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嬉しかったり残念だったり

2013年02月11日 | ISU Championships
 四大陸選手権ですが、出かけていたり仕事があったりでまだ全く見れていない状態で、今日やっと高橋大輔選手と鈴木明子選手の演技だけ見ました。

 まずは鈴木明子選手。
 全日本、国体と調子が下がりきっていて、本人の落ち込みも相当でしたので、短い期間でどこまで立て直してこられるのか、心配で心配でたまりませんでした。
 だからこそSPがほぼ完ぺきに近い出来で、課題のFSも2A+3Tが1Aになった時は結果がわかっていても見ているこっちがうわあ…と動揺してしまったのですが、落ち着いて立て直していましたね。

 SPのプログラム、こういう力強くクールな女性像って女子シングルのジャッジには受け入れられるんだろうか、と心配でしたし今回のPCSを見るとやっぱりこの路線は受けないのかなあとも思うのですが、本人は完全に曲の雰囲気もキャラクター性もちゃんとものにして、自分のものとして完全に表現できるようになったと思います。格好いい!といつ見ても思います。

 FSに関しては何よりPCSが8点台に乗ったのが嬉しい。これは自国開催というアドバンテージもあってかもしれないけれど、もらった得点にふさわしい演技はできていると思います。
 海外のファンからも、もっと彼女にPCSを出すべき、という声が出ているのも嬉しい。
 私はジャッジではないから、世界選手権で銅メダルをとっても、なぜ彼女が評価されにくいのか、点数が思ったほど伸びないのか、そこに明確な答えを出すことはできないし、ジャンプの助走を取るために、ジャンプ前のトランジッションがそれほど目立たないのが、その理由なのかなと、そのくらいしか推測することができないのですが、フィギュアスケートを長年見続けている海外のファンが、彼女の演技を素晴らしいと思い、もっと評価されるべき選手だと、そう称賛してくれることは、フィギュアスケーターとしてはとても素晴らしい事なのではないかと思います。
 それほど胸を打つ、心に残る演技ができるというのは、表現者として得難い才能でもあり、彼女の努力や曲に取り組む姿勢が裏打ちした素晴らしい成果なのではないかと。
 きっと競技を引退した後も語り継がれ長く愛されるスケーターとなるんだろうな、と思います。
 
 まだここで終わりじゃないけれど、心配だったからこそ、ここまで立て直してきたことにほっとしました。
 2位おめでとう。順位以上に、彼女が「弱い弱い」と責めていた自分を受け入れ、成長したことがわかる演技だったことが嬉しくてたまりません。

 
 一方の高橋大輔選手。
 年末を挟んで年明けからはJSCやSOIなどのイベントやアイスショーもあって、その中でSPを変更する作業を並行しつつ…というのは高橋選手でもやっぱり大変なんですね。

 それ以上に振付師ニコライ・モロゾフが、高橋大輔という素材から作り出したプログラムが、あれほど凡庸な作品だったことにがっかりしてしまいました。ここ最近の振付師としての彼の作品はどれもマンネリだと感じるものが多かったですが、それでも高橋選手から受けるインスピレーションがあれば、もしかしたらまた違ったものが生み出されるのかもしれない、と期待があったのですけど、今回のSPを見るとそれも難しかったのかなと思います。うーん、SPの2分50秒が長く感じました。ステップはいいなあと思いましたが。
 今回の演技を振り返って反省点を挙げ、忠告されることも受け入れて、改良に取り組んでほしいと思います。
 時間が足りなかった、滑り込みが足りなかったというのもあるでしょうし、まだディティールができているだけで、これからもっと細部を詰めていくんだと、そういう段階にあるプログラムだと思うのですが、これが夏ならまだ様子見ができたけど、世界選手権まであと1か月、時間との闘いですが、何とか頑張ってほしいなと思います。
 
 FSに関しては気持ちが入ってないというか、滑りそのものは綺麗だったんですけど、一度崩れたものを気力だけで何とかできる段階に、身体のコンディションが追いついていなかったんですかね。
 得点源だった3Aが不調になっているのがやはり何より痛いです。

 今回の四大陸選手権男子のSPを見て思ったんですけれど、若手選手の成長スピードが尋常じゃなくて、もうSPから4回転どころか、その4回転を加点付きで完璧に決めないと、優勝争いからも脱落してしまう、とそこまでのレベルに来ていることが恐ろしいです。
 見ている側のこちらでさえ焦燥感を感じるのですから、あの中にいる選手たちにかかるプレッシャーは相当のものがあると思います。
 体力的にはピークを過ぎている高橋選手が若手と対等に戦うには、身体のコンディションからして相当気を配って作っていく必要があるでしょうが、それを一試合一試合ごとに整えるのはもう難しい段階にいるのかもしれません。

 高橋選手はこれまでエースとして日本代表としていろいろなものを背負ってきました。スケートリンクの存続運動も中心となってやってきたのは彼だし、アイスショーも自分が出ることで少しでも盛り上がるなら、と声がかかったものはなるべく出るように頑張って、フィギュアスケートをブームで終わらせるのではなく、人気競技として定着させるために、自分ができることはできるだけ頑張ろうと、競技以外のことにも後進のことにも目を配り、気を使い、一生懸命取り組んできていたと思います。

 けれどラストシーズンとなる(予定)の五輪シーズンくらいは、自分のことだけを考えて行動してもいいんじゃないかと思います。
 競技のためではなく自分のために、自分が納得のできる演技を追求するために、それ以外のしがらみは考えず、彼が考えなくてもいい状況に、周囲もしてほしいなと思います。
 
 今は本田武史選手がほぼたった一人で戦っていた時代とは違います。高橋選手以外にも荷物を持ってくれる頼もしい後輩がたくさんいます。
 自分一人で何もかもを背負い込む必要はもうないんじゃないかと思います。

 誰のためでもなく自分のために滑ってほしいなと思います。