おとなりカフェ

学力調査不参加から教えられること



昨年43年ぶりに、全国の小学6年生と中学3年生の全員が全国学力調査を受けました。
ただ、厳密に言うと、唯一この調査を拒否した自治体があります。
愛知県犬山市。
この決断は一石を投じるものであり、私達は学ぶものが多いなと思っています。
参加・不参加の是非についてではなく。

犬山市の教育委員会は、全委員が一致して不参加に同意しているわけではありませんが、最終決定として、この調査の必要性に懸念を示しています。
未来の犬山を担う子どもたちの教育について、大人が自分の頭でちゃんと考えています。その重さを私達に教えていると思っています。

この調査の目的を、私達ははっきりと認識しているのでしょうか。
単に、「国の決めたことだから」とか、「他の自治体も皆参加するのだから」という理由で何となく子どもに受けさせていないでしょうか。

今は解散したとはいえ教育再生会議という場ができ、教育バウチャー、学校選択制を前提に議論が行われていました。
全国学力調査はその流れも当然汲んで実施に至っていると言えます。
その地域にあったやり方で方法論を模索するのはかまいませんが、国が制度として始めるには、日本はまだ機が熟していないのでは。

調査や教育のチェック機能は大事です。
でもこの調査が、学力順位のような目先の価値観ではなく、国際的視野に立った日本人像、日本の目指す方向性についての議論に基づいたものであったか、それがとても重要であろうと思います。
そういうことがないから、学力が追いついていない子どもを調査当日に休ませたり、調査対策の勉強に走ったりする学校が出るのです。

さて、犬山市。
前市長は元首相の小泉さんに似ていることでも有名な方で、愛知県知事選に出馬しましたが今回は落選。
現・田中市長ははっきりとした学力調査賛成派です。

石田芳弘前市長は、平成7年からの在任中、とりわけ教育改革には重点的に取り組んでこられました。
「わがまちの子はわがまちで育てる」
「腹を据えれば、現今のもと何不自由なく市町村で教育はできる」
と考え、徹底して少人数授業を行い、教員の増加分は市費を投入。競争し合って学力を伸ばすのではなく、教師のやる気をよみがえらせ、内発的授業技術の開発を目指したということです。
子ども達の学力評価も、犬山市独自のシステムを開発しました。

犬山市の教育改革をさらに知りたい場合は、提言・実践首長会の23人の自治体首長による『元気な子どもに育てる~23人の首長の思いと実践~』(地域交流出版、2007年5月刊)p.177-183をぜひ。他の自治体実践もなかなかです。

他にも、岩波ブックレット『検証・地方分権化時代の教育改革 教育改革を評価する―犬山市教育委員会の挑戦』、現市長と全面対立している瀬見井久教育長の「教育について思うこと」http://www.inuyama-aic.ed.jp/i-manabi.h.p/semii/top.htm
は、とても興味深いです。
最近『全国学力テスト、参加しません。―犬山市教育委員会の選択』というのも出ているようです。

現市長は、今年任期の切れる教育委員の後任は賛成派にすると公言し、2009年実施の調査には参加するとのこと。
また、それに先立って、説明会と住民アンケートの実施を予定しているそうです。

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