Time Out

英国はヴィクトリア朝をメインに創作関係や自サイト、雑記などを写真やイラストと共にお送りしていくのらりくらりなブログ。

ヴィクトリア時代の使用人 vol.13 女性使用人:台所は治外法権

2007-04-29 17:52:08 | 使用人関係

前回からまた日が経ってからの更新です。今度はクイーンの映画が公開されたので観に行かなければいけないな~、なんて思っているしだいです。そういえば昨日の「ジキルとハイド」の映画を観ましたか?ジュリア・ロバーツがメイドですよ!別にジュリア・ロバーツに注目ではなく、あのメイド姿と仕事内容、そして周りの仕事仲間に注目なのですよ!メイドといえば黒の服にエプロンが定番なんですが、ある程度の家になると、実は午前用、午後用、汚れ仕事用というように様々な制服を持っています。
さてはて、実は自サイトでDVD・マナーハウスのキャンペーンに参加をしています。発売まで一ヶ月を切ったのでドキドキです。時代的には自分の好きなヴィクトリア時代よりも後の話なのですが、それを除いても自分のつぼを押さえまくった内容なので期待しているのです!!!そこで、DVD普及の為にもブログにバナーを貼り付けておこうと思います。ちなみにDVD予約の第一次締め切りが5月10日みたいですので、発売日当日に手に入れたい方はぜひ今のうちに!!!

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それはそれとして、本題の使用人特集です。今回は台所を見てみたいと思います。エマでも家政婦と料理人が仲が悪いという話が出ましたが一体それはなぜなのか?ということが少しは分かっていただけると思います。それでは、どうぞ~。


◆台所は治外法権

1. 料理人 Cook

家政婦が使用人の長であるなかで1人だけその権力から逃れた職があります。それは料理人です。台所は料理人の城であり独立した場所だったため家政婦や、時に女主人でさえ口を挟むことはできませんでした。なぜなら彼女たちが料理人に口を出すことで料理人の機嫌を少しでも損ねるようなことになれば、どうあがいても食事にありつけないからです。料理人は大抵どの世帯にもいました。もちろんその差は本職の料理人から素人までいました。一部、料理人は男性(特にフランス人)を雇う屋敷もありましたが、それは特別裕福な場合に限り、多くは一時的に男性料理人を雇い入れて女性料理人を仕込むというように教員としての扱いがほとんどでした。


2. 台所女中 Kitchen maid

料理人には台所女中と流し場女中(台所界での最下位職:台所見習いであり、とにかくお皿などを洗う。ここで修行を積み、次のステップとして台所女中に上がる)の部下がい、彼女たちは朝に台所の準備をし、火をおこし、材料の下準備をし、料理人が調理にすぐに移れるよう手配しました。また上級の台所女中になれば使用人たちの食事を用意することもありました。
料理人に仕えていた台所女中や仲働き女中
(家女中と台所女中を兼用したような存在)の仕事はどれも重労働でした。台所の床や作業台にレンジを磨き、料理人の食事を用意し、流し場女中がいなければ食器は彼女たちが洗わなければなりません。また彼女たちは場合によっては部屋で就寝できずにわらを敷いた台所の隅で夜を過ごさなければならないこともありました。さらに一部の料理人から虐待を受けていたこともあり過酷な状況を乗り切らなければならなりませんでした。しかしこのような状況を潜り抜け、多くの台所女中は料理人になるよう技術を学んでいたのは確かなようです。

3. 目の届かない台所だから……

台所事情は家政婦や女主人の手が出せない場所だっただけに色々と問題が存在しました。台所の環境は決して良くはなく、換気も行き届いてなかったため、蒸気やレンジの熱、食べ物のにおいがこもり、台所に従事するものは重労働を強いられました。そのために気晴らしにと、しばしばアルコールに手を出すものが多かったようです。これはまだ目をつぶることもできましたが、さらに問題としてでたのが、材料の中で調理中にでたうさぎの皮やスープストック、またお茶の出がらしなどの役得 perquisite を料理人や台所女中の手で勝手に売られていることでした。多くの雇用者はこのことが原因で料理人とよく揉め、また両者の関係を悪くさせたのはいうまでもありません。このことを懸念した一部の雇用者は匿名で雑誌に投書をして、多くの雇用者に対して注意を促したようです。

ホリデイ

2007-04-18 17:12:51 | 映画/音楽関係
久しぶりの普通の記事です。
先日ホリデイという映画を観てきました。もともと内容に興味はありつつも(舞台に英国があるんだから気になりますよ)、出演者のなかに苦手な方がいたのであまり映画館で見る気はなかったものだったんですが、前売り特典に魅かれてチケットを購入していたというのが発端です。

