「セレブバイト」と言う言葉が話題になっているそうで。高学歴の奥さんが通訳翻訳のバイトをしていることに、地方出身の大学教授が驚愕した体験を呟いたところ、炎上してしまったそうだ。小耳に挟んでいたが新聞夕刊のコラムに取り上げられ、炎上していることを知った。ミソジニーと結びつけられて批判されてしまったそうなのだが、決してその通訳の女性を貶める意図はなく件の教授の育った地方には大学(しかも東大など)に進学する女性がほぼいなかったこと、大学に進学したしかもそんな雲の上のような大学を出ていながら、なぜかアルバイトをしている(正業についていないと言う意味と思われる)こと、それらに対して地方と東京(首都圏)の違い、教育や文化の大きな違いにびっくりしたと言うところらしい。その辺の地方による格差に対して、想像できない人もいるのだな。
自分も大学進学で田舎から出てきた部類。地元では親もしっかりした職業についており、理解があり、それなりに豊かに育ってきたと思う。しかし上京してみればうちの予算では都心からはだいぶ離れた駅から15分も離れた日当たりの悪いボロアパートしか借りられなかった。人混みのひどさ。東京は辛かった。いや、そのころは不満と不安はあっても、地方格差などまだ何もわかっていなかったのだ。東京に怯えながらも、いつかやってやる!と言う希望に溢れていた。
今まで生きていて悩んだり疑問だったりしたことはたった一言
「地方格差」
で説明できることに、今やっと気づいた。衝撃だ。
大学受験するために大枚を叩いて親は交通費と宿泊費をかけてくれた。首都圏に家があればいらない出費だ。
一人暮らしをして生活するためにかかるお金と時間。親元から通えば使わなくて済むものだ。アルバイト代は生活費だ。親元から通っていれば、自分を高めることや遊ぶことに使える。
就職してお給料をもらっても、月々10万以上が家賃、光熱費、生活費に消える。実家から通えば、多少親に渡したとしても残りは自分のものだ。
ずるいなー。東京(首都圏)に家があるだけで、こんなにもお金に差ができるんだな、と感じてはいた。
あくまでお金の上の話だった。
その後それなりに稼いで、東京で頑張ってきた。東京の人と結婚もした。そしてそんな自分に誇りも持っていた。我が子には上京した時の自分のような要らぬ苦労をさせたくないと感じていたのだろう。吾子には中学受験もさせて質の良い教育を受けさせ、教育熱心な家庭に育った学友に囲まれ、何十万も払って予備校にも通わせ、大学受験でも国立2校私立4大学複数学部と選択を狭めず十分に出願させた。東京に家も買った。ママ友付き合いもがんばった。お母さんたちは、裕福な専業主婦もたくさんいたけど仕事を持っている人も多く、医者や士業、それこそ東大始め旧帝大、早慶出身など優秀な人がゴロゴロ。自分も、負けていないと思いたかったけれど、同じ人間だと、思っていたけれど、、、今思うと、そもそもの生まれ育ちが違う。
(しかしそう言う育ちの良い人は、親切で優しいのだった)
そもそもの土台の高さが違っていたのだと思う。そんなこともわからず必死になって考えて私が吾子に与えたものが、そう言う人たちにとっては初めからある当然の選択肢なのだ。自分は地方の公立育ち。それこそ親世代は大学なんて行っていない人が多い。中学受験なんて、教育大附属くらいしかない。私も担任に勧められたけれど、母親がそんなことはよくわからないので受験しなかった。なんとなくめんどそうで「やらない」と言ってしまった。今のように個人で情報が取れる時代でもないし、母は教育に関心はあっても本をたくさん買ってくれる、こちらがやりたいことはやらせてくれる、程度で。
大学に行った高校のクラスメイトだって、女子は短大ばかりだ。ごく数人東京に出てきたけれど、短大。地元の女子短大に行けば良い方で、就職した子も多かった。女子で4年生に行った子はいたろうか。地元で働いて、転勤先としてやってきた男性社員に見染められて結婚したり、地元の人と結婚したり。中学の同級生などは中卒だっている。高校中退も何人かいたと聞いている。男子は4年生に進学した子もそれなりにいたけど。
自分の地元が大好きだ。しかし、文化や教育レベルは雲泥の差があるのは事実だ。ネットのない時代なら、なおのこと情報取得にも大きな差があるのだ。自分の地元のような地方都市でさえ、こうなのだから、地元に大学どころか高校もない地方、そもそも職業が一次産業と公務員しかない地方もたくさんある。女性に学歴は必要ないから大学に行かせるのは男だけ、長男だけ、と言う地方があるのだ。勤め先が「郵便局」なら、良かったね!いいところに勤めが決まったね!と周りから言われるような地方だ。
そんなところに育ったのなら、東京の超一流大学を出た女性が、教職でもなく公務員でもなく会社員でもなく医者でもなく、ただのアルバイトについていることが許される世界が(結果的にそうなっただけで、本人の選択ではないのだろうけど)同じ日本にあるのか!と衝撃を受けるのも、むべなるかな。そして、その一部を切り取って批判する人は、そう言う地方と都会の格差を知らないのだろう。知って欲しいものだ。逆立ちしたって埋められない格差、土台の高さの違いがそこにあり、高い土台に生まれた時から立っている人には、低い場所にいる人が見えないのかもしれない。
自分も対等だと思って保護者付き合いもがんばってきたが、高校卒業後、全く対等ではなかったのだと思い知らされている。惨めで、愚かだ。