ソウルにはもう一月以上も帰っていない。
大陸での、休みなんて考えられないスケジュールをこなす毎日に追われ、気がつけば大切なものを見過ごした気がしていた。
ここ何週間もずっと拗らせたままの風邪のことで、マネージャーにはふいに沸いた休日に韓国へ飛ぶことを咎められたが…
ヒチョルに会いたくて…会いたくて…会いたくて…
胸の奥がヒリヒリと焦げつく痛みを抑えることの方がどれだけか体に悪い気がする。
空席待ちでなんとか最終便に滑り込んだ俺は、一路ソウルを目指した。
北京を飛び立ち2時間が経とうとしていた。
そろそろだな…
窓の外を眺めると一面に広がる光の渦。
突然会いに来たと言ったら…なんて顔するだろう。
ヒチョルの嬉しそうな顔を思い浮かべただけで、俺の胸は高鳴った。
「ヒチョル、今どこ?」
「部屋だよ。…どうしたんだ?急にそんなこと聞くなんて…」
「そこで待ってて。すぐに行くから」
「えっ?」
驚いたままのヒチョルとの電話を一方的に切断して、俺は宿舎のドアを開けた。
薄暗いリビングを抜けてヒチョルが待っているはずの部屋へ向かった。
「ヒチョル…会いたかった。ずっと…ずっと…こうやって抱きしめたかった」
「ハンギョン…」
久しぶりに抱いたヒチョルは、一回りほど小さくなっていた。
「ヒチョル、痩せすぎだよ。過酷な減量はダメだってわかってるだろ?」
「お前が痩せすぎとか言うなよ。なんだよ、この体…」
たった1ヶ月会わないだけで、お互い随分色んなことがあったんだな。
ヒチョルの髪に顔を埋めながら、そう思っていた時だった。
「ハンギョン…雪が…」
そうヒチョルは囁くと俺の腕の中からするりと抜けて、部屋の中にある唯一の窓から外を眺めに行った。
「ホントだ。雪が降ってるな…」
仁川空港に降り立った時から実は雪がソウルの街を舞っていたのかもしれない。
しかし俺はヒチョルのことだけを考えて、窓の外を眺める余裕なんてあの時はなかったんだ。
「北京も今年は大雪が降っているんだ。俺の隣にお前が居ないと、温めてくれるものがない…だからなかなか風邪がよくならないのかもしれないな」
そう言って、俺は後ろからヒチョルを抱きしめて彼の体温をじんわりと感じていた。
「ハンギョン…別れよう」
えっ?今、何て言った??
ヒチョルの肩にもたれていた顔を離し、俺は聞き返した。
「何言ってるんだ?ヒチョル。急になんだよ…やっと会えて…それなのに…なんだよ、コレ…」
ヒチョルの言葉が耳にこだまする。
別れよう…
わかれよう…
ワカレヨウ…
「ハンギョン、これはずっと考えていたことなんだ。急に考えついたわけじゃない。もう…ずっと、このことばかり思っていた」
「なんだよ。何が原因だっていうんだ?俺が連絡を取らないことに腹を立ててるのか?それともまた写真を撮られたことか?…まさか…まさ…か…ほか…他に…好きなやつが…で…でき…」
ホカニ スキナヤツガ デキタ ノカ?
強がってもそのことだけは、言葉に詰まってしまう。
自分に非があることならどうにでもなる。
しかし…
ヒチョルが心を別の場所に揺り動かしたとすれば…
「ハンギョン…泣くなよ…俺だって。……辛いじゃないか…」
俺、泣いてるのか??
あんまりな出来事に、俺の全ての神経細胞が停止したと思っていたのに。
「ひ…ヒチョル…別れるなんて…別れるなんて、そんなひどいこと言うなよ」
まだそこにヒチョルが居る。
まだなんとか引きとめられる。
俺は必死になってヒチョルに訴えた。
「俺は…俺はお前が居ないと生きていけない。お前は俺の全てなんだ。わかってるだろ?…ヒチョル、愛している。これからも、お前だけを愛し続ける。だから…だからヒチョル、もう一度…」
「ハンギョン、ダメだ。ごめん…もうこのことは俺の中で答えが出てしまっている。もう…戻れない…もう…引き返せない…」
俺を見つめるヒチョルの瞳からも、止めどなく涙が次から次と溢れかえる。
「嫌だ…ヒチョル、俺はそんなの…そんなのわからない……わかりたくないっ」
俺の気持ちをわかってほしい。
俺はヒチョルの顔を両手で挟み込み強引にkissをした。
慣れ親しんだくちびるだった。
烈しくてまろやかで、甘い蜜が溢れ出すような…
「…んっ、ハンギョン…ヤメ…」
俺から離れようとするヒチョルを必死に追いかけた。
行くなよ…
離れないでくれ…
我がままだと罵られてもいい。
俺の傍から離れないで。
「ヒチョル…ヒチョル…」
お互い涙に濡れたまま今までで最高のkissをした。
狂おしいほど愛した者との別れは、こんなに唐突にやってくるものなのか。
大河に流された小舟のように…
不条理な流れから逃れることはできないのか。
明け方、俺に気付かれないようそっと立ち上がるヒチョルの後ろ姿を、俺は瞼を閉じたまま見送った。
