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中国という国(92) なるか?人民元の基軸通貨

2023年03月24日 | 日記

ロシアがドル決済システムの国際銀行間通信協会(SWIFT)から除外されたことで、米国と友好的ではない国々が、基軸通貨ドル依存体制のリスクに直面している。そもそも中国は、人民元を国際的に認知された基軸通貨とすることを重要な国家の経済戦略としてきた。通貨覇権のドル一極集中への挑戦として、人民元をドル、ユーロ、円、ポンドに次ぐ国際通貨とすることを重要課題としている。それにロシアも協調してきた。ロシア中央銀行は外貨準備の一部をドルから金に換えた。さらに、同国の公的金準備量が2000トンを超えたところで買いの矛先を人民元に向けた。さすがにルーブルを国際通貨として認知させることは現実的ではなく、人民元を支えることにより中ロ協調でドル一極支配体制に風穴を開けるもくろみが透ける。

その矢先に勃発したロシアのウクライナ軍事侵攻。世界の多くの国が対ロシア経済制裁に参加、中国側もドル依存体制からの脱却を急ぐ事となった。そこで、ロシア以外の有力協力国として浮上してきたのが原油供給国のサウジアラビアだ。巨額の決済を人民元建てにするとの構想が原油市場では流れる。既に、2020年には英BPが上海先物取引所で人民元建てにより中東産原油を引き渡すなどの事例が出ているからだ。

背景には「ペトロ人民元体制」を構築する構想がある。新型コロナウイルスにより世界的原油需要が激減したことは、中国が巨大な購買力に物言わせて人民元決済を迫る機会となった。サウジアラビアも米国への不満を募らせていた。アフガニスタン撤退、核合意に関してイランに接近、ワシントン・ポスト記者殺害疑惑などが要因だ。対してサウジアラビアは、中国は友好的である。原油需給面でも、米国は原油供給の対外依存度が薄まる一方で、中国は世界最大級の原油輸入国となった。今こそ、原油ドル建て決済に風穴を開け、ペトロ元決済を拡大するチャンスと見るであろう(*ペトロはベネズエラ政府によって発行されている暗号通貨)

サウジアラビア通貨サウジ・リヤルはドルに連動している。ここは人民元を含む複数通貨バスケットに連動することが必要になる。「最適通貨圏構想」と云う理念は、世界の地域ごとに基軸通貨を定めるという発想で、ユーロ誕生の理論的裏付けともなった。米国大陸はドル、欧州はユーロ、アジアは人民元か円か。そして中東だが、地域共通通貨が見当たらない。この通貨真空地帯ではドルと人民元が競うシナリオが有力になってきたが・・日本国として気になるのは、中国人民元が国際通貨となれば、円が機軸通貨であるアメリカ-ドル,ユーロ以外の各国はもとよりアジア地域でも通貨として存在感が薄れることだ。今、円安が進行しているが、円の購買力が歴史的な低水準に落ち込んでいることが原因と指摘される。長期的な視点に立てば、人民元の基軸通貨化は将来円が置かれる状況を予知するかのような円安傾向にあるのが気がかりだ。(この稿日経記事引用)