「鳥の巣」の名のとおり、鉄骨が蔦のように複雑に絡まった奇抜なデザインのこの会場に俺は立っていた。
暑い…
ガンガンに照りつける日差しの下、今日のコンサートのリハーサルが行われている。
「sorry sorry 」「Why I like you」
俺は1曲のみの参加だから「sorry sorry」が終わったらココから脱出できる。
それにしても暑い…
体の内側から蒸気が沸きあがってくるようだ。
位置を確認するように1度通しでリハを行った頃には、俺の足元は早くもフラついていた。
ハンギョン、気分悪い…
いつもなら真っ先に頼る相手なのに、この国に居るときのあいつは手の届かない存在のように思えてしまう。
現に今だって、マネージャーとクリエーターを交えて入念な打ち合わせを行っている最中で、俺のことに気づくことなんて皆無だ。
あ… 背中に変な汗が流れてきた…
ちょっともう限界かな…と額に手を置いたときに
「兄さん、大丈夫?」
シウォンが俺の腕を取った。
「…気分悪っ…」
どうやら俺はそのまま意識を放り投げたようだ。
気が付いたときは、医務室のベッドの上だった。
ひんやりとしたおでこが気持ちいい。
徐々に意識が回復していく中、誰かが俺の手をしっかりと握りしめているのを感じた。
「ハンギョン」
俺は愛しい人の名を呼んだ。
「あっ、兄さん。気が付いた?気分はどう?」
「…シウォン…ああ、大丈夫」
「何か欲しいもの無い?水飲む?」
「…じゃあ、水持ってきて」
ゆっくりとその重い体を自ら起こしながら、俺は辺りを見回した。
赤く燃える西日が窓から差し込み、壁の白と綺麗なコントラストを描いているこの空間には俺とシウォンしか居ない。
そうだよな…
「ハンギョン兄さんはまだ打ち合わせが終わってなくて。ヒチョル兄さんが倒れた時もすごく心配してたよ。さっきも携帯で様子を聞いてきたし」
俺の気持ちがシウォンにはお見通しのようだ。
「うわっ、冷てっ」
「プハハハ」
冷蔵庫から取り出されたばかりの冷たいミネラルウォーターのボトルを、シウォンは俺の頬にくっつけて豪快に笑った。
「こらっ、やめろって」
シウォンの手からそのボトルを引っ手繰ろうとするけど、シウォンの動きがすばやくて中々取れない。
仕舞にはそんな些細なことが可笑しく思えて笑いだしてしまった。
「あー、兄さん笑ったね。じゃあ、コレあげるよ」
ハイって渡されたボトルの水は、何故だかとても優しい味がした。
どうにか舞台には立てたけどやっぱり気分はすぐれないでいた俺は、楽しみにしていたレセプションも欠席した。
一人で眠るには充分過ぎるほど広いこのベッドに、俺はずっと横たわっている。
目を閉じるとコンサート風景が走馬灯のように駆け巡る。
あれだけ有名なスターが出演した舞台に俺たちも同じように立ち、そして盛大な歓迎を受けた。
体の奥底まで響くほどの大きな声援を会場から受け、改めてSJ-Mのそしてハンギョンの中国での活動の大きさを感じた。
そして…
ハンギョンはこの国にはなくてはならないこと…
そう…
ハンギョンはこの国に帰ってくる。
俺は…
俺はどうするんだろ…
そう考えていると、部屋のチャイムが鳴った。
「兄さん、俺。シウォンだけど…」
扉の向こうにはでっかくて優しい笑顔があった。
両手に抱えた大きな袋の中から、次々に色んな種類の食べ物が湧き出てくる。
「兄さん、お腹空いてるだろ?いっぱい買ってきたよ」
俺を見たシウォンの表情がサッと曇った。
え?
