いつもポケットにシューマン

ドイツアカデミー賞で作品賞・主演女優賞を受賞した
「4分間のピアニスト」。
監督は新鋭クリス・クラウス。


刑務所で女囚にピアノを教えるクリューガーは囚人の一人ジェニーが
類い稀なピアノの才能を持っている事に気付き、
彼女をコンクールに出場させようと個人レッスンを始めるが・・・。

とにかく主演の二人が素晴らしい。
モニカ・ブライブトロイは秘めた過去を背負い
ひたすら音楽に身を捧げるクリューガー役を、
20才以上の老けメイクを施して熱演。
一方ハンナー・ヘルツシュプルングはボーイッシュなルックスで
激しい気性のジェニーを演じています。
モニカに全く引けを取らない程。

そして噛ませ犬的立場、ピアノに対する愛情は人並み以上だが
才能のない教え子の看守。
彼は同じ教え子としてクリューガーを独占された嫉妬心から
ジェニーを陥れようとする。
終盤彼はクリューガーにある事をするのですが、
それが彼の性格を端的に表していて印象的でした。

こういう師弟ものって最後は理解し合うものですが
この作品ではお互い相譲らず。
芸術にしか興味のないクリューガーと
ピアノを弾く事に喜びを感じるジェニー。

だからこそラストの4分間の演奏に繋がっていく。
演奏する"場"を設けてくれた事には感謝するが、
奏でる旋律の束縛は受けない。
その妥協のない信念からくる魂の演奏の果てに
解り合える瞬間が訪れます。
最後のクリューガーの表情が全てを物語っている。

最近ドイツ映画はいい作品が多いですね。
質実剛健を地で行く秀作。