Drマサ非公認ブログ

はじめて入院した60

 検査後に再度診察室前で待つことになる。これで採血は何度目だろうか考えていた。入院中に17回、退院後通院すれば必ずである。8回通院なので、これも必ずで、結局合計25回である。ホントよく血を採るものだと感心していたら、呼ばれた。

 新しい主治医は検査結果を見て、「前回のデータと比べて少しいいくらい」との見解である。何がいいのだろうと思う。数値がいいというだけであり、僕の何がいいのだろう。僕自身と数値は同じ存在ではない。実際血圧が200越えで、そのせいか頭痛がある。だから採血データはあくまで目安だ。ただ突っ込んで聞く気はない。

 現在体調不良なのは血圧200以上あるからということだが、どうして血圧が200以上になっているのかは一般論のみである。さすがに心不全と半年以上付き合ってきたので、その程度の知識と自らの経験や実感と重ね合わせれば、その一般論は腑に落ちている。しかしながら、どうしてかなり安定してきた血圧が急激に上がったのかは何も説明がない。でも、それで説明できていると習ってきたのではないかと思ってしまう。まあ、いい。

 医者は今度エコー検査をしたいと言ってきた。理由はしばらくしていないから。どうしてそれが理由になるのだろうと思いながら了解する。一応まだ医者の言うことは倫理的に問題がない限り、素直に聞くことにしていたからだ。心不全になって丸1年経てば、質問することにしている。

 薬を処方してもらう。血圧も含んだ心臓の薬が2種類。そして尿が出る薬が1種類である。尿の薬は頓服として出すと言うことだ。実は退院後丸5キロ体重が増加した。ただ病気で12キロ減っていたわけだが。

 そのことを告げると、医者は浮腫を心配していた。また尿の排出が不十分で身体に水が溜まっているかもしれないと疑ったのだ。ただ数値的には問題もなく、足の膨らみをチェックしても問題はない。ただ心配なので、尿が出にくいとか、浮腫が生じていると思ったら、この薬を使いはじめて欲しいという。

 1ヶ月後のエコーの予約をして帰宅した。エコーは1ヶ月後でいいわけだから、念のための検査であることは誰でもわかる。そもそも医者がそう言っていた。経過観察というやつだ。

 もともと病院は嫌いである。ただ病院などいらないというほどのアンチ病院派でもない。簡単に言えば病院もほどほどだろうと思っている。

 病気とは何か?健康とは何か?という問題は定義不可能な問題である。つまり両者の境界を決定づけることはできない。その意味で、ある意味両者は観念である。その観念に私たち日本社会は反応している。

 こういうことを考えていると、僕は医療化(medicalization)という言葉を思い出してしまう。そもそも医療の範囲でなかったものまで医療が取り込んでしまうことである。世界が医療で覆われるのである。

 例えば、かつてなら病院に行かずに様子を見るということが多かった。これを経済的問題や医療体制の不備とみなすか、あるいは自分の力で病気と対峙していたとみるのかでは、全く大きな違いである。

 もちろんかつてなら、様子を見ていたわけだから、自身やその家族などの共同性が病気に対して対処する力があったわけだ。自分で対処せず、そんなことを考えることもなく、兎にも角にも病院に行くべきと考えるなら、それは自分や共同体の力を失うことであり、医療にその部分が取り込まれ、医療が太っていくことになる。そして、医療は産業だ。産業であるから利益を求めて、システムは自動的に動いてしまう。

 とすれば、私が心不全になって今様子を見ながら生活しているわけだが、病院に関わらないで済む部分があるのではないかと疑ってしまうのだ。

コメント一覧

Drマサ
初めましてというか
いつも貴ブログ拝読しています。
医療に対する意見参考になります。それ以外もですが。近い考えなのではないかと勝手に感じております。
サルコドイーシスは難病のようですが、「あまり気にしていません」との言葉に共感します。ただご家族はどうなのかなあとも思います。
ちなみに僕の方はいい加減な生活が心不全として現れたのかと思います。カナダで我慢して帰国して救急受診したのですが、1週間遅ければ死んでいたそうです。妻は怖いこととしていますが、僕は運が良かった程度に考えています。
もう少しこのシリーズ続けますので、そこで僕の医療に対する考え方を述べようとも思っています。
ありがとうございます。「後は野となれ山となれ」は心の奥にしまっています。
エゾ中村
「心不全」について
初めまして
二年前、私も「心不全」で入院しました。 症状は「危篤状態」でした。 心臓機能が30%以下でしたから、死の一歩手前と言う事です。 幸い適切な治療で、一命は食い止めました。
検査を受け、医者から告げられた病名は「難病・サルコイドーシス」でした。 心臓の周辺に肉腫が増殖し、心機能を阻害したそうです。 その後の治療で、BNP値が2000から200まで下がった時点で、退院できました。
その後の経過は良好です。「再発すれば、命の補償はない」と言われていますが、あまり気にしていません。 “ガン”と違い余命何年・何ヶ月と、医者から宣言されないのが救いです。
Drマサ様は血圧が心配の様ですが、持病の心不全は気になりませんか? 私同様“ポックリ病”ならば、遺書を書いて「あとは野となれ山となれ」の心境ではないでしょうか? 失礼しました!
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