第21 受益権
1 請願権(16条)
・請願の趣旨を生かすべき政治的・道徳的義務を負う(請願法5)
・明治憲法にも明文あり(明憲30条,50条)
・受理機関が請願の受理と請願を誠実に処理することまでは法的義務である(請願法5)
2 裁判を受ける権利(32条),公平な裁判所(37Ⅰ)
・具体的には二つの意味
①何人も裁判所に訴訟を提起し,裁判を求める権利を有すること
②裁判所による裁判によるのでなければ刑罰を科されないということ
→被告人の同意があっても検察官による裁判は許されない(37Ⅰ)。行政手続としても同様
・上訴制度(上訴理由),審級制度,単独制か否かは立法裁量に委ねられている
→不合理でなければ32条,76条に反しない(二審制も可)
・保全処分において何らかの心証を得ているとしてもその訴訟事件を担当することも許される。裁判官に本案訴訟の裁判の公平を害するほどの予断があるとはいえない。
・行政不服審査で,処分庁が自己審査を行っても32条違反ではない。「行政庁」は「裁判所(32条,76Ⅰ)」に入らないから。
・「公平な裁判所」:構成その他において偏ぱのおそれなき裁判所の裁判(判例)
→個々の事件において事実の誤認など被告人に不利益な裁判がなされても同条に反し,違憲というわけではない(判例)
・地方裁判所と高等裁判所の裁判官を兼務しても「公平な裁判所(37条)」に反するわけではない
→同一裁判官による上級審の裁判を回避される制度であればよい
3 もともとの民事紛争を非訟事件として扱うことが32条の裁判を受ける権利と抵触しないか?
→32条の「裁判」の意味が問題
①公開非公開政策説
・公開するかしないかはすべて立法政策の問題
裁判所でない機関で裁判されないことが32条の重点
32条の「裁判」と82条の「裁判」は無関係
32条:非訟手続による裁判を含む
82条:訴訟手続による裁判
(批判)公開対審原則に反する
②訴訟事件公開説
・「純然たる訴訟事件」は必ず公開しなければならないとする説
32条と82条の「裁判」は同じ意味
「非訟事件」は32条,82条の保障の範囲外
32条,82条の「裁判」は,純然たる訴訟事件につき,事実を確定し当事者の主張する権利義務の存否を確定する確認裁判
③折衷説
・32条の「裁判」を82条の「裁判」より広い概念として捉える
当該事件にふさわしい適正な手続の保障(82条はあくまで原則)
「訴訟の非訟化」に対応→「非訟事件」も32条の保障の範囲内
32条:非訟手続による裁判を含む→性質・内容に応じた適正手続の保障を
82条:純然たる訴訟事件→公開原則が妥当
4 国家賠償請求権(17条):国家賠償法により具体化
・プログラム規定説(通説)または抽象的権利説
→具体化規定がない場合は17条に基づいて直接請求できない
しかし,17条は明治憲法下の「国家無答責の原則」を否定しているので,仮に国家賠償法がなくても民法の規定による損害賠償請求はできる
・公務員の「故意又は過失」が必要(「公の営造物」の場合は無過失責任・「設置又は保存に瑕疵」が必要)
・公務員への求償が認められるためには,公務員に「故意又は「重」過失」が必要(国家賠償法1Ⅱ)
・当該公務員自身は被害者に直接の責任を負わない(判例)
公務員の不法行為による損害賠償は国または公共団体にのみ請求しうるとするのが国家賠償法の趣旨である
・「何人も」→外国人には否定される場合がある(国家賠償法6条)
憲法の「何人」には格別の意味はない
・憲法改正によって17条を廃止することも可能と解されている
自然権,前国家的権利とはいえない(限界肯定説をとっての話)
5 刑事補償(40条):刑事補償法により具体化
・「抑留又は拘禁」された後,「無罪の裁判」を受けたとき
→逮捕・勾留がなくて在宅起訴の場合,不起訴の場合は対象外
