けつつ、大船山頂到着である。
ヨッコラセっと。
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「おお!」(私)
「おーー!」(義兄)
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眼下にはのた打つような雲、雲、雲。
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大汗掻いて登ってきた甲斐があったぜ。
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一方、こちらはくじゅうの名峰群。
眺めたい方角には、雲はちゃんと遠慮してくれている。
完璧だ!
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思いがけない山からのプレゼントに、薄気味悪い笑みを浮かべる髭オヤジ。
さっきまでヘロヘロだったくせに、現金なものである。
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そして御池である。
雲上に浮かぶその様は、"天空の池"と呼ぶ以外、言葉が見つからない。
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秋には、燃えるような赤で彩られたこの池も、今はモノトーンの世界である。
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凍った池に立ち、またしても薄笑いを浮かべる髭オヤジである。
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いい年したオヤジが2人。
誰もいない山頂で、子供のようにはしゃぎ、互いに記念撮影している図。
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坊がつるまで下りてきた。
大船山を振り返る。
先ほどまでの雲海はどこへやらである。
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帰路、目の前を二匹の鹿が通り過ぎた。
慌ててシャッターを、パシャリ
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キューーーン
あ、あそこにも。
消えた氷瀑にガッカリし、暑さでヘロヘロとなり、雲海に歓声をあげ、凍る池に遊ぶ。
盛りだくさんの冬山登山であった。