VANDER情報局

湊七雄のブログ

MO紙

2008-09-07 | Weblog
多くの版画家がそうであるように、私も紙に対して大きな関心を寄せています。
長らく私は、ゼルカルというドイツ製の高級版画用紙を使ってきました。日本では入手困難だと知っていたので、ベルギーから帰国する折には、一人では持ち上げられない程の分量をまとめ買いし、船便で持ち帰りました。
ゼルカルはとても良い紙で、重ね刷りしても安定しているし、凹版と凸版を混ぜた私の技法にはぴったりだったのです。そして、この紙が自分の技法に最も適していると思っていました。

しかし、地元文具店の経営者でアートやデザインにも造詣の深い角谷恒彦さんとの出会いが縁でMO紙を使うようになり、そうした思いは少しずつ変化して行きました。

昨年、この紙を漉いておられる沖桂司さんの工房を訪ねる機会に恵まれ、原料や紙漉の工程も見せていただきました。MO紙は越前和紙ですが、和紙と言ってもコウゾやミツマタではなく、綿や麻が原料となっていて、凛とした独特のコシがあります。

いままで私は「あのインクが一番良い!」「この紙が最良だ!」なんて言ってきましたが、最近それぞれの素材の特徴から得られるインスピレーションの重要さに気付きました。
ここ数日、特に色についての新たな発見が幾つもありました。

今月29日から始まる東京での版画展で発表する作品は全てMO紙に刷ったものです。


2008年春、金沢での個展にお越し下さった沖さん(中央)と奥様