逮捕・勾留後に一部事実についてのみ公訴提起されて無罪の裁判を受けた場合はその取り調べが不起訴となった事実に対する逮捕拘留を利用してなされたものと認められるときは40条の適用対象となる(判例)
・少年法の不処分の決定は「無罪の裁判(40条)」に含まれないので,補償は不要(判例)
・在宅起訴・不起訴の場合は補償不要
「抑留または拘禁された後」「無罪の裁判を受けたとき」が要件
・国家賠償法には使用者の免責条項はない
・公務員に故意・過失がある場合でも40条は可能
40条は故意・過失がある場合に補償をしない趣旨ではない
6 国家補償制度のまとめ
①合法的な損失→29Ⅲ
②違法行為による損失→17条
③適法行為の結果としての損失→40条(無過失責任・補償。違法行為の場合も含まれる。)
第22 参政権(15条)
1 「公務員」(15Ⅰ)
すべての公務員が含まれる
15Ⅰは国民主権の表現として「公務員」の地位の根拠が究極において国民の意思に基づくものであるとする規定
2 生活保護を受けている者や破産者に選挙権を認めないことは「財産又は収入」によって差別することになるので違憲(44条)
しかし,禁治産者は心神喪失の常況ににある以上選挙権行使の能力を欠くことから選挙権を与えないことは合理的な差別として合憲
3 投票
国民が選挙人団という合成機関を構成して行う選挙において,国民各人がその部分機関としてこれに参加し,票を投ずることによって,誰を当選人にしたいかの意思表示を行うこと
4 選挙に関する諸原則
・平等選挙:すべての選挙人の投票の価値を平等に取り扱う選挙←→等級選挙
→14Ⅰ・44但書
・普通選挙:選挙人の資格を納税額などの基準で制限することなく成年者が著しく資格を認められる選挙←→制限選挙
→15Ⅲ・44
・直接選挙:有権者が直接代表者を選挙する制度←→間接選挙・複選制
(→93Ⅱ)明文なし
・任意投票:すべての選挙人が外部からの強制またはその他の不法の影響を受けることなく選挙権を自由に行使できる選挙制度
→15Ⅳ?・憲法の自由主義的性格
・秘密投票:投票の秘密を保障する投票制度。(選挙人の自由な意思に基づく投票の確保)
→15Ⅳ
・投票の秘密が及ぶ事項以外は公然性が原則
→密室での投票は違憲
・「自由選挙」と「国政における直接選挙」は明文規定なし
5 強制投票制度の可否
・否定説が圧倒的(15Ⅳ,19条)
段階としては①投票所へ行くことの強制②投票することの強制③有効投票をすることの強制がある
→③は投票内容に直接関わるので15Ⅳに反するのは明らか
6 その他
・間接選挙:有権者がまず選挙委員を選びその選挙委員が公務員を選挙する
・複選制:別の選挙で選ばれた公務員によって選挙させる
→43条の「選挙」には含まれないと解される
国民意思との関係が間接的すぎるから
・投票の秘密(15Ⅳ前段)→公選法に具体的規定あり
「当選の効力」を定める手続において投票が「誰に対してなされたか」を取り調べることはできない。ただし,「選挙犯罪捜査」においては投票用紙を差し押さえこれを取り調べても投票の秘密の侵害に当たらない
無効となる投票であっても「誰に対してなされたか」を検索することはできない。
第23 生存権
1 法的性格
①25条のみによる直接請求の可否
②立法不作為違憲訴訟の可否
③25条は違憲判断の根拠となるか(法律・国家行為に対して)
1 2 3
プログラム規定説 × × ×
抽象的権利説 × × ○
具体的権利説 × ○ ○
・具体的権利説といえども25条による直接請求を認めるわけではないことに注意。
ただし,立法不作為の違憲性を国家賠償請求訴訟で争うことができる。
・プログラム規定説でも自由権的側面では法的権利性を有する
・朝日訴訟は,25条を具体化する法律の存在を前提に,行政処分の合憲性を争うものであるが,右行政処分が裁量権の限界を超えた場合・裁量権を濫用した場合には違憲・違法であるとしている(③)ので,純粋なプログラム規定説ではない