「恋に破れた2人の女性同士が、家や車を交換する“ホーム・エクスチェンジ”を試み、人生を開花させていくラブストーリー。」

感想としては普通に楽しめました。出演者もキャメロン・ディアス、ケイト・ウィンスレット、ジュード・ロウ、ジャック・ブラックと個性的かつ演技も定評のある方々なので見ていても飽きなかったです。

ロンドンのコラムニストのケイト・ウィンスレットとロスの映画予告製作者のキャメロン・ディアスが傷心旅行をするかのように家を期間限定で交換しちゃったはいいけど、そこで出会った男性と恋に落ちちゃって、けど帰国までもう少しだし、さらには元彼も出てきちゃうし、恋した男性は家を交換した相手の……でそれがばれるし、交換した家のお隣さんが実は有名な映画の脚本家でひょんなことから仲良くなるとか―。(どれが誰のことなのかはあえてぼかしてます)

演出で面白かったのが、アリー・マクビールのようにキャメロン・ディアスが自分の恋愛状況の変化を仕事で扱っている「映画予告」のようにナレーションとともに勝手に妄想するというところ。唐突な「予告」が何度も挿入されますが自分は面白かったです。

ただ、不満というかここからはちょっとなぁ、と思ったところ。
英国と米国をいったりきたりの映像表現だったんですが、キャメロンの話が唐突に終わってはケイトの話に移って、今度はキャメロンへの繰り返しで少しせわしない感じ。
どうも内容がキャメロンとジュード寄りなのかケイト・ウィンスレットの存在感がうす~~~~くなってきてる気がしたり。ケイト・ウィンスレットの話は素敵だったのに残念。けどケイトの話の焦点ってジャック・ブラックじゃないんじゃ……。(なぜそう思ったのかは映画をご覧になられた方なら分かると思います)

と、こんな感じです。とりあえず安心して観られて、最後は暖かい気持ちになれる映画だったのでお薦めは絶対できます~。

ヴィクトリア時代の使用人 vol.12 女性使用人:奥様のおそばに

2007-04-11 14:36:52 | 使用人関係
先日エマのアニメ版の第二期に先駆けて一期の総集編を流したのですが、これってエマ8巻の特装版のDVD特典のアニメなんじゃ……。特装版のカバーより通常版のカバーのほうがよかった気がする自分としてはお得感から少し残念感が出てきたのは悲しい気がします。二冊買えばいいじゃん!という方もいると思いますが、残念ながらそこまでは自分も買えませんです。いつか森薫画集がでることをきたいしています。
んでは~、本題の女性の使用人第二弾です。今回からそれぞれの職種を見ていきたいと思います。順番は上位使用人から複数回に分けてのご紹介になると思います。かなりの駆け足な内容なのは例のDVDの発売までにせめて使用人の職種を終わらせてDVDを見る人が少しでも楽しめたらいいな~、なんて勝手な思いからのものですがわかってくださるとありがたいです~。では今回の内容をどうぞ~。
追伸(今までの記事内容などで質問などありましたらお気軽にコメントなどを残していただけるとありがたいです♪)


◆奥様のおそばに

1. 家政婦 Housekeeper

女性使用人の最上位であったのは家政婦です。女主人の代理として女性使用人の人事面、家計面の指揮をとる役目を負っていました。下級の使用人にとっては女主人と顔を合わせる機会がないことも多く、家政婦が女性使用人の実質的な主人にあたりました。家政婦の存在に関してはビートン夫人は『家政書』の中で以下のように述べています。


(家政婦は)家の第二の司令であり……自分自身を女主人の代理人として家政を取り仕切り……たえず不正や悪事が家庭に起こらないよう監視し、また使用人が快適であることを確認し、それと同時に彼らの仕事が適当に行われているかを管理する」(Isabella Beeton Mrs Beeton’s Book of Household Management  p.33 .)

このように家政婦は使用人に関しての最大の責任と公正公平さが必要とされていました。また家政婦の特徴としては、よく大きな鍵束を想像されます。家政婦は食料貯蔵庫、銀食器の入った棚、部屋などを管理する鍵の束を腰のベルトに付けていたからです。厳格な彼女が鍵をじゃらじゃらと音立てながら歩く姿は下級の使用人にとっては脅威の象徴とされていたといわれています。



主に家政婦の仕事としては、女性使用人の人事と指揮(ただし保母と小間使いを除く)、一家の家計簿の管理、リネン、陶磁器類の管理、食料品貯蔵室の管理、生活必需品の注文などが挙げられます。そして家政婦には食料貯蔵室女中という部下もいたため、彼女らにコーディアル(ハーブと砂糖を漬け込んでできるシロップをアルコールと混ぜた甘味酒)、ジャムなどの調合仕事を任せながら訪問客の滞在するための部屋を割り振ったりとしていましたが、全体的な大きな仕事は一家の家計簿の管理でした。


