最後はお馴染み映画ベスト10です。
2015年に私が劇場で鑑賞した67作品の中から選出しました。
※記事内容はTwitterでのつぶやきを加筆・改変したものです。
10.コングレス未来学会議
スタニスワム・レムの原作を「戦場でワルツを」のアリ・フォルマンが監督した「コングレス未来学会議」。
中年女優が銀幕の中で永遠の若さを選択する前半だけでも十分作品として成立しそうだが、
本番はその20年後を描いた後半の怒濤の展開。
アイデンティティを放棄した人類のなんとグロテスクな事か!究極のディストピア映画。
9.ナイトクローラー
ジェイク・ギレンホール主演の「ナイトクローラー」、監督は本作でアカデミー脚本賞ノミネートのダン・ギルロイ。
主人公はダークヒーローに見えるが最低のクズ。
ジェイクの大きな瞳が暗闇にひときわ目立ちもうひとつのカメラの役割を果たす。
ロバート・エルスウィットの捉える夜の街が陽炎の如く美しい。
8.約束の地
ヴィゴ・モーテンセンが製作・主演・音楽を手掛けたリサンドロ・アロンソ監督作「約束の地」。
最初は明確に存在する物語も荒涼とした大地と共に徐々に融解。
ひたすらロングショットで風景を捉えた後、洞窟のシーンは舞台劇のようだったのが興味深い。
土地の記憶は泥寧の如く、解釈は観た人の数だけ。
7.マッドマックス 怒りのデス・ロード
ジョージ・ミラーが執念で完成させた「マッドマックス 怒りのデス・ロード」。
CG全盛期に生まれたアクション映画の完成形。
物語は極力シンプルに、設定は深く、しかも大ボスにヒュー・キース・バーンを配役するなんてシリーズファンならば感涙せずにはおれない。
マックスの存在はあくまで狂言回しで、フュリオサの行きて帰りし物語。
6.黄金のアデーレ 名画の帰還
「マリリン 7日間の恋」の監督サイモン・カーティスがヘレン・ミレンを主演に迎えた「黄金のアデーレ 名画の帰還」。
大戦の混乱でナチスに奪われた絵画を取り戻そうとする女性と若き弁護士の姿を描く。
ヘレン・ミレンが素敵なのは言わずもがな、特筆すべきはライアン・レイノルズ。
王道の演出で邦題が大いにネタバレしているが、それを差し引いても素晴らしい出来。
5.Mommy / マミー
カンヌでゴダール爺と賞を分けあったグザヴィエ・ドランの新作「Mommy / マミー」。
母と子の切っても切れない愛憎を過去作とは別の視点で描く。
1:1の画面が2度開くシーンの精神的解放感たるや。端的に言うならば傑作。
ラストシーンのBorn To Dieのイントロで完全にやられた。
4.裁かれるは善人のみ
昨年のアカデミー外国語映画賞にもノミネートされた「裁かれるは善人のみ」。
土地を巡って絶対的な権力と戦う一庶民の悲劇を描く。
信仰心の厚い者=善という痛烈な皮肉、そしてラストに現れる光景。
荒涼かつ圧倒的な風景の画力はさすがズギャビンツェフ。
3.マーシュランド
ゴヤ賞8冠のサスペンス「マーシュランド」。
田舎町で起こった少女惨殺事件を追う境遇の違う2人の刑事を中心にムラ社会の闇を描く。
俯瞰で映し出される湿地帯の美しさの反面、地上で顕となる人間の醜悪さ。
深夜の追跡劇のディテール描写が秀逸。「殺人の追憶」に匹敵する傑作と言ったら褒めすぎか。
2.神々のたそがれ
15年の製作期間を経て遂に遺作となったアレクセイ・ゲルマンの「神々のたそがれ」。
まるで肉塊を10kg食べさせられたような体験。
雨と泥と汚物、暴力と欲望に満ちたこの世界は数々の芸術作品の上に立った上で神話的な輝きを以て現代社会の我々に語りかける。
未開地に君臨する独裁者という視点においては、各所で指摘された通りコンラッドの「闇の奥」を連想させる。
クルツは臨終の際で「Horror! Horror!」と呟くが、それは自分の行った蛮行に対しての後悔では無い。
神も同様に変える事の出来ない世界を嘆くのだ。
1.野火
塚本晋也が大川昇平の同名小説を映画化した「野火」が私の2015年ナンバーワン。
ただただ広がるジャングルの中で繰り広げられる「飢餓」との戦い。
戦争という大きなうねりの中の個がいかに小さく脆いのかが良く分かる。
素晴らしい出演陣の中、気が弱いが故に心を失っていく青年を好演した森優作が白眉。
醜悪なほどの傑作。
以上のような結果になりました。
自身のベスト10を改めて見ると、カオスな物語が多かったかな。
特殊な画角の作品(「約束の地」「Mommy / マミー」も目立ちました。
業界的な話ではミニシアターが次々と閉館しており、現在の厳しい状況を更に実感した一年でした。
ちなみに10位以下はというと、
皆殺しのバラッド
海街diary
パプーシャの黒い瞳
アメリカン・スナイパー
インヒアレント・ヴァイス
フレンチアルプスで起きたこと
イマジン
007 スペクター
ストレイト・アウタ・コンプトン
岸辺の旅
でした。
今年も素晴らしい作品に出合えるといいですね!!
2015年に私が劇場で鑑賞した67作品の中から選出しました。
※記事内容はTwitterでのつぶやきを加筆・改変したものです。
10.コングレス未来学会議
スタニスワム・レムの原作を「戦場でワルツを」のアリ・フォルマンが監督した「コングレス未来学会議」。
中年女優が銀幕の中で永遠の若さを選択する前半だけでも十分作品として成立しそうだが、
本番はその20年後を描いた後半の怒濤の展開。
アイデンティティを放棄した人類のなんとグロテスクな事か!究極のディストピア映画。
9.ナイトクローラー
ジェイク・ギレンホール主演の「ナイトクローラー」、監督は本作でアカデミー脚本賞ノミネートのダン・ギルロイ。
主人公はダークヒーローに見えるが最低のクズ。
ジェイクの大きな瞳が暗闇にひときわ目立ちもうひとつのカメラの役割を果たす。
ロバート・エルスウィットの捉える夜の街が陽炎の如く美しい。
8.約束の地
ヴィゴ・モーテンセンが製作・主演・音楽を手掛けたリサンドロ・アロンソ監督作「約束の地」。
最初は明確に存在する物語も荒涼とした大地と共に徐々に融解。
ひたすらロングショットで風景を捉えた後、洞窟のシーンは舞台劇のようだったのが興味深い。
土地の記憶は泥寧の如く、解釈は観た人の数だけ。
7.マッドマックス 怒りのデス・ロード
ジョージ・ミラーが執念で完成させた「マッドマックス 怒りのデス・ロード」。
CG全盛期に生まれたアクション映画の完成形。
物語は極力シンプルに、設定は深く、しかも大ボスにヒュー・キース・バーンを配役するなんてシリーズファンならば感涙せずにはおれない。
マックスの存在はあくまで狂言回しで、フュリオサの行きて帰りし物語。
6.黄金のアデーレ 名画の帰還
「マリリン 7日間の恋」の監督サイモン・カーティスがヘレン・ミレンを主演に迎えた「黄金のアデーレ 名画の帰還」。
大戦の混乱でナチスに奪われた絵画を取り戻そうとする女性と若き弁護士の姿を描く。
ヘレン・ミレンが素敵なのは言わずもがな、特筆すべきはライアン・レイノルズ。
王道の演出で邦題が大いにネタバレしているが、それを差し引いても素晴らしい出来。
5.Mommy / マミー
カンヌでゴダール爺と賞を分けあったグザヴィエ・ドランの新作「Mommy / マミー」。
母と子の切っても切れない愛憎を過去作とは別の視点で描く。
1:1の画面が2度開くシーンの精神的解放感たるや。端的に言うならば傑作。
ラストシーンのBorn To Dieのイントロで完全にやられた。
4.裁かれるは善人のみ
昨年のアカデミー外国語映画賞にもノミネートされた「裁かれるは善人のみ」。
土地を巡って絶対的な権力と戦う一庶民の悲劇を描く。
信仰心の厚い者=善という痛烈な皮肉、そしてラストに現れる光景。
荒涼かつ圧倒的な風景の画力はさすがズギャビンツェフ。
3.マーシュランド
ゴヤ賞8冠のサスペンス「マーシュランド」。
田舎町で起こった少女惨殺事件を追う境遇の違う2人の刑事を中心にムラ社会の闇を描く。
俯瞰で映し出される湿地帯の美しさの反面、地上で顕となる人間の醜悪さ。
深夜の追跡劇のディテール描写が秀逸。「殺人の追憶」に匹敵する傑作と言ったら褒めすぎか。
2.神々のたそがれ
15年の製作期間を経て遂に遺作となったアレクセイ・ゲルマンの「神々のたそがれ」。
まるで肉塊を10kg食べさせられたような体験。
雨と泥と汚物、暴力と欲望に満ちたこの世界は数々の芸術作品の上に立った上で神話的な輝きを以て現代社会の我々に語りかける。
未開地に君臨する独裁者という視点においては、各所で指摘された通りコンラッドの「闇の奥」を連想させる。
クルツは臨終の際で「Horror! Horror!」と呟くが、それは自分の行った蛮行に対しての後悔では無い。
神も同様に変える事の出来ない世界を嘆くのだ。
1.野火
塚本晋也が大川昇平の同名小説を映画化した「野火」が私の2015年ナンバーワン。
ただただ広がるジャングルの中で繰り広げられる「飢餓」との戦い。
戦争という大きなうねりの中の個がいかに小さく脆いのかが良く分かる。
素晴らしい出演陣の中、気が弱いが故に心を失っていく青年を好演した森優作が白眉。
醜悪なほどの傑作。
以上のような結果になりました。
自身のベスト10を改めて見ると、カオスな物語が多かったかな。
特殊な画角の作品(「約束の地」「Mommy / マミー」も目立ちました。
業界的な話ではミニシアターが次々と閉館しており、現在の厳しい状況を更に実感した一年でした。
ちなみに10位以下はというと、
皆殺しのバラッド
海街diary
パプーシャの黒い瞳
アメリカン・スナイパー
インヒアレント・ヴァイス
フレンチアルプスで起きたこと
イマジン
007 スペクター
ストレイト・アウタ・コンプトン
岸辺の旅
でした。
今年も素晴らしい作品に出合えるといいですね!!
ななさんもジャンル別のセレクトがかなり渋いですね!!
中でも「ネスト」が気になりました!
スペイン映画はホラーといい、
なんとも言えない雰囲気の作品が多いですよね。
トラックバックをありがとうございました。
チョイスされている作品を拝見して好みが似ているかも・・・・と思いお邪魔しました。
未見ですが、観てみたい作品がたくさん入っています。
「約束の地」「黄金のアデーレ」「マーシュランド」「裁かれるのは・・・」「野火」はぜひ観てみたいです。
個人的な好みが偏っているせいもあるかも知れませんが、
解釈の自由度が高い作品が多いのでしょうか…。
「恋人たち」は是非観たいと思ってます!!
まだまだ知らない作品がたくさんあるなあ…
特に上位のものは、機会があればチャレンジしたいと思います!
私もクマネズミさんのランキングでそれぞれ1位の、「恋人たち」「アクトレス」が未だ観れていないのが残念!
今年もお互い素晴らしい作品に出会えるといいですね!
正しく映画とは、時間や場所、更には気持ちの変化が移って行く芸術なんですよね。
塚本版「野火」は戦争の大義とかを超えた、生に関する根源的なサバイバルを描いています。
また色々感想お聞かせ下さい。
そちらにもちょくちょくお邪魔させて頂きます。
TBを誠にありがとうございます。
「めいぐると」さんのベスト10のうち、クマネズミが見たのは半分で、なおかつクマネズミのベスト10✕2と重なるものは2つにすぎませんでしたでした(『野火』と『マッドマックス』)。今年は見ていないものをDVDで出来るだけフォローしようと思います。
今年もよろしくお願いいたします。
野火は、是非観たいと思っている作品ですが、戦争の大義とか、利害というのも、遠く日本の地を離れて、行く意義があるか、とか問うものだと、想像しています。