海風に吹かれて

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メッセンジャー ~大切なあの人へ~ 第7話

2009-02-25 07:55:44 | 小説 メッセンジャー~大切なあの人へ~

    

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 つかつかと早足に歩く僕を、お母さんが慌てて追いかけてきて言った。
「ねぇ、どうしたのよ? 葉介。何かあったの?
 ちゃんと話しなさいよ! 」
 少し腹を立てたようなお母さんの口調に、僕はカチンと来た。
「何でもないってば! 」
 そう言って振り返った僕の目に、準の家の玄関に立ち、深々と頭を下げるおばあちゃんの姿が飛び込んできた。
 「あっ…! 」
 イライラした気持ちが一瞬で吹き飛ぶ程、僕は驚いて目を見開いた。
 そんな僕を見て、お母さんも思わず振り返り、玄関と僕の顔とを、まじまじと見つめた。
「ねぇ…ちょっと…。葉介ったらどうしたの? 誰かいるの? 」
「あ…じゅ…準のおばあちゃんが…」
「え? 準くんのおばあちゃん? 」
「こっちを向いて…、おじぎしてる。玄関の前で…」
 お母さんは、もう一度振り返って目を凝らしていたけれど、結局おばあちゃんの姿が見える事はなかったみたいだった。
 しばらくして、諦めたように肩で息をつくと、腰をかがめて僕に向き合い、出来るだけ明るく、そして優しい言葉を選んで話した。
「葉介…準くんのおばあちゃんが、おじぎしてるって言ったよね?
 きっと、葉介にお礼を言ってるのよ。
 ちゃんと準くんに伝えてくれて、ありがとうってね」
 僕は返事をする代わりに、小さく頷いた。

 準の家からの帰り道、僕もお母さんも、ほとんど口を利かなかった。
 お互いに話そうとはするものの、言葉が見つからないという感じだった。
 何となく重苦しい気持ちのまま、僕は歩いた。

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