サイゴンの悪夢

REX HOTELのカウントダウンパーティに間に合うように戻ろうとしたら、バイクの群れでタクシーが進めない。この国ではクルマよりバイクのほうが圧倒的に「強い」。クルマの進む前にバイクが次々と入り込む。クルマはそれらの群れが少しだけ途絶えた瞬間を捉えて、前に進む。公安はたくさん出ているが、みんな知らん顔。

そんな中で事件は起こった。交差点の右折をバイクに場所をとられ、２０分ほどかけてようやくなんとか曲がれそうになったとのそき、突然タクシーがエンスト。いくらがんばっても二度とエンジンはかからない。こんな場所で止まっては、この混雑の中、みんなに迷惑。

そう思ったサイゴンに住む友人（女性）とわたしは車を降りて、後ろを押す。わたしの前を、みんなが笑いながらバイクで過ぎて行く。「あ、女性がクルマ押してる」「超ファンキー」とでもいいたそう。なんでそんな可笑しそうに笑うのよ。

そのとき「○○さーん」と呼ばれ、通り過ぎるクルマからカメラのフラッシュ。友人の同僚たちが、わたしたちの無様な姿を写真に撮った。こんなたくさんの人が入り乱れているサイゴンで、なぜわざわざ見つかるわけ？

クルマを路肩につけて、そこまでのお金を払い、歩いてホテルに向かうことにする。でも歩いてよかったかもしれない。サイゴンの今日の喧騒の中心をゆっくり歩けた。どんなに無茶な運転だらけで道が混沌としても、「わたしなーんにもしらないよ」とシラっと見ている公安。

サイゴンでの大晦日は、とにかくむちゃくちゃなのだ。