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世界ランキングとその価値1

2008年09月10日 | フィギュアスケート
ここ2シーズンの情勢や、今シーズンの選手たちの動きを見ても大分変わって来たので、自分なりに整理してみます。

 世界ランキングとは? 
 フィギュアスケートには各大会の順位以外に、通算成績で計算するWorld Standings=世界ランキングが有ります。
 ISU(国際スケート連盟)の公式HPで発表され、3シーズンの通算成績によるランキング(別に1シーズンごとの成績も集計)が掲載されています。
 ランキング上位になるには、シーズン中に多くの試合に出場し、コンスタントに成績を残す必要があります。そのため「ランキング上位の選手=シーズン通して安定した成績を残した選手」と言うことがわかります。逆に怪我や病気など何らかの理由で出場した試合が少ないと、ランキングは下がってしまいます。

 ランキング計算方法※2007年8月以降の規定
 ランキングは各試合ごとに順位に応じてポイントが付与され、その合計を集計していきます。
 ポイントが付与されるのはまず1シーズンの合計では、冬季オリンピック、そしてISU主催のチャンピオンシップ(世界選手権、世界Jr.選手権、四大陸選手権、ヨーロッパ選手権)の内、一番高いポイントを取った試合(3シーズン合計なら、3つのうちベスト2つが累計される)と、ISU公認大会のGPS(グランプリシリーズ)、GPF(グランプリファイナル)、Jr.GPS、Jr.GPF)、の内、高いポイントを取った2試合分(3シーズン合計なら、6つのうちベスト4つが累計対象)、国際B大会※(ネーベルホルン杯、フィンランディア杯など)のうち、高いポイントを取った2試合分です(3シーズン合計なら、6つのうちベスト4つが累計対象)。

  全日本、全米選手権などの国内大会にポイントはつきません。また、大会の重要度によって加算されるポイントは異なります。
 3シーズンの合計ですがポイントがそのまま反映するのは現シーズンと先シーズン。先々シーズンのポイントは70パーセントが反映されます。

 ※国際B大会でポイントが付くのは以下の条件を満たした場合
 ・技術専門審判3人が異なる国から選出されている。
 ・シングルは4ヶ国8人以上、ペアは3ヶ国5組、アイスダンスは4ヶ国6組以上が出場している。
  
 参考:Communication No. 1460(PDFファイル)←各大会で順位ごとに付与されるポイントはこちらの4ページ目に掲載されています。

 世界ランキングに対する選手の意識
 フィギュアスケートの世界でエリジブル(アマチュア)でもプロになってからも、最も重要視される成績は世界選手権オリンピックです。
 その他の大会は全てこの大会で優勝するための調整試合と言っても過言ではないくらい、五輪と世界選手権のメダルは選手のその後の運命を左右します(ヨーロッパの選手はヨーロッパ選手権、アメリカの選手は全米選手権も重視されます)。
 ですからそれ以外の大会でいくら良い成績をとっても肝心の世界選手権、五輪で優勝できなければ意味がありません。
 世界ランキングも同様です。多くの大会に出場し良い成績を残してランキング1位になっても、世界選手権で優勝していないなら意味はありません。
 ですから選手もランキングをさほど気にしませんでしたし、ランキング1位を狙うために多くの大会に出て良い成績を残そうと頑張る選手はいません。そんなことをして肝心の世界選手権、五輪にピークを合わせられなかったら笑い者です。
 有力選手の中には、世界選手権に照準を絞るため、他の大会はパスする選手も多く見られました。アメリカのミシェル・クワン選手は、選手活動の後期は故障に悩まされたため、GPSは欠場し、全米選手権と世界選手権のみ出場していました。ですから当然ランキングは低かったですが、それが彼女が成績を残す上で問題になったことは一度も有りませんでした。(最も彼女のネームバリューが有ってこそ出来たことで、無名の選手がこれをやっても同じ結果は望めないと思います。)

 ルール改正と意識の変化
 しかし2006ー2007シーズン以降になされたルール改正により、世界ランキングはそれまでより選手に多くの影響を与えることになりました。
 改正されたルールは下記の通り。

 1 3月の世界選手権終了後に発表される最終ランキング(1シーズンのみの合計)上位3名には賞金を支給する。(2006-2007シーズン改正)

 ご存知のように、フィギュアスケートは大変お金のかかるスポーツです。スポンサーの支援を得ている選手もいますが、多くの選手は資金繰りに苦労していますから、賞金が稼げるのはありがたいこと。たとえ少しのお金でも無いよりあった方がマシです。と言うわけでランキングが上位であることに越したことは無いという意識が生まれました。
 
 さらに大きかったのは下記の2点の改正。
 
 2 世界選手権の予選廃止に伴い、SPは世界ランキングで滑走順を決める。(2006-2007シーズン改正)
 3 GPSのSPの滑走順はランキングの低い順からとする。(2007-2008シーズン改正)

 これまでは抽選だった滑走順が、ランキングによって左右されてしまうこと。
 これが選手たちにランキングを意識させる大きなきっかけとなりました。具体的には、どういったことが影響したのか、次のエントリーで解説していきます。(その2はこちら。)