2 25ⅠとⅡの関係
①分離否定説(堀木訴訟)
・救貧施策と防貧施策の区別が機械的・形式的
・成立過程では一体的なもの
・肯定説では結局社会保障施策が厳格な審査を免れるように機能する
(公的扶助以外の社会保障はすべて防貧施策に分類される)
・最低限度の生活に甘んずべきことが権利でありようはずがない
ⅠとⅡは同じ事柄の表裏の関係にある
より健康でより文化的な生活水準の向上をも保障していると解すべき
・Ⅰは生存権保障の目的ないし理念,Ⅱはその達成のための国の責務
②分離肯定説(堀木訴訟控訴審)
・「最低限度の生活」と「それ以上の生活」とを区別し,それに対応する社会保障政策における立法府の裁量に広狭を認めるのは合理的に自由権としての生存権を含んでいると解すのであれば,Ⅱに対応物が見いだしがたいから,ⅠとⅡの文言上区別されるべき
・Ⅰは救貧規定,Ⅱは防貧政策を要求する規定
3 25条が裁判上争われる場合
・生存権に対する国家による侵害の排除を求める場合(総評サラリーマン税金訴訟)最低生活費非課税原則
・生存権に対する他の私人による侵害の排除を求める場合
伊達火力発電所建設差止請求事件
・25条を具体化する法律の存在を前提に,行政処分の合憲性を争う場合(朝日訴訟)
保護処分の変更という行政処分
・25条を具体化する法律の規定の合憲性を争う場合(堀木訴訟)
併給禁止規定の違憲性
・立法の不作為の合憲性を争う場合
4 環境権
・裁判所で具体的権利としては認められていない
・13条,25条は綱領的で個々の国民に具体的な権利を認めていない
・環境権の内容・援用できる人の範囲が不明確
・環境破壊と社会活動の均衡をどこに求めるかは立法府によって解決されるべき問題
第24 教育を受ける権利(26条)
1 教育権の所在
①国家教育権説
民主主義の原理が公教育にも妥当する
②国民教育権説
子供の教育は教育を施す者の支配的権能ではなく子供の学習する権利に対応しその充足を図りうる者の責務に属する
③折衷説(旭川学テ事件)
教師は一定の範囲で教授の自由を有するが,教育の機会均等を図る上からも全国的に一定の水準を確保すべき要請があることからして,完全な教授の自由を認めることは許されない。
※旭川学テ判決は「学問の自由(23条)に教授の自由が含まれる」としたもので,根拠を「教育を受ける権利(26条)」には求めていない。
なお,他には国家教育権を原則的に認めその決定の限界を探る「大綱的基準説」がある。
2 外国人の教育
外国人に学校教育法に定める小中学校において義務教育を受けなければならないとするのは外国人の教育を受ける権利を侵害し,憲法に違反する
第25 労働基本権
1 勤労の権利(27条)
・自由権的側面と社会権的側面がある
・プログラム規定説にたっても自由権的側面については裁判規範性まで認めるのが一般的
・27Ⅱの「法律」に入るもの
労働基準法,最低賃金法は入る
労働組合法,労働関係調整法は入らない。「勤労条件」と関係がないから
・「義務」の内容:一般に働く能力のあるものは自らの勤労によってその生活を維持すべきだということ
2 労働基本権(28条):刑事免責,民事免責
・団結権
・団体行動権
・団体交渉権
・その他の団体交渉権(争議権)
争議権は「その他団体行動をする権利(28条)」に含まれると解されるが,団結権・団体交渉権と異なり憲法上明示の規定は存在しない
・日本ではクローズド・ショップ(組合員から雇用)とユニオン・ショップ(組合を辞めたら解雇)が採用されていることが多いが,脱退の自由を完全に非違することは許されない。
・スト期間中は賃金請求権を有しない(民623条)
たとえ正当な争議行為でも,賃金を請求できない
・限界
暴力を伴う場合,生産管理,純粋政治スト
