今日もいい日で

毎日を旅するように、ワクワクしながら生きる。描く。作る。

ああ、おにぎりむすめ

2014-04-19 21:14:42 | 絵日記・○月○日の「きょう」

【ああ、おにぎりむすめ】

「今日の、しょっぱいな。

ふりかけの混ざり具合にもムラがあるよ。」

 

葉桜をあちこちで見るようになり

平日お昼の時間を過ぎた頃、

都心のターミナル駅

下り電車を待つホームに

おにぎりをかぶりつくうつろな目。

片方の手にはスマホを握りしめ、

おにぎりむすめはおりました。

 

「今日のシューカツはこれで終了。

さっきの二次面接は今までの中でもアウェイ感キツかった~。

あ~もう、お腹が空いた。ねむい。つかれたよ~。

いいや、今食べちゃお。下りの電車、空いてるし。

で、食べ終わったら寝ちゃおう。

シューカツ掲示板のチェックはそのあとで。」

 

 

実家の仕送りとバイトで暮らす大学生活。

おにぎりは、いつでもどこでもササッと食べられて

腹もちがイイ。

自分で握れば食費もおさえられる。

ご飯は実家から送られた故郷のお米を炊いて、

ふりかけは暮らしている街の

100均やスーパーの特売で買い集めたものを

日替わりで混ぜてこしらえるのです。

この生活も4年目、シューカツで幕を開けました。

 

 状況はまずまず。

あさって1社、ついに最終面接。

徐々に面接も通るようになってきました。

思うようにならないことは、

おにぎりのご飯の粒みたいにいっぱいあります。

おにぎりの味を覚えていない日もあります。

けれどもいいことだって実は

おにぎりのご飯の粒ほど、ありますよ。

 

ああ、おにぎりむすめ。

 

しょっぱくもあり

ご飯の甘みもある

今日みたいなおにぎりでも

味わい、かみしめて

明日は明日のおにぎりを握ってね。

 

おにぎりを包むラップフィルム、ひらひら。

春の暖かい風をごちそうします。

すぐに眠れるように。

 

(2014年4月18日の「きょう」)

 

*=*=*=*=*

今月に入り、実際に見た

就職活動をしている女子学生の光景です。

私が乗車していた電車が終点に到着し、ドアが開くと

ホーム最前列に彼女が疲れ切った様子で立っていました。

もそもそおにぎりを食しながら、スマホをしっかり握りしめて。

路上を歩きながら、かじっている女性も

何人か見かけました。

たまたまかもしれませんが、

のりを巻かず、ラップフィルムで包んである

手作りのおにぎりのことが多かったです。

お行儀やふるまいの善悪はどこかに置いておくことにして

おにぎりを通して彼女たちの事情に

想いを馳せてみました。

 

視点を変えてみると、彼女たちに

たくましさと、頼もしさを感じます。

黒い髪、黒いスーツ、黒いバッグ、黒いパンプス。

今回は象徴として、モノクロで仕上げました。

初々しい気持ちをいつまでも。

 

今日もいい日でありますように。


開いて咲く

2014-04-12 19:55:24 | 絵日記・○月○日の「きょう」

【2014年4月6日の「きょう」・開いて咲く】

教会の玄関ホールにある

木製で、背もたれと座面が紅い布張りの長椅子。

草木のようにたたずんでいる。

 

腰をおろすと礼拝堂が目の前に現れる。

長椅子には、主張はない。

気の利いた言葉を語りかけるのでもない。

誰にも等しく

自らを開いて

どのような時も、どのような感情も

無条件で受け入れる。

何も見返りを求めない。

追いかけもしない。

 

休息。心の準備。

いつものこと。特別のこと。

ひとりでも、誰かとでも

訪れる人びとの

大切な時間に立ち会い、寄り添う。

 

この場所で静かに役目を果たし続けている。

 それがこの長椅子の咲かせた花なんです。きっと。

 

*=*=*=*=*

旅先では、教会や寺社を訪れます。

目に見えるものの美しさを鑑賞することもありますが、

何より心がゆすがれて、安らかに納まります。

 

この長椅子はあるカトリックの教会で

出会ったものの一つです。

長い間人びとに使われ、丁寧に手入れをされてきた

まろやかさが味わい深いものでした。

溶け込むように自然にそこにありながら、

確かな存在が感じられる。

簡素で清らかな長椅子をひとつ

胸の中に携えておきたいと思いました。

 

今日もいい日でありますように。


生まれたんだね、ぼくは。

2014-04-05 16:45:14 | 絵日記・○月○日の「きょう」

【生まれたんだね、ぼくは。】

生まれたんだね、ぼくは。

芽が出て、花が咲くころに

池のほとりで。

 

 

 海を見に行ったんだよね。

砂の上はくすぐったいよ。

 

 

まぶしいね。おもしろいね。

風に乗せてもらって

行けるところまで行ってみるよ。

 

 

おろしてもらったのは

女のひとのほっぺたの上だったんだね。

おけしょうがにじんで流れているよ。

なみだというもののしわざらしい。

 

 

まざりあう、なみだとぼく。

生まれた場所、見てきた海を思い出す。

 

 

ひとのかおって、たいらなところがないんだ。

ひたすら歩くよ。

 

 

 ぼくの歩いたあと。

 

 

ぼくのリズム。ぼくのメロディー。

なみだがかわいてゆくよ。

 

 

「なんだか、かおがくすぐったい」

と女のひとの声がきこえた。

ほっぺたがにやっともり上がったんだよね。

もう大丈夫だね。

 

 

今度は自分で飛んでみたんだよね。

花の上で、のろのろひなたぼっこ。

次はどこへ?

 

 

雨あがりの道の上だね。

落ちてぬれた花びら。にじむぼくのこころ。

でも行くよ。次のところへ。

新しいうたをうたうために。

生まれたんだもの、ぼくは。

 

 

*=*=*=*=*

4月に入りました。

お元気でお過ごしでしょうか。

 

絵日記の中で、時々即興的に作る

水彩のにじみの作品をいくつかつなげて、

春の気分、自然や生き物、人の心の

いろいろな「うるおい」を想い、つくりました。

 

ちょっと花冷えしていますね。

暖かくして、桜を見てこようと思います。

 

今日もいい日でありますように。