佐村河内、小保方、栩内などなど、珍しい苗字がニュースのなかで踊る昨今。
珍しい苗字といえば、先日博多出張のおり、ぶらりと街歩きをしていて、このようなお店に出会いました。
店名は「はんのひでしま」。
文字とおり、ハンコ屋さんです。
外観からすでに、まるで判で押したように、ただならぬユニークさが伝わってきます。
店に足を踏み入れ、一瞬「ハチの巣?」と目を疑いました。
壁一面、いや、一面では足りず張り出すかたちで、びっっっっしりッと印鑑が並んでいます。
その数なんと10万種類以上!
もちろん三文判の品揃えではダントツで日本一。
ちなみに一店舗を置く三文判の種類は、小さなお店でおよそ500種類程度だとのこと。
いかにその数がケタはずれであるかがわかります。
店主は二代目の秀島徹さん。
印鑑を手彫りする職人さんであり、デザインをほどこすアーティストであり、そして姓の研究家でいらっしゃいます
(さらに置物人形のコレクターでもあり、こちらの展示数も圧巻!)。
秀島さん曰く、
「印鑑は5000種類あれば日本人の姓の80%を、1万種類あれば98.5%を補えます。しかし残りの1.5%で10万種類が必要なのです」
つまり日本人の姓の数だけ印鑑を揃えようとすれば、これほど莫大な量が必要となるし、必要とする人がここに来れば、ほぼ手に入るということなのです。
ここに並ぶ珍しい姓といえば、「無敵」「肥満」「鼻毛」「浮気」「和食」などなど。
「一口(いもあらい)」「石動丸(いするぎまる)」なんて難読を通り越して無理読です。
「十八娘(ねごろ)」なんて、ちょいとエロい。
「一」と書いて「にのまえ」さん。
「五月七日」と書いて「つゆいり」さん。
陰暦では5月7日が梅雨入りなのです。
さらには「十一月二十九日」と書いて「つめづめ」さん、などという方も。
もう先祖がクイズ出題用に考えてくれたかのよう。
クイズ番組の作家は皆、頭があがらないでしょう。
キラキラネームが話題となっていますが、苗字もなかなかのキラキラっぷりですね。
さて、どうしても気になることがひとつ。
手彫りの技術で名を馳せる秀島さんのこと、これら珍名さんの印鑑を彫ることは、なかには難しいものもあるでしょうが、できなくはないでしょう。
だったらなにもこんなにも在庫を抱えずに、その都度注文を受けさえすれば、もっとお店を広々と使えるのでは?
失礼な僕の質問に対する、秀島さんの回答は、こうでした、
そして僕はその答えを聞いて、モーレツに感動をしてしまいました。
「お客さんを待たせたくないから」
ガーーン!
オーダーメイドなら確かに無限に対応できるだろうけれど、時には数日かかることもあるでしょう。
でも印鑑が欲しいと飛び込んでくるお客さんは、今すぐ必要なわけです。
そういった切迫した状況にある人たちを待たせず、すぐに手渡したい。
そのために秀島さんは日本の姓の勉強をして、あるとわかれば先にそれを彫っておくのです。
そんなふうに、よその店にはないものが多いですから、珍名さんたちはきっと喜んでいるでしょうね。
「はい。でも、そうではない場合もあります。なかには怒って、買わずに帰る人もいますよ」
怒る? なぜですか?
「それは……」
……理由を訊くと、なるほど。
珍名さんと呼ばれる人のなかには、ハンコ屋さんに自分の名前がないことを誇りに感じている人もおられるのだそう。
これまでハンコ屋さんに出向いては「僕の苗字、ありますか?」と訊き、「ございません」と頭を下げさせることで、勝利を得てきた。
それがこの店で生まれて初めて「ございます」と言われ、たちまち目の前に差し出されたものですから、人生初の敗北。
「負け」という判を押されたような気持ちになったのでしょう。
珍名さんにまつわる興味深いお話とともに、さらに秀島さん、僕の名前「智樹」でデザインもしてくださいました。
今後パソコンでの署名に使わせていただきますね。
ありがとうございました。
珍しい苗字といえば、先日博多出張のおり、ぶらりと街歩きをしていて、このようなお店に出会いました。
店名は「はんのひでしま」。
文字とおり、ハンコ屋さんです。
外観からすでに、まるで判で押したように、ただならぬユニークさが伝わってきます。
店に足を踏み入れ、一瞬「ハチの巣?」と目を疑いました。
壁一面、いや、一面では足りず張り出すかたちで、びっっっっしりッと印鑑が並んでいます。
その数なんと10万種類以上!