1 請願権(16条)
・請願の趣旨を生かすべき政治的・道徳的義務を負う(請願法5)
・明治憲法にも明文あり(明憲30条,50条)
・受理機関が請願の受理と請願を誠実に処理することまでは法的義務である(請願法5)
2 裁判を受ける権利(32条),公平な裁判所(37Ⅰ)
・具体的には二つの意味
①何人も裁判所に訴訟を提起し,裁判を求める権利を有すること
②裁判所による裁判によるのでなければ刑罰を科されないということ
→被告人の同意があっても検察官による裁判は許されない(37Ⅰ)。行政手続としても同様
・上訴制度(上訴理由),審級制度,単独制か否かは立法裁量に委ねられている
→不合理でなければ32条,76条に反しない(二審制も可)
・保全処分において何らかの心証を得ているとしてもその訴訟事件を担当することも許される。裁判官に本案訴訟の裁判の公平を害するほどの予断があるとはいえない。
・行政不服審査で,処分庁が自己審査を行っても32条違反ではない。「行政庁」は「裁判所(32条,76Ⅰ)」に入らないから。
・「公平な裁判所」:構成その他において偏ぱのおそれなき裁判所の裁判(判例)
→個々の事件において事実の誤認など被告人に不利益な裁判がなされても同条に反し,違憲というわけではない(判例)
・地方裁判所と高等裁判所の裁判官を兼務しても「公平な裁判所(37条)」に反するわけではない
→同一裁判官による上級審の裁判を回避される制度であればよい
3 もともとの民事紛争を非訟事件として扱うことが32条の裁判を受ける権利と抵触しないか?
→32条の「裁判」の意味が問題
①公開非公開政策説
・公開するかしないかはすべて立法政策の問題
裁判所でない機関で裁判されないことが32条の重点
32条の「裁判」と82条の「裁判」は無関係
32条:非訟手続による裁判を含む
82条:訴訟手続による裁判
(批判)公開対審原則に反する
②訴訟事件公開説
・「純然たる訴訟事件」は必ず公開しなければならないとする説
32条と82条の「裁判」は同じ意味
「非訟事件」は32条,82条の保障の範囲外
32条,82条の「裁判」は,純然たる訴訟事件につき,事実を確定し当事者の主張する権利義務の存否を確定する確認裁判
③折衷説
・32条の「裁判」を82条の「裁判」より広い概念として捉える
当該事件にふさわしい適正な手続の保障(82条はあくまで原則)
「訴訟の非訟化」に対応→「非訟事件」も32条の保障の範囲内
32条:非訟手続による裁判を含む→性質・内容に応じた適正手続の保障を
82条:純然たる訴訟事件→公開原則が妥当
4 国家賠償請求権(17条):国家賠償法により具体化
・プログラム規定説(通説)または抽象的権利説
→具体化規定がない場合は17条に基づいて直接請求できない
しかし,17条は明治憲法下の「国家無答責の原則」を否定しているので,仮に国家賠償法がなくても民法の規定による損害賠償請求はできる
・公務員の「故意又は過失」が必要(「公の営造物」の場合は無過失責任・「設置又は保存に瑕疵」が必要)
・公務員への求償が認められるためには,公務員に「故意又は「重」過失」が必要(国家賠償法1Ⅱ)
・当該公務員自身は被害者に直接の責任を負わない(判例)
公務員の不法行為による損害賠償は国または公共団体にのみ請求しうるとするのが国家賠償法の趣旨である
・「何人も」→外国人には否定される場合がある(国家賠償法6条)
憲法の「何人」には格別の意味はない
・憲法改正によって17条を廃止することも可能と解されている
自然権,前国家的権利とはいえない(限界肯定説をとっての話)
5 刑事補償(40条):刑事補償法により具体化
・「抑留又は拘禁」された後,「無罪の裁判」を受けたとき
→逮捕・勾留がなくて在宅起訴の場合,不起訴の場合は対象外
