マイケル・クライトンの小説を楽しんでいたころ、彼の作品「プレイ 獲物」だったと思うが、空中を飛ぶ昆虫や虫の飛び方を研究して軍事技術に応用する話がでてきたことを記憶している。誰がリーダーという事なしに集団が一体となって統一ある行動をとる。お互いに緊密なコミュニケーションをとっていてあたかも一体の生物のように行動する。読みながら「面白いアイデアだが、実現はかなり先の事だな」と当時は感じた。この小説は2002年の発表となっているので9年後の今日、次の記事を読んで驚いた。群知能(SI)を実際に研究して実用化に迫っているらしい。
http://www.cnn.co.jp/business/30002301.htmlより引用。
群知能を応用した超小型飛行機、被災地での活躍に期待(CNN) 被災地では緊急通信網の構築に時間がかかり、救命活動に支障を来す場合があるが、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)が開発中の自律飛行ロボットは、緊急無線ネットワークの高速化、低価格化、信頼性の向上を実現する可能性がある。
EPFLのインテリジェントシステム研究室(LIS)は、群知能(SI)を研究するための集団移動超小型飛行機ネットワーク(SMAVNET)研究プロジェクトを立ち上げた。群知能とは、動物や昆虫の効率的な集団行動を人工的に模倣する技術だ。
人はピラミッド型の組織や伝達機能を発達させてきたが、数十年前のあるころから鰯雲型の組織の研究や提案が出てきた。これも根は上記の群知能(SI)と共通するものがある。リーダはいない。すべての個体が同様の機能を持って誰がいなくなっても機能は全く失われない。しかしお互いにピラミッド型とは比較にならないコミュニケーションを必要とする。
昆虫が持っているフェロモンによる通信やその他いまだ知られていないであろう機能、つまり遺伝子を人間は遠い昔にすっかり失ってしまったが、代わりにようやくコンピュータを得た。そしてそのコンピュータもホスト・クライアントの時代からクラウドの時代に既に入った。情報を一方的に受けざるを得ない時代から情報の発信が容易で、対等な関係に一歩づつ近づいている。
twitterなどはその典型例だろう。人為的に作った組織の伝達ではなく、自然発生的に無名のtwitterに群がっていく。日本ではまだまだ内容ではなく社会的知名度の高いtwitterに依存する傾向はあるが、中東の民主化の動きの中でのtwitterのように自然発生的に見えるものもある。「見えるものもある」と書いたのは、ある組織が裏でコントロールしていることも十二分に考えられるからだが。
ピラミッド型の伝達機構は表立った統制であり、twitterなどは無名に隠れてはいるが実は組織的な統制と言えなくもない。ネットは無名、匿名性を持つが、反面それが顔の見えない組織やリーダーによる統制社会をも形成可能であると思い至った。今後のネットの泣き所だろう。
Facebookはその欠点を克服するが、一方ではプライバシーの漏えいと利用が心配になる。本名を登録するにしても、組織による統制は不可能ではない。
群知能(SI)も技術的追及の末に豊かな産業分野を予想させるが、人の社会に思いを寄せると、なかなか克服困難な問題もある。しかし、問題にぶつかりながら社会を大きく変えていく予感もする。
AIに結びつくと凄いことになりそうだ。