もちろん三文判の品揃えではダントツで日本一。
ちなみに一店舗を置く三文判の種類は、小さなお店でおよそ500種類程度だとのこと。
いかにその数がケタはずれであるかがわかります。
店主は二代目の秀島徹さん。
印鑑を手彫りする職人さんであり、デザインをほどこすアーティストであり、そして姓の研究家でいらっしゃいます
(さらに置物人形のコレクターでもあり、こちらの展示数も圧巻!)。
秀島さん曰く、
「印鑑は5000種類あれば日本人の姓の80%を、1万種類あれば98.5%を補えます。しかし残りの1.5%で10万種類が必要なのです」
つまり日本人の姓の数だけ印鑑を揃えようとすれば、これほど莫大な量が必要となるし、必要とする人がここに来れば、ほぼ手に入るということなのです。
ここに並ぶ珍しい姓といえば、「無敵」「肥満」「鼻毛」「浮気」「和食」などなど。
「一口(いもあらい)」「石動丸(いするぎまる)」なんて難読を通り越して無理読です。
「十八娘(ねごろ)」なんて、ちょいとエロい。
「一」と書いて「にのまえ」さん。
「五月七日」と書いて「つゆいり」さん。
陰暦では5月7日が梅雨入りなのです。
さらには「十一月二十九日」と書いて「つめづめ」さん、などという方も。
もう先祖がクイズ出題用に考えてくれたかのよう。
クイズ番組の作家は皆、頭があがらないでしょう。
キラキラネームが話題となっていますが、苗字もなかなかのキラキラっぷりですね。
さて、どうしても気になることがひとつ。
手彫りの技術で名を馳せる秀島さんのこと、これら珍名さんの印鑑を彫ることは、なかには難しいものもあるでしょうが、できなくはないでしょう。
だったらなにもこんなにも在庫を抱えずに、その都度注文を受けさえすれば、もっとお店を広々と使えるのでは?
失礼な僕の質問に対する、秀島さんの回答は、こうでした、
そして僕はその答えを聞いて、モーレツに感動をしてしまいました。
「お客さんを待たせたくないから」
ガーーン!
オーダーメイドなら確かに無限に対応できるだろうけれど、時には数日かかることもあるでしょう。
でも印鑑が欲しいと飛び込んでくるお客さんは、今すぐ必要なわけです。
そういった切迫した状況にある人たちを待たせず、すぐに手渡したい。
そのために秀島さんは日本の姓の勉強をして、あるとわかれば先にそれを彫っておくのです。
そんなふうに、よその店にはないものが多いですから、珍名さんたちはきっと喜んでいるでしょうね。
「はい。でも、そうではない場合もあります。なかには怒って、買わずに帰る人もいますよ」
怒る? なぜですか?
「それは……」
……理由を訊くと、なるほど。
珍名さんと呼ばれる人のなかには、ハンコ屋さんに自分の名前がないことを誇りに感じている人もおられるのだそう。
これまでハンコ屋さんに出向いては「僕の苗字、ありますか?」と訊き、「ございません」と頭を下げさせることで、勝利を得てきた。
それがこの店で生まれて初めて「ございます」と言われ、たちまち目の前に差し出されたものですから、人生初の敗北。
「負け」という判を押されたような気持ちになったのでしょう。
珍名さんにまつわる興味深いお話とともに、さらに秀島さん、僕の名前「智樹」でデザインもしてくださいました。
今後パソコンでの署名に使わせていただきますね。
ありがとうございました。
日本人の姓が10万種類以上とは驚きです。
秀島さんという方もすごいが、レポートぶりもすごいですね。
たしかに蜂の巣に見えました。
客とご主人とのやり取りも、面白かったです。
ありがとうございました。
今月東京へ行くので、場所が分かれば行ってみたい、この投稿を見て
彫るのは反則ですよ。