(姜尚中著、集英社新書、2008.5.21発行)
生きるうえで悩みから目をそむけて生きることはできるかもしれないが、逃れられることはない。悩みから目をそむけて生きることを選べば、よき人生を差し出してしまうことでもある。
そんな、姜尚中氏からの一貫したメッセージがこめられています。
姜氏は、
「中途半端にしないでまじめに悩みぬく。そこにその人なりの何らかの解答があると信じています」(p.160)と語る。
悩むことを恐れず、大いに悩むことをすすめている。
その悩み方指南のために、全編にわたって、1864年にプロイセン王国で生まれたマックス・ウェーバーと、1867年に日本で生まれた文豪・夏目漱石。それぞれの著作物や足跡から、彼らの生きた19世紀の時代と、「グローバリゼーション」「自由の拡大」に象徴される現代社会との共通項を見出し(多くの場合、現代社会のほうがつらい要素に満ちている)、今を読み解く。巻末には年表つき。
さすが、ひじょうに興味深い試みでした。
夏目漱石は、大人になった今、もう一度読む必要があることを再認識。
そして、経済系学生として必須だったマックス・ウェーバー。とりわけ『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』が、本書の中で読み解かれているように、ここまで著者が悩みと苦悩に満ちていたとは、当然のことながら、当時はまったく理解できていませんでした。
姜氏は本書の中で、私たちを取り巻く身近な課題を具体的に上げ、答えのかけらを提示し、「あなたが確信するまで、自分の知性を信じて悩め」と語りかけます。
とりわけ、
『第6章・何のために「働く」のか』、『第7章・「変わらぬ愛」はあるか』
は、私の周囲にいる、苦悩する専業主婦が正しく悩むための示唆も与えています。
(今日は土曜日で子どもの通院先をはしご。親子共々涼しい環境でかなりの読書ができました。なかなかいい一日でした)
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