2. 小間使い Lady's Maid

家政婦の次に力を持っていたのは小間使いです。時に横柄な態度をとることもあり下級使用人たちは嫌っていましたが、直接女主人に仕えていたことが他の使用人たちを恐れさせたのです。小間使いに反抗したら、いつ女主人に告げ口されるかわからなかいからです。小間使いたちは給料も高く、また人数も少数だったこともあり、裕福な家庭にしか存在しなかったようです。

小間使いの職を得るためには少なくとも高度な裁縫の技術を要しました。なぜなら仕事は女主人の身の回りの全般であり、服の仕立て、帽子作り、化粧品の取り扱いまでにいたったからです。そのため彼女らは、読み書きができ、針仕事もうまく、宝石類や衣類を扱うことから道徳的な面が要求されるという高いハードルを越えなければなりませんでした。しかし高給であり、また他の使用人と違い制服も華やかな部分もあり若い女性の憧れの上級職であったようです。


また小間使いの待遇は良かったのですが、その職に問題がなかったわけではありませんでした。小間使いの年齢は若いことが女主人たちの間で望まれていたため、年齢が増える毎に給料も減額され、失業した後に小間使いとして再就職する可能性はあまり高くはありませんでした。そのため結婚退職を夢見る小間使いが多かったようでしたが、女主人に長い間仕えていた分、物の考え方がお高くとまっており、さらに料理もできないため、その職が結婚する障害となったのは確かでした。

ヴィクトリア時代の使用人 vol.11 女性使用人:ヴィクトリア時代の女性使用人

2007-04-08 11:33:24 | 使用人関係
MANOR HOUSE 英國発 貴族とメイドの90日」を予約しちゃいました!というか予約始まってます!しました?そしてサイトで動画が公開されてました!それを見るだけで、脳内のヴィクトリア朝使用人領域がぱぁぁ~って……ぱぁぁぁ~ってなります!実はさりげなくいろいろとサイトのほうのコンテンツが増えているみたいなので要チェックです!さらにメルマガも素敵なんですよ!DVDの裏話からメルマガ会員限定情報!そして使用人の豆知識が配信されてお得!というか執事について配信されてて、うちのブログ記事の内容がいらなくなりそうな気がしなくもないのですが気にせず登録しちゃってください!
脳内がそんな感じでぱぁぁな状態で今回から女性使用人についてを取り挙げたいと思います!メイド=メイド喫茶や萌え漫画の人という意識のそこの方!実は現実のメイドは「あはは~」「うふふ~」「ご主人様ぁ~ん」な甘甘な状態なわけではなかったのをご覧ください。


◆ヴィクトリア時代の女性使用人

1. 当時の女性使用人


ヴィクトリア時代での使用人の割合は女性が多くを占めていました。理由には雇用主にとっては、女性を雇うほうが賃金面で安いということがあり、使用人となりうる一般階級以下の女性にとっては、女性として許されていた仕事が使用人程度しかなかったことでした。女性の選べる他の道としてはインやパブでの女将やウェイトレス、雑貨店や洋裁店などの店員、花売りなどの街頭販売、そして最後は性の世界に行くしかありませんでした。中流階級などの女性は
(知識があれば)家庭教師 governessとして働くという道もありましたが知性を求める以上に上流階級に通用する素養を持ち合わせていることも条件になっていたのでなかなか一般的ではありませんでした。当時の家庭教師は自らを使用人とは違うという意識がとてもあり、また雇用者ほど特別ではないが、かといって使用人というほど「仕える人」というほど従属的存在ではない為にしばしば雇用者とも使用人たちとも不和の原因になっていました。そのため家庭教師は使用人とは違うと解釈できるため、この職はこのテーマ内では取り挙げないことを最初に明記しておきます。また今後出てくる男性使用人内でも、男性家庭教師 tutorの扱いは同様です。


