日本を代表する音楽グループ、YMOの5thアルバム。
オススメ度:★★★★★👑(YMOの到達点)
前作『BGM』で大きな手応えを得た細野晴臣が間を置かず次のレコーディングをしたいとメンバーや事務所に進言したことから『テクノデリック』のレコーディングが始まります。
当初、先行シングル「体操」のレコーディングが開始されますが、一時中断され各人はそれぞれの仕事に散ってゆくことになります。
高橋幸宏はソロアルバム『ニウロマンティック』レコーディングのためロンドンへ、坂本龍一は加藤和彦の『ベル・エキセントリック』のレコーディングのためパリに。
細野晴臣は様々なアーティストのレコーディングに参加する傍ら、スネークマンショーとともにバリ島に赴き、伝統舞踊のケチャに感銘を受けることになります。
1981年8月にレコーディングが再開され、途中であった「体操」を仕上げることから始まります。この時、ピアノや生ベースの活躍が『テクノデリック』の方向性を決定づけることになります。
テクノとは実験精神であり、コンピューターを駆使したピコピコしたサウンドではなく、スタジオ自体を一つの楽器とみなしてテクノロジーを駆使して作る音楽こそがテクノだと。そこに、メンバー各々がレコーディング中断中に得た体験や各人の持ち味が加わり、電子音と生楽器が組み合わさった独特な生々しさが発揮されることになります。
サウンドは「東風」や「ライディーン」のような分かりやすさはほぼなく、暗く難解で実験的な内容となっています。東芝EMIの村田研治と松武秀樹による手作りと言ってもよいサンプリングマシーンLMD-649が使われており、トラック2の「新舞踊」では"チャ"と"チャッ"が何重にもダビングされ、人工的で無機質なケチャが完成しています。
タイトルの『テクノデリック』とはテクノとサイケデリックを組み合わせた造語であり、生楽器や生演奏を多用した音楽もテクノであること、非日常的な祝祭を意味するサイケデリックによりタイトルとして決定されます。
楽曲の方は"こんな醜いトーストは生まれて初めて見た"の語りから始まる「ジャム」、インドネシアのケチャをモチーフとした「新舞踊」、暗く重いピアノとベースが特徴的な「階段」、ガムランをベースとして様々な声がサンプリングされた「京城音楽」、ポップと狂気が同居するシングルカットされた名曲「体操」、サイケ時代のビートルズのような歌唱が印象的な「灰色の段階」、工場の音が繰り返しサンプリングされたインダストリアルな「前奏」と「後奏」など、YMOらしさが発揮されつつも実験的な曲が多数揃っています。
【トラックリスト】
1 ジャム
2 新舞踊
3 階段
4 京城音楽
5 灯
6 体操
7 灰色の段階
8 手掛かり
9 前奏
10 後奏
階段
体操