大陸での、休みなんて考えられないスケジュールをこなす毎日に追われ、気がつけば大切なものを見過ごした気がしていた。
ここ何週間もずっと拗らせたままの風邪のことで、マネージャーにはふいに沸いた休日に韓国へ飛ぶことを咎められたが…
ヒチョルに会いたくて…会いたくて…会いたくて…
胸の奥がヒリヒリと焦げつく痛みを抑えることの方がどれだけか体に悪い気がする。
空席待ちでなんとか最終便に滑り込んだ俺は、一路ソウルを目指した。
北京を飛び立ち2時間が経とうとしていた。
そろそろだな…
窓の外を眺めると一面に広がる光の渦。
突然会いに来たと言ったら…なんて顔するだろう。
ヒチョルの嬉しそうな顔を思い浮かべただけで、俺の胸は高鳴った。
「ヒチョル、今どこ?」
「部屋だよ。…どうしたんだ?急にそんなこと聞くなんて…」
「そこで待ってて。すぐに行くから」
「えっ?」
驚いたままのヒチョルとの電話を一方的に切断して、俺は宿舎のドアを開けた。
薄暗いリビングを抜けてヒチョルが待っているはずの部屋へ向かった。
「ヒチョル…会いたかった。ずっと…ずっと…こうやって抱きしめたかった」
「ハンギョン…」
久しぶりに抱いたヒチョルは、一回りほど小さくなっていた。
「ヒチョル、痩せすぎだよ。過酷な減量はダメだってわかってるだろ?」
「お前が痩せすぎとか言うなよ。なんだよ、この体…」
たった1ヶ月会わないだけで、お互い随分色んなことがあったんだな。
ヒチョルの髪に顔を埋めながら、そう思っていた時だった。
「ハンギョン…雪が…」
そうヒチョルは囁くと俺の腕の中からするりと抜けて、部屋の中にある唯一の窓から外を眺めに行った。
「ホントだ。雪が降ってるな…」
仁川空港に降り立った時から実は雪がソウルの街を舞っていたのかもしれない。
しかし俺はヒチョルのことだけを考えて、窓の外を眺める余裕なんてあの時はなかったんだ。
「北京も今年は大雪が降っているんだ。俺の隣にお前が居ないと、温めてくれるものがない…だからなかなか風邪がよくならないのかもしれないな」
そう言って、俺は後ろからヒチョルを抱きしめて彼の体温をじんわりと感じていた。
「ハンギョン…別れよう」
えっ?今、何て言った??
ヒチョルの肩にもたれていた顔を離し、俺は聞き返した。
「何言ってるんだ?ヒチョル。急になんだよ…やっと会えて…それなのに…なんだよ、コレ…」
ヒチョルの言葉が耳にこだまする。
別れよう…
わかれよう…
ワカレヨウ…
「ハンギョン、これはずっと考えていたことなんだ。急に考えついたわけじゃない。もう…ずっと、このことばかり思っていた」
「なんだよ。何が原因だっていうんだ?俺が連絡を取らないことに腹を立ててるのか?それともまた写真を撮られたことか?…まさか…まさ…か…ほか…他に…好きなやつが…で…でき…」
ホカニ スキナヤツガ デキタ ノカ?
強がってもそのことだけは、言葉に詰まってしまう。
自分に非があることならどうにでもなる。
しかし…
ヒチョルが心を別の場所に揺り動かしたとすれば…
「ハンギョン…泣くなよ…俺だって。……辛いじゃないか…」
俺、泣いてるのか??
あんまりな出来事に、俺の全ての神経細胞が停止したと思っていたのに。
「ひ…ヒチョル…別れるなんて…別れるなんて、そんなひどいこと言うなよ」
まだそこにヒチョルが居る。
まだなんとか引きとめられる。
俺は必死になってヒチョルに訴えた。
「俺は…俺はお前が居ないと生きていけない。お前は俺の全てなんだ。わかってるだろ?…ヒチョル、愛している。これからも、お前だけを愛し続ける。だから…だからヒチョル、もう一度…」
「ハンギョン、ダメだ。ごめん…もうこのことは俺の中で答えが出てしまっている。もう…戻れない…もう…引き返せない…」
俺を見つめるヒチョルの瞳からも、止めどなく涙が次から次と溢れかえる。
「嫌だ…ヒチョル、俺はそんなの…そんなのわからない……わかりたくないっ」
俺の気持ちをわかってほしい。
俺はヒチョルの顔を両手で挟み込み強引にkissをした。
慣れ親しんだくちびるだった。
烈しくてまろやかで、甘い蜜が溢れ出すような…
「…んっ、ハンギョン…ヤメ…」
俺から離れようとするヒチョルを必死に追いかけた。
行くなよ…
離れないでくれ…
我がままだと罵られてもいい。
俺の傍から離れないで。
「ヒチョル…ヒチョル…」
お互い涙に濡れたまま今までで最高のkissをした。
狂おしいほど愛した者との別れは、こんなに唐突にやってくるものなのか。
大河に流された小舟のように…
不条理な流れから逃れることはできないのか。
明け方、俺に気付かれないようそっと立ち上がるヒチョルの後ろ姿を、俺は瞼を閉じたまま見送った。
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