4月30日08:20~09:05am「時任三郎世界エネルギーの旅」
を見た。起きぬけだったが、見終わったあと、救いようのない、
暗澹たる気持ちにさせられたのは、私だけなのであろうか。
仕事の関係でデンマークへは、十数度訪ねている。デンマーク家具
CUBEの代理店として、会社を設立したのが2004年。遡って、
初めて欧州へ入ったのは1982年あるいは83年のことだった。
西海岸のサンフランシスコを皮切りにニューヨーク・ロンドン・ロッテルダムから、
ベルゲンとまわり、デンマークのコペンハーゲンに辿りついたのは、日本
を出てから1ヶ月後のこと。空港で朝日新聞を見て、涙が出た。
今と違って携帯などはなく、PCもなく、FAX全盛のころだった。
欧州へPCを持っていき、電話回線を使った同僚が、NTTから
30万円を請求されたのは、もうすこしあとのことだと記憶する。
番組によると、当時から欧州では原発に対する是非を議論し、
その後デンマークは風力中心の自然エネルギー志向に動き、あと
数年で、100%の電力を非原発で確保することになるという。
かたやフィンランドは真逆の選択を行い、地下400mの岩盤をくり
抜き、数年後から放射能廃棄物収納を開始するという。ただ、
彼らの選択は長期の議論を経て、国民のコンセンサスを得ている。
また責任の取り方も徹底している。電力会社は本社を原発の
真横に置き、社長自ら、現場で経営を行っている。また地域の
合意も得て、国民自体が廃棄物を自国で処理する責を負う。
だが深いトンネルの中で、案内役の若い女性が、時任の問いに
答える姿を見て、その淡々とした表情から、とてつもない覚悟
を見た。もし事務的なものならば、彼女は相当な役者であろう。
しかし地下400mの岩盤に廃棄物を閉じ込め、人畜無害まで
至るのは、25万年後だという。ネアンデルタール人が50万年、ホモ・
サピエンス登場が20万年前である。そんな設計があり得るのか。
30年前、初めての訪米で乗ったジャンボが、サンフランシスコ空港に
着陸した際、日本人観光客から拍手が起こった。私も手を叩
きたいほどの感動だった。人間の文明と未来に希望を持った。
だがその後30年、ここまで来るとは思わなかった。25万年先に
まで禍根を残すのは、やはり冒涜ではないのか。どこまで汚染
を広げ、この地球を食いつくしていくのか。まるで蟻地獄である。
原発事故を起こした日本がするべきことは、被災地の早期復旧
と共に、放射能除去とフリーの技術開発に着手すべきではないか。
冗談抜きに、いまノーチラス号と鉄腕アトムに代わる、夢が待たれる。
三神工房