23日に放送された、NHKアーカイブスを見ました。
子ども達の食事についての過去と現在を俯瞰的に見る機会となりました。
1982年12月のNHK特集「こどもたちの食卓 ~なぜひとりで食べるの~」と、1999年7月のNHKスペシャル「知っていますか 子どもたちの食卓」。
この間にもおよそ17年の歳月がありますが、食の崩壊は80年代初めに、都市部ではすでにここまで進行していたのかと思いました。
伝統的な食卓がなくなっていることは想像の範囲でしたが、日本人の食事の「孤食」「偏食」。
とりわけ子どもが一人で食事をする割合が米国、韓国と比べても格段に高かった。
番組では82年に、2000人の子どもに「食卓の絵」を描いてもらう調査を行いました。その結果、子どもだけで朝食をとっている家庭が39%、朝夕とも子どもだけというケースも10%に上っていました。
そして17年後の99年。ふたたび「食卓の絵」を描いてもらう調査を行ってみると、子どもが一人で食事をとる「孤食」の傾向が加速していました。
特徴的だったのは、「食事を誰と一緒に食べたいですか」という質問に、「一人で食べたい」と回答した子どもが、朝食で16%、夕食で8%いたこと。
見たいTV番組を見ながら、家族とは別に自分の部屋で食事をする子も。
一人のほうが自分のペースで食べられる、ほっとする、など。
映像では、毎朝テレビの前に着席し、おにぎりを口の中に運ぶ子ども。
その後ろで出勤前に新聞に目を通しながら朝食をすませる母親の姿。
おかずやスープは子どもがいらないと言ってから作らなくなったそう。
家族それぞれにとって、朝どのように過ごしたいかを尊重したら、このような形になったのだという。
もちろん、こうした映像を見る時に気をつけないといけないのは、少数の人たちの特徴的なところが映し出されているのであって、これがすべての家族の一般的な姿を表していると思うと間違うということ。
その当時から、ずっと調査に関わってこられた女子栄養大学の足立己幸教授のお話によれば、食事が大事だということは皆分かっている。でも、食事以外にも大事なことがいっぱいあって、それぞれの都合をなるべく満たそうとしたらこういう形になったということなんでしょうと。優しく話されていました。
家族の食卓は、偏食を防ぎ、家族の状態や相手を知る大事な時間。
食事は、ただ栄養を流し込む行為ではないし、一緒に暮らすお互いの様子を知る機会になっている大事な時間。子どもにとっては、大人や他者との人間関係を学ぶチャンスなのだけれど、忙しい親にとって、食事のことは毎日あたりまえすぎて深く考えなくなったのではないか、とのことでした。
80年代は「孤食」を寂しいと思っていた子ども達の姿。
90年代には、自分でラクな食事スタイルを選ぶようになっている子ども達。
私は映像を見ながら、やはり私たち日本人は、それぞれの意思で、地域のつながりや絆を一度断ち切ったのだと思いました。
誰のことも気にせず、誰にも邪魔されずにしたいことをしたいという願望を新たな技術が一つずつ叶え、それをかっこいいと思い、一つずつ夢を手に入れてきました。
孤食は、偏食を助長し、人とのつながりや他者とのコミュニケーションの土台をどうしても貧弱にしてしまう。
昔は、家族ばらばらで食事をするのは非常に不経済だったから、おそらく深く考えるまでもなく皆で食事をしていたはず。しかし今は家族それぞれライフスタイルが違い、子どもも学校と習い事や塾等、忙しい。それを優先できる時代になったということ。「孤食」でもすぐに食べられるものを手に入れられるし、24時間営業の店もある。
それゆえ、どこかで、共に食事をするという時間をその家庭ごとに作りだす必要があります。
大人になれば、一人の食事は増えていきます。
それゆえ、子ども時代の食事スタイルや共食の体験が一層大事なのだろうと思います。
2005年の食育基本法以降、子どもは食事を通じて、生きていく上で必要な体験や基本的な知識を身につけ始めています。
もしかすると、食の知識は、大人のほうがないのかも。
ある小学校の家庭科の時間。
6年生のとん汁作り。自分達で作った味噌で味付けをする姿。
おいしい!と目を輝かせ、グループごとに楽しげに話しながら食事をしている。
学校の畑で野菜を育てたり、養豚場を訪ねたり。
出来合いのものは簡単に手に入るけれど、それは忙しい時に使うのであって、手作りの良さを伝える必要があると思う、とおっしゃる家庭科の先生の元気な笑顔。
それでもまだ、現実には子ども達の「孤食」は増えたまま。
子ども達は皆、家族そろっての食事が理想の食事だと話していました。
家族の食卓は、大人の意識が変わらないと難しい。
そうこうしているうちに、今は食卓に、あたりまえに携帯電話が並んでいる・・
共食のように見えて・・??という事態もあるようです。
環境問題への行動もそうですが、子ども達は、私たちが切り捨てたり、後回しにしてきたものを、今、拾い集めようと動き出しているのではと思うことが多いです。
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