私の幼少時代である昭和40年代・・・
秋口の台風の季節には、夜になると・・・
怖いような面白いような出来事が起こった。
当時殆んどの庶民の住宅は木造建築で、アルミサッシなど出始める前の時代・・・
木製の窓枠は、気圧が下がってくると同時にやってくる暴風雨と共に、窓枠の中にあるガラスを揺さぶり始める・・・
ガッシャーン・・・
ガタガタガタガタ・・・・
隙間風が部屋の中に入り込み、生暖かい湿気を部屋の中に導いてくる・・・
ピカピカピカ・・・・・
ゴロゴロゴローーー
我々子供は、「キャー」とか「怖いよー」とか言いながら布団の中にもぐりこむ。
その時・・・
部屋の蛍光灯が消える・・
「停電だ。」
父親は至って冷静である。
すると用意してあった、蝋燭に火を灯す。
人の顔辺りから明るくなり始め、家族の寄り添った顔がそこにある。
窓の外は依然として暴風雨なのだ。
私は、確かに怖かった。
しかし、そこはかとなく暖かい安心感を感じることがあった。
家族が一丸となって、自然の猛威に打ちひしがれている時・・・
蝋燭の明かり・・・
私は妙なのだが、そんな時、幸せな気持ちになっていた。
自然界でも動物達はこんな時、巣の中で寄り添って時間の経過するのを、ただ待つのみである。
そこには、哺乳類独特の弱さを集団になることによって回避する知恵を持っている。
そんな動物的感性からなのか、あるいは私の天邪鬼な感性からなのか・・・
停電はいつしか楽しく思えるようになってきた♪
20分程で部屋の明かりが点燈する・・・
表の風も収まり、ゴロゴロ様は遠くに行ったようだ。
そして、通常の生活が見えて来る・・・
んん・・・・
人間、不自由な方が幸せなんだろうか・・・・
それはまた、違う話だと思うのだが・・・・・