これは2018年の10月に書いたコラムです。
昨年ちょっとコラムをお休みしていた間に、すごい量の過去の自分のコラムを読み起こす機会がありました。
びっくり!
よくまぁこんなに書いたよなぁ! しかも話題は尽きることなし。
びっくり!
昔に書いた内容が今もそのまま日本の子どもたち、教育、留学の現状に当てはまる!
そう、過去の問題ではなく、今も続き、むしろ悪化している状況に愕然としました。
ま、深刻に考えず、読者数をもっと増やせば、たくさんの方の目に止まる!
そうしたら、もしまた7年後にコラムを読み返した時に「よしよし、日本はよくなってる、よかったぁ!」と嬉しくなれるだろう。
ということで、このタイトルにある「日本の生徒の英語エッセイへの大きな勘違い」を再公開することにしました。もちろん今に合わせて多少の変更は加えました。
ではでは、現代の日本人生徒にもそっくり当てはまる「エッセイ劇場」の始まり始まり。
Case Study 1 : A君の場合 「ママ!聞いて聞いて!」の大間違い
お父さんの海外赴任に伴い、大きな青い空が広がるアメリカ中西部で育ったA君。物心ついた時には周りから英語がどんどん耳に飛び込んで来ました。A君の脳は、広大な大地に水が滲み込むように、英語を吸収して行きました。
忙しいお父さんから子育てを任された形のお母さんは大張り切り。日本語も忘れさせないようと幼児用教材を日本から送ってもらい大奮闘。家庭内では、日本語と、お母さんが頑張って話す「少々怪しい英語」が飛び交う環境でした。ママを喜ばせること」に満足感を見出す幼児期の特徴でもありますが、A君は、お母さんに毎日「ママ、あのね。」と英語で話をするのが日課にもなったそうです。お母さんは”Tickled pink!” 「うちの子すごい!」とうっとりするのがこの親子の日常だったのかなと、エッセイを最初に読んだ時に感じました。まさか、それが実話だったとは後からお聞きしたことですけどね。
A君が高校生になり書いたエッセイは、客観的観察が必須だというルールを無視し、自分の感情的な主観、それも幼児のような感情満載で構成されていたのです。
帰国後は、特に英語教育に力を入れる小学校に入学。英語の環境はなくなりましたが、「ママ、あのね!」は続いていたのかなと思います。普通のお子さんが学校から帰り「今日ね、学校でね。」と話をしてくれるのと同じです。A君の場合は、それが英語であっただけのことですが、英語で「ママあのね」の目的が、大好きなママへのサービスだったのも知れません。
日本の中学の英語教育に不満たらたらのお母さんは、A君を留学させることにしました。「こんな学校にうちの子をおいといたら類稀な英語力が落ちてしまう!」と。「類稀」だったかどうかは、お母さん独自の判断であり、「あなたの英語はこんな学校にいては勿体ない。」と言われて育ったA君には、少々問題のある成長過程だったと思います。
「自分は特別」「あなたは特別」と言われ、「自分はエリート階級」だとの自尊心を持った子供は、何でも周りのせいにし、自分の行動・能力への分析能力に大きく欠けることは発達心理学上でも証明されています。選定過程で性格の幼さを暴露したアメリカ最高裁判事カバナー候補が、その見事な事例だとDevelopmental Psychologistsたちが書いていましたね。「自分は何をやっても素晴らしい。悪いのは周りだ!」との心理に陥ってしまうわけです。
カナダの国民的スポーツ、アイスホッケーに興味を持ったA君を「この機会を逃しては大変!」とカナダに留学させたお母さん。カナダの高校卒業を目指す留学生活の開始です。自身満々のお母さんと、学校の授業にとまどうA君。もっと出来ると思っていた英語が、実はカナダでは、まだまだ同年齢の生徒からは大きく劣っていると認識する時期に入りました。
そんな時です。カナダクラブでEssay BasicsにA君が参加したのが。快活で、スポーツ好きで、本当にアイスホッケーにはまって、いい子でしたよ。少し幼いな〜と感じましたが、今後の成長が楽しみな少年だと思いました。
ところが。
最初のレベルのエッセイを見て、大仰天。カナダでは小学生低学年が書いて、先生が、赤ペンで色々アドバイスする絶好の実例のようなエッセイを書きました。
“Why I want to go to Canada.” というテーマで、理由を3つ、その理由を論理的に説明する実例を各理由に3つづ入れて書く短いエッセイが最初の課題です。
カナダに行きたいのであれば、カナダを客観的に描写し、読み手にわかりやすく具体的に書いていくよう指導します。「だってカナダが好きだから。」は通用しないわけです。
A君の書いたエッセイには、「自分がいかにアイスホッケーが好きで(具体的理由記載なし)、選手に憧れていて(具体的理由記載なし)、選手に会えたら夢心地になるということを繰り返し繰り返し書いていました。
「ママあのね。」エッセイの典型ですね。“like” “love” “excited” などの単語を単に羅列しても、読み手には伝わりません。なぜ”like”なのか、どこがどのように “excited”なのかを、具体的、客観的に書き、すべての理由と実例に論理的一貫性をもたせるのが英語のエッセイです。長々と書く必要もありません。
Robertがどう説明しても、「ママあのね」癖が尾を引いて、ひとつのエッセイを書き上げるのに相当の時間を要しました。言いたいことがいっぱいあるA君ですから、その発信方法を成長させ、英語思考法を理解してもらうと、「英語エッセイ」の能力は飛躍的に伸びるはずとの潜在能力を期待しながら指導していましたが。
ママが「うちの子の能力をわかってない。」とでも思ったのでしょうか、A君は姿を消して行きました。
未だに「ママあのね」エッセイを書いて、なぜ高評価がもらえないのか困っているのでは?と心配しています。どこかで乗り越えることが出来る壁であればいいなと祈りつつ、日本の意識だけで決めつける「英語エッセイ」の怖さを改めて感じたケースでした。
自分も「ママあのね」エッセイに似てるかも!と心配になった方はいらっしゃいますか?