逮捕・勾留後に一部事実についてのみ公訴提起されて無罪の裁判を受けた場合はその取り調べが不起訴となった事実に対する逮捕拘留を利用してなされたものと認められるときは40条の適用対象となる(判例)
・少年法の不処分の決定は「無罪の裁判(40条)」に含まれないので,補償は不要(判例)
・在宅起訴・不起訴の場合は補償不要
「抑留または拘禁された後」「無罪の裁判を受けたとき」が要件
・国家賠償法には使用者の免責条項はない
・公務員に故意・過失がある場合でも40条は可能
40条は故意・過失がある場合に補償をしない趣旨ではない
6 国家補償制度のまとめ
①合法的な損失→29Ⅲ
②違法行為による損失→17条
③適法行為の結果としての損失→40条(無過失責任・補償。違法行為の場合も含まれる。)
第22 参政権(15条)
1 「公務員」(15Ⅰ)
すべての公務員が含まれる
15Ⅰは国民主権の表現として「公務員」の地位の根拠が究極において国民の意思に基づくものであるとする規定
2 生活保護を受けている者や破産者に選挙権を認めないことは「財産又は収入」によって差別することになるので違憲(44条)
しかし,禁治産者は心神喪失の常況ににある以上選挙権行使の能力を欠くことから選挙権を与えないことは合理的な差別として合憲
3 投票
国民が選挙人団という合成機関を構成して行う選挙において,国民各人がその部分機関としてこれに参加し,票を投ずることによって,誰を当選人にしたいかの意思表示を行うこと
4 選挙に関する諸原則
・平等選挙:すべての選挙人の投票の価値を平等に取り扱う選挙←→等級選挙
→14Ⅰ・44但書
・普通選挙:選挙人の資格を納税額などの基準で制限することなく成年者が著しく資格を認められる選挙←→制限選挙
→15Ⅲ・44
・直接選挙:有権者が直接代表者を選挙する制度←→間接選挙・複選制
(→93Ⅱ)明文なし
・任意投票:すべての選挙人が外部からの強制またはその他の不法の影響を受けることなく選挙権を自由に行使できる選挙制度
→15Ⅳ?・憲法の自由主義的性格
・秘密投票:投票の秘密を保障する投票制度。(選挙人の自由な意思に基づく投票の確保)
→15Ⅳ
・投票の秘密が及ぶ事項以外は公然性が原則
→密室での投票は違憲
・「自由選挙」と「国政における直接選挙」は明文規定なし
5 強制投票制度の可否
・否定説が圧倒的(15Ⅳ,19条)
段階としては①投票所へ行くことの強制②投票することの強制③有効投票をすることの強制がある
→③は投票内容に直接関わるので15Ⅳに反するのは明らか
6 その他
・間接選挙:有権者がまず選挙委員を選びその選挙委員が公務員を選挙する
・複選制:別の選挙で選ばれた公務員によって選挙させる
→43条の「選挙」には含まれないと解される
国民意思との関係が間接的すぎるから
・投票の秘密(15Ⅳ前段)→公選法に具体的規定あり
「当選の効力」を定める手続において投票が「誰に対してなされたか」を取り調べることはできない。ただし,「選挙犯罪捜査」においては投票用紙を差し押さえこれを取り調べても投票の秘密の侵害に当たらない
無効となる投票であっても「誰に対してなされたか」を検索することはできない。
第23 生存権
1 法的性格
①25条のみによる直接請求の可否
②立法不作為違憲訴訟の可否
③25条は違憲判断の根拠となるか(法律・国家行為に対して)
1 2 3
プログラム規定説 × × ×
抽象的権利説 × × ○
具体的権利説 × ○ ○
・具体的権利説といえども25条による直接請求を認めるわけではないことに注意。
ただし,立法不作為の違憲性を国家賠償請求訴訟で争うことができる。
・プログラム規定説でも自由権的側面では法的権利性を有する
・朝日訴訟は,25条を具体化する法律の存在を前提に,行政処分の合憲性を争うものであるが,右行政処分が裁量権の限界を超えた場合・裁量権を濫用した場合には違憲・違法であるとしている(③)ので,純粋なプログラム規定説ではない
