そろそろ午後2時、20日ぶりで私服に着替える。病院のパジャマとはおさらばだ。靴下を履くこと自体20日ぶり。グレーのカッターシャツ、白のパンツという出で立ちである。グレーのジャケットを羽織り、黒の皮のキャップで少しおめかしだ。
靴は新品の青の靴を妻が用意していてくれた。妻の気持ちが込められているような気もするが、昔世話した知人からの貰い物だ。青はわたしのフェバリットカラーではある。それにしても痩せた。なんか靴が気持ち大きい気がする。
先ほど「白のパンツ」などと書いてしまったが、ズボンはぶかぶかになっている。もともとガタイはいい。XLサイズであったが、Xサイズで十分になっていた。ちなみにパンツ(下着)をサイズダウンである。そりゃ12kgも痩せたわけだ。顔を見ると、げっそりとして、病人ぽい。まあいい。痩せて精悍になったということにしておこう。
看護師がベッドサイドに来て、最終チェックである。そもそも忘れるほどの”物資”があるわけでもない。着替え自体、すでに整理して妻が持ち帰っていたので、PCや本数冊、あとはちょっとした書類程度である。リュックに入れてしまえば、軽く収まってしまう。
背負おうとすると、妻が取り上げ、背負ってしまう。そこまでしなくても大丈夫だというのに、細い妻が一生懸命世話しようとするのも見て、退院する今病気したことを再度確認する。本当に支えられている。実感。
部屋を出て、ナースステーションの前を通ると、顔見知りの看護師がいて、頭を下げてくる。いつもの光景なんだろうなあとは思いながらも、こちらも「ありがとうございました」と返す。エレベーターで1階に移動し、入退院窓口に行き、診察券を渡し退院であることを告げると、「少々お待ちください」とのことで、しばらく妻と座っている。
10分程待っていると声がかかって、受付に。そこで入院の明細を渡される。「確認してください」とのことだが、何を確認したらいいのだろうと思っていたら、妻が一生懸命確認している。私は妻に「いいから、払って帰ろうよ」と言うが、妻は見ている。この時、健康保険3割負担で140万円程度の請求になっていて、高額で驚いたのは以前書いた。限度額認定があるのでおおよそ16万円程度。
妻が「テレビ代がおかしい」と指摘した。確かに10日間しか利用していないが、20日間分の請求になっている。たった1000円とはいえ、よく気づくなあと思いながら、「いいよ、その程度。どうでも」と私が言ったら、怒られた。しょうがない、窓口の女性にその旨伝えると、「調べます」と言い、窓口の奥の部屋に入って行ってしまった。
15分も待っただろうか。スタッフが声をかけてきて「病棟と確認し、テレビを利用していなかったことを確認しました。訂正して、お詫びいたします」と丁寧に伝えてきた。こちらは「いやいや、こっちの方こそお世話になったんだから、そんなに謝られても・・」。それにしても、さすが妻だ。よく見つけた。
そこで、クレジットカードで支払い。椅子に座りながら、身支度を整えていたら、妻が「この1000円で本1冊買えるでしょう」と。そもそもお金に無頓着な私だが、妻のおかげで、金銭関係もきちんとしてくれている。妻から「そもそも金持ちじゃあないんだから、しっかりしてね」と優しいような嫌味なようなお言葉をいただく。
ついに病院脱出だ。病院の玄関を出たところにバス停がある。バス停で2人でバスをしばし待つことになった。
(つづく)