いつでもご相談下さい。
絶対飛び越えないと行けない大きな壁ですからね、お手伝いしますよ。
Case Study 2 : 中学2年から英語エッセイを習い始めたMちゃんの場合
自然児でした。
最近には珍しく、幼い時からの習い事なし、塾なし。自由時間いっぱい、田舎の自然いっぱいの環境で育ったMちゃんがカナダクラブにやって来ました。好奇心旺盛で、目をキラキラ輝かせて通って来たMちゃんは、たちまち英語で表現することにハマっていきました。
実に自然な言動に、日本の子供が本来あるべき姿を見た気がしましたね。
教室に座っているより、自転車で全力疾走したり、空を眺めたりしている方が似合っている少女でした。
そのうち、もともとの知的能力遺伝子が頭角を現し始めます。英語文法も、最初は「え〜〜!」と驚くような間違いを繰り返していましたが、本人は至ってご機嫌。新しいことを習うこと自体に大いなる満足を得ていたようです。「ひとつエッセイを書いてほめてもらうのが目的ではなく、自分で新しい事を学ぶことが目的でした、Mちゃんには。」
私達も、本人の脳が自分の文法間違いを学習していく過程を見守っていきました。
そんなMちゃんが本格的にRobert McMillanの指導するEssay Basicsを始めました。
"I wan to go to …… "というトピックセンテンスから、3つの論理的につながる理由と、それら理由を説明するための、やはり論理的につながる具体的な実例を使い書いていくエッセイからのスタートです。 まずは、プランを作ることから教わります。
そのうち、Robertが大笑いしながら私のところへ。
「すごい! こんな面白いめちゃくちゃな論理は初めて見た! 面白いね。 さて、どうやってリードしようかなぁ。」と。
例えば:
“I wan to go to Disneyland.”とトピックセンテンス。
次に3つの理由が必要なんですが、Mちゃんの理由は”I wan to make my own theme park.”
Robertは「はっはっは」と、こう指導を始めました。
「あのね、すごく面白いアイディアで、ぜひそうしたらいいなと思うけど、これはトピックセンテンスとつながってないよ。 Disneylandに行きたい理由は、自分のテーマパークを作るためにアイディアがほしい、あるいはどんなテーマパークがいいのかを勉強するためだよね。 それなら、理由になるよ。 今の”I wan to make my own theme park.”はまた新たなトピックを自分が作ってしまったことになるからね。」
Mちゃんは、理由の分を”I wan to learn ideas to create them parks.”と変えて、次に進みました。小さな時から塾漬けの生徒たちの書く退屈な理由、”I like Mickey Mouse.”なんかより、はるかに創造力あふれる理由です。
Well done!
ところが、その次の理由、その次のエッセイも、またまた同じような、創造力いっぱいだけど、論理的にはつながらない文がたくさん並びました。Robertは、そのたびに根気よくMちゃんといっぱい話をし、指導していきました。もちろん、ひとつのエッセイを書き上げるのに、相当な時間がかかりましたが、Mちゃんは何のその。A君のように「なぜあなたはこんなにエッセイを書くのが遅いの?」と、横で見張っているお母さんの存在がなかったのもMちゃんには最高の環境だったと思います。
Mちゃんの脳が急激に抽象的・客観的論理を理解し始めたのが15歳くらいです。
人間の脳の正常な発達段階通りです。急にエッセイが論理的になりました。
Robertもまたまたびっくり。
それからのMちゃんの進歩は目を見張るほどのものでした。
人間の脳が自然に正常に発達するのを、周りからそっと手を出して助けることこそがいかに大切か改めて認識した経験でしたね。
余談ですが、幼い頃から塾のはしごで自由時間もなくそのまま身体だけ大きくなった生徒は、16歳、17歳いや大人になっても、”I like Mickey Mouse.”的な創造力のない理由しか書けません。
日本人が「英語のエッセイ」に苦労するのは、ここにも理由があるかも知れません。
Mちゃんはこの春、日本の大学の医学部を卒業しました。
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