2 25ⅠとⅡの関係
①分離否定説(堀木訴訟)
・救貧施策と防貧施策の区別が機械的・形式的
・成立過程では一体的なもの
・肯定説では結局社会保障施策が厳格な審査を免れるように機能する
(公的扶助以外の社会保障はすべて防貧施策に分類される)
・最低限度の生活に甘んずべきことが権利でありようはずがない
ⅠとⅡは同じ事柄の表裏の関係にある
より健康でより文化的な生活水準の向上をも保障していると解すべき
・Ⅰは生存権保障の目的ないし理念,Ⅱはその達成のための国の責務
②分離肯定説(堀木訴訟控訴審)
・「最低限度の生活」と「それ以上の生活」とを区別し,それに対応する社会保障政策における立法府の裁量に広狭を認めるのは合理的に自由権としての生存権を含んでいると解すのであれば,Ⅱに対応物が見いだしがたいから,ⅠとⅡの文言上区別されるべき
・Ⅰは救貧規定,Ⅱは防貧政策を要求する規定
3 25条が裁判上争われる場合
・生存権に対する国家による侵害の排除を求める場合(総評サラリーマン税金訴訟)最低生活費非課税原則
・生存権に対する他の私人による侵害の排除を求める場合
伊達火力発電所建設差止請求事件
・25条を具体化する法律の存在を前提に,行政処分の合憲性を争う場合(朝日訴訟)
保護処分の変更という行政処分
・25条を具体化する法律の規定の合憲性を争う場合(堀木訴訟)
併給禁止規定の違憲性
・立法の不作為の合憲性を争う場合
4 環境権
・裁判所で具体的権利としては認められていない
・13条,25条は綱領的で個々の国民に具体的な権利を認めていない
・環境権の内容・援用できる人の範囲が不明確
・環境破壊と社会活動の均衡をどこに求めるかは立法府によって解決されるべき問題
第24 教育を受ける権利(26条)
1 教育権の所在
①国家教育権説
民主主義の原理が公教育にも妥当する
②国民教育権説
子供の教育は教育を施す者の支配的権能ではなく子供の学習する権利に対応しその充足を図りうる者の責務に属する
③折衷説(旭川学テ事件)
教師は一定の範囲で教授の自由を有するが,教育の機会均等を図る上からも全国的に一定の水準を確保すべき要請があることからして,完全な教授の自由を認めることは許されない。
※旭川学テ判決は「学問の自由(23条)に教授の自由が含まれる」としたもので,根拠を「教育を受ける権利(26条)」には求めていない。
なお,他には国家教育権を原則的に認めその決定の限界を探る「大綱的基準説」がある。
2 外国人の教育
外国人に学校教育法に定める小中学校において義務教育を受けなければならないとするのは外国人の教育を受ける権利を侵害し,憲法に違反する
第25 労働基本権
1 勤労の権利(27条)
・自由権的側面と社会権的側面がある
・プログラム規定説にたっても自由権的側面については裁判規範性まで認めるのが一般的
・27Ⅱの「法律」に入るもの
労働基準法,最低賃金法は入る
労働組合法,労働関係調整法は入らない。「勤労条件」と関係がないから
・「義務」の内容:一般に働く能力のあるものは自らの勤労によってその生活を維持すべきだということ
2 労働基本権(28条):刑事免責,民事免責
・団結権
・団体行動権
・団体交渉権
・その他の団体交渉権(争議権)
争議権は「その他団体行動をする権利(28条)」に含まれると解されるが,団結権・団体交渉権と異なり憲法上明示の規定は存在しない
・日本ではクローズド・ショップ(組合員から雇用)とユニオン・ショップ(組合を辞めたら解雇)が採用されていることが多いが,脱退の自由を完全に非違することは許されない。
・スト期間中は賃金請求権を有しない(民623条)
たとえ正当な争議行為でも,賃金を請求できない
・限界
暴力を伴う場合,生産管理,純粋政治スト