2. 女性使用人の一日

基本的に使用人の仕事は早朝から夜中まで続くことが多かったです。日が昇る前、遅くとも
6時には雑役女中などの下級使用人は起床し、玄関周りの掃除を行い、台所では台所女中が火をおこし、レンジや作業台を磨き上げます。そして朝に出されるお茶の用意と朝食の準備が始めます。家女中は家族が目を覚ます前に使用されるだろう部屋の換気と朝食室の暖炉の掃除を行ってしまいます。また季節や場合によっては暖炉用の石炭を運ぶ、お湯を洗面所へ運ぶということもあります。
朝が慌ただしく過ぎ、家族が目覚めて朝食をとる時には、執事や給仕、従僕、客間女中はその給仕を行います。その裏では家女中などが家族の寝室を整えてしまいます。朝食を終えた頃に少し時間があるかのように見えますが、すぐに昼の準備を始めます。大邸宅になれば昼食といってもコースで出されるためその準備は時間を要したからですし、また自宅で昼食を摂る場合があれば、ピクニックに出かけて摂る家庭もあったためゆっくりもしていられなかったのです。昼食などの食事の給仕は基本的には執事や給仕、従僕、客間女中の仕事だったためそれらの時間は付きっ切りで仕事をこなしていましたが、その反面に他の使用人たちはある程度暇ができその間に自分たちの食事をとっていたようです。しかし使用人たちの食事も自由ではなく、家政婦の部屋があればそこで家政婦を上に食事の作法教室を交えた食事となり、楽しい休憩時間ではありませんでした。
家族の食事が済めば、次はアフタヌーンティーの時間が待っています。その時にはお客様を迎えることになるのでその準備、またお客様が訪れた時の取り次ぎに接客、また子どもたちを乳母たちは散歩に連れて行くなどの仕事が待っていました。その間に台所ではすでに夕食の準備が始まっていて、もしも晩餐会が開かれることになれば台所は戦争状態はまぬがれませんでした。
夜を迎え、夕食では男性使用人が食堂を取り仕切るために、表立った給仕を女性使用人はしなかったものの、料理を運ぶという裏方を一手に引き受けました。また女主人が他の屋敷に呼ばれていた場合には、時に侍女は同行しいつ終わるかもわからないパーティをひたすら待ち、小間使いも同時に刺繍などをしながら女主人の帰りを待つのでした。
屋敷の仕事も一通り終え、「何事もなければ」夜の
11時には就寝できましたが結局自分のことはなにもできないまま次の日を迎えなければいけなかったのは言うまでもありませんでした。

以上のように女性の使用人たちの一日は仕事の山でした。しかし一日の流れを追ってわかるように女性使用人と一言で済ませてしまえるほど彼女たちの種類は少なくはありません。

ヴィクトリア時代の使用人 vol.10 雇用と賃金:命と同等の人物証明書

2007-04-03 09:22:08 | 使用人関係
ちょっと間が空いての更新になりました。雇用と賃金最終回です。長かった。けれどもこのヴィクトリア時代の使用人についてはまだまだ序盤。あはは~。あまり前口上は入らないと思うので本文を早速どうぞ。


◆命と同等の人物証明書

使用人は少なからず職場を辞める場合があります。理由はどうあれ引退でない限りは次の仕事が必要です。その時に必要となるのが人物証明書 a character or a referenceです。人物証明書の善し悪しが次の職場で雇ってもらえるかどうかを左右する重要なものです。そしてそのことを知っている雇い主にとってそれをどのように書くかが大きな悩みの種になりました。ビートン夫人の『家政書』内で女主人に対してこの人物証明書を書くことの心構えを以下のように記しています。

「人物証明書を与えること、それは女主人が厳格な正義に基づかなければならないことはいう必要もないでしょう。自分自身が置いておきたくない使用人を他のご婦人に推薦することは公平さに欠けます。またきちんと書くことにより使用人にとっても少しの利点となります。ただし罰を与えぬように甘やかすようなことをすれば使用人の欠点は増長されるでしょうが。人物証明書を書くことに最新の注意を払うことは必要ですが、一方で辞める使用人へ向けられたあなたの怒りの感情に影響されて使用人の人物証明書をけなして書くこともなりません」(Isabella Beeton Mrs Beeton’s Book of Household Management p. 15.)

このように女主人の公平さが大切であると注意を呼びかけていましたが、実際は全ての雇用者がこれを守ったわけではありませんでした。ただし、
1792年の時点で人物証明書の偽造を禁止する法案ができていたため、もし偽証した人物証明書を発行した場合は罰金、またそのような人物証明書を提示した使用人は罰金または懲役というように罰則が規定はされていました。しかしながら心優しい雇用者は前述したように人物証明書なしでの再就職が非常に困難なことを知っているがために、どうしても充分な人物証明書を書いてしまったというケースも多く存在しました。
人物証明書の発行は雇用者以上に使用人にとっては生死に関わる大きな悩みでした。人物証明書の発行がなければ使用人の生計は一気に破綻して路頭に迷ってしまうからです。そのようなことは周知の事実であるのにも関わらず、雇用者は人物証明書の発行が法律で義務づけられていたわけではなかったため発行を「敢えて」しない者がいたのは事実でした。また悪意による人物証明書の偽証も横行しました。もちろんこれに関して使用人側は訴えることが可能でしたが、実際は雇用者側の悪意を立証しない限り起訴はできず、また起訴が可能であったとしても訴訟費用を払える蓄えのある使用人などほとんどおらずに結局泣き寝入りするしかできませんでした。
全体的に問題点が多く思える使用人の事情でしたが、このような不幸な事件があるなかで喜ばしい待遇で使用人生活を送る人々がいました。それについては後に記します。