と同時に、自分でも気付かずに流していた涙をその大きな手で優しく拭き取ってくれた。
「兄さん…」
俺は暖かい腕にいつの間にか包みこまれていた。
「兄さん、俺じゃダメかな…」
それは、いつになく自信なさげな声だった。
「俺はいつだって兄さんの傍にいるよ」
そう…
シウォンはいつでも俺の近くに居てくれた。
ドクン ドクン
シウォンの心臓がやわらかな音をたてている。
今俺に必要なのはこの温もりなのかもしれない。
俺は身体の力をゆっくりと抜いて、全身をシウォンに預けた。
(出所:百度源图片)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/49/1ab8737db40d354f7cf8d5ce825ea269.jpg)
![AX](http://w1.ax.xrea.com/l.f?id=100792721&url=X)
暑い…
ガンガンに照りつける日差しの下、今日のコンサートのリハーサルが行われている。
「sorry sorry 」「Why I like you」
俺は1曲のみの参加だから「sorry sorry」が終わったらココから脱出できる。
それにしても暑い…
体の内側から蒸気が沸きあがってくるようだ。
位置を確認するように1度通しでリハを行った頃には、俺の足元は早くもフラついていた。
ハンギョン、気分悪い…
いつもなら真っ先に頼る相手なのに、この国に居るときのあいつは手の届かない存在のように思えてしまう。
現に今だって、マネージャーとクリエーターを交えて入念な打ち合わせを行っている最中で、俺のことに気づくことなんて皆無だ。
あ… 背中に変な汗が流れてきた…
ちょっともう限界かな…と額に手を置いたときに
「兄さん、大丈夫?」
シウォンが俺の腕を取った。
「…気分悪っ…」
どうやら俺はそのまま意識を放り投げたようだ。
気が付いたときは、医務室のベッドの上だった。
ひんやりとしたおでこが気持ちいい。
徐々に意識が回復していく中、誰かが俺の手をしっかりと握りしめているのを感じた。
「ハンギョン」
俺は愛しい人の名を呼んだ。
「あっ、兄さん。気が付いた?気分はどう?」
「…シウォン…ああ、大丈夫」
「何か欲しいもの無い?水飲む?」
「…じゃあ、水持ってきて」
ゆっくりとその重い体を自ら起こしながら、俺は辺りを見回した。
赤く燃える西日が窓から差し込み、壁の白と綺麗なコントラストを描いているこの空間には俺とシウォンしか居ない。
そうだよな…
「ハンギョン兄さんはまだ打ち合わせが終わってなくて。ヒチョル兄さんが倒れた時もすごく心配してたよ。さっきも携帯で様子を聞いてきたし」
俺の気持ちがシウォンにはお見通しのようだ。
「うわっ、冷てっ」
「プハハハ」
冷蔵庫から取り出されたばかりの冷たいミネラルウォーターのボトルを、シウォンは俺の頬にくっつけて豪快に笑った。
「こらっ、やめろって」
シウォンの手からそのボトルを引っ手繰ろうとするけど、シウォンの動きがすばやくて中々取れない。
仕舞にはそんな些細なことが可笑しく思えて笑いだしてしまった。
「あー、兄さん笑ったね。じゃあ、コレあげるよ」
ハイって渡されたボトルの水は、何故だかとても優しい味がした。
どうにか舞台には立てたけどやっぱり気分はすぐれないでいた俺は、楽しみにしていたレセプションも欠席した。
一人で眠るには充分過ぎるほど広いこのベッドに、俺はずっと横たわっている。
目を閉じるとコンサート風景が走馬灯のように駆け巡る。
あれだけ有名なスターが出演した舞台に俺たちも同じように立ち、そして盛大な歓迎を受けた。
体の奥底まで響くほどの大きな声援を会場から受け、改めてSJ-Mのそしてハンギョンの中国での活動の大きさを感じた。
そして…
ハンギョンはこの国にはなくてはならないこと…
そう…
ハンギョンはこの国に帰ってくる。
俺は…
俺はどうするんだろ…
そう考えていると、部屋のチャイムが鳴った。
「兄さん、俺。シウォンだけど…」
扉の向こうにはでっかくて優しい笑顔があった。
両手に抱えた大きな袋の中から、次々に色んな種類の食べ物が湧き出てくる。
「兄さん、お腹空いてるだろ?いっぱい買ってきたよ」
俺を見たシウォンの表情がサッと曇った。
え?
と同時に、自分でも気付かずに流していた涙をその大きな手で優しく拭き取ってくれた。
「兄さん…」
俺は暖かい腕にいつの間にか包みこまれていた。
「兄さん、俺じゃダメかな…」
それは、いつになく自信なさげな声だった。
「俺はいつだって兄さんの傍にいるよ」
そう…
シウォンはいつでも俺の近くに居てくれた。
ドクン ドクン
シウォンの心臓がやわらかな音をたてている。
今俺に必要なのはこの温もりなのかもしれない。
俺は身体の力をゆっくりと抜いて、全身をシウォンに預けた。
(出所:百度源图片)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/49/1ab8737db40d354f7cf8d5ce825ea269.jpg)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます