母がお世話になっているケアハウス、2階にあるのは、
小さめのクリスマスツリー。
両横に肘掛け椅子が並び、入所者さんたちの談笑の場となっている。
エレベーターが2階に停まると、まず眼に飛び込んでくるのは、このツリー。
母が階段を用いたがるのは、下肢が比較的しっかりしているせい、
だけではない。
エレベーターは、押しボタンの意味することが理解できなくて、
それよりも自分の足で上ることの方を選ぶ。
しかし、これはこれで、転落の心配があってNG。
だから、階段には紙テープが張られ、“エレベーターを使って下さい”と貼り紙。
階段で上り下りするスタッフさんは、いちいち紙テープを外して出入りされる。
だから、母ひとりのためだけの、貼り紙。
ケアハウスを暇乞いするとき、一階へ見送りに下りてくれた母を、
どなたかの上りエレベーターに便乗させて、二階へ届けてもらう。
口だけは達者なのに、テレビのリモコンなど、デジタルな道具は、
まるで記憶から抜け落ちたように、欠落している。
挨拶など、アナログなツール(?)は、依然堅持しているのに、
ヒトの脳の衰え行く標本を見せられているようで、
言葉にならない哀しさ。
ありがたいことに、それにも少し慣れた、今日この頃です。