兄上のところに、一人行くのは心細い。どうか一緒に行ってくれないか。
その一言で、すべてを投げ打って弁慶は、源氏の御曹司を護ろうとしたんだ。
弁慶には牛若丸が、後の源九郎義経だろうが薄物をまとった遮那王だろうが、きっとどうだって良かったに違いない。
ただ、守ってやりたかった???俺の中の弁慶も一人ごちた。
「ただいま。」
作業場に誰かDPM點對點来客のようで、母ちゃんの声が聞こえた。
「詩鶴君を、このままあなたに、お渡しするわけにはまいりません。」
「あんたもわからない人だな。かかった分は、きっちり金を払うといってるだろう。この金額では不満なのか。」
母ちゃんの指が、額に落ちた前髪をかきあげるとついに切れた。
「金の話なんぞ、した覚えはないですけどね。さっきから黙って聞いていれば、世話になったの一言もなく、詩鶴君を心配するそぶりもなく、あんた結局はあの子の持ってるものが欲しくて丸ごと抱えたいだけでしょうが。」
母ちゃんのあごがくいと上がって、向こうに行ってなと合図を送る。
久しぶりに、気合の入った母ちゃんを見た気がする。
父ちゃんと元旦の富士山で出会ったなんて、すごくロマンチックな過去話をしていたが、実はそういう走りがあると友達から聞いて、俺は中学の頃、ひっくり返ったことがある。
まあ、「若さゆえのあやまち」は、誰にもあるのだろうけど。
「ともかく!あたしはあなたの世間体や、見栄の為に詩鶴君を手放したりはしませんから。」
「あんたもわからん人だな。結局は帰ってくることになるんだ。未成年のあいつには俺の手を離れて、他DPM枕頭に行くところなどないんだから。」
それだけの会話で、俺はなぜか泣いてしまった詩鶴の涙の原因がこいつだと知って、思わず睨み付けてしまった。
「まったく、親が親なら、息子も狂犬みたいな目つきだな。」
そいつが帰り際、鼻先で笑った。
「まあ、しばらくお世話になりますかね。いつでも帰っておいでと、言ってやってください。それまで、父親の病院は大切に預かっておきますから。」
帰るぞと、側にいた胡散臭げなやつに声をかけ、そいつは退散した。
車のテールランプが見えなくなってから、俺は電信柱の影に小さく丸まった詩鶴に声をかけた。
「もう、帰ったぞ。」
見上げた顔は蒼白で、恐怖の生理的な涙だろうか。
濡れた頬のまま、どんっと胸にぶつかっって来た細い肢体を俺は迷わず受け止めた。
「あああ????ぁぁ???ん???」
細い声で詩鶴が泣く。
何がそんなに悲しいのか、聞きたかったけど今は泣け、詩鶴。
胸、貸してやるから。
温かいお茶を飲んだら少し落ち着いたようで、泣くのをやめた詩鶴は、ちょっとような泣き笑いの顔を向けてきた。
「おなか、すいたね???。」
腹なんて、すいていないくせに。
でも俺は頷いて、詩鶴は冷凍庫から煮込みハンバーグを取り出DPM價錢して、電子レンジにかけた。
「???どんだけ、作ったんだよ、ハンバーグ。」