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英語の美貌録。

さとうひろしの受験英語ブログです。文字通りの備忘録で、よくいえば独自研究、悪し様に言えば妄想の類いです。

受動文の Care was taken of her by the m. は、何故不適格なのか。

2017-02-28 17:55:46 | 受動態
受動態について考えてみる。

1) They took care of her.
2) They took good care of her.

この2つの文では、以下のように、それぞれ二通りの受動文への書き換えが考えられる。

3) She was taken care of by them.
4) She was taken good care of by them.
5) Care was taken of her by them.
6) Good care was taken of her by them.

3)と4)は問題ないが、ふつうは、5)は不適切であって6)は適切である。何故だろうか。

一般に、英文においては主語は目立ちの度合いが高いものが好まれる。あるいは、情報の伝え手の視点からして、目立って見えるものが主語となる。

7) Tom married Mary.
8) Mary married Tom.
9) Tom and Mary married.
10) Mary and Tom married.

7)は、おそらくはトムの友人か家族あたりの発した文であって、トムは目立ちの度合いが高く、トムに視点がある。8)は、その反対にメアリーに視点があって目だっている。

9)は、トムとメアリー双方の友人であり、双方に視点があるのだが、どちらかというと、トムに重点がある。10)はメアリーである。

11) They speak English in the area.
12) English is spoken in the area.

11)の文では、主語Theyよりも目的語Englishのほうが、重みがあって目立ちの度合いが高いので、どちらかと言えば、12)の受動文のほうが自然である。

13) The chair was often sat by him.
14) The chair was often sat by Shakespeare.

一般には、無名の「彼」の座ったイスよりも、歴史的有名人である「シェイクスピア」の座ったイスのほうが、目立ちの度合いは高い。だから、13)は不自然な文であるが、14)は不自然な文ではない。

以上のことを考えれば、

5) Care was taken of her by them.
6) Good care was taken of her by them.

この2つの文において、5)よりも6)のほうが、形容詞goodがついている分だけ、情報として重要であり、重要であるので目立ちの度合いが高く、そのために5)よりも6)のほうが、主語として相応しい。




つらつら書いたが、正しいかどうか、わからない。

中間構文

2014-08-17 00:31:13 | 受動態
認知言語学とその周辺(17~18頁)

以下、例によって私的要約w
ちなみに、中間構文は管理人の持っている参考書では受動態に分類されていたんで、ここでもそうしときます。




・中間構文とは、目的語を主語に移したもので、主語で示されるモノの属性を表す構文である(ただし、目的語以外の名詞が中間構文の主語となる場合もある)。以下の例文はSVMの形になっており、述部は主語の属性を示す。中間構文の典型例がe.である。This book sells easily.は、「主語+動詞+副詞」という形になっており、sells easilyの述部は主語の属性(つまり「容易に売れる」という主語の性質)を示す。

a. The door opened.
b. This door opens easily.
c. These programs are enrolling fast.
d. This book is selling like hotcakes.
e. This book sells easily.
f. This book reads easily.
g. This lake fishes well.

a.は通常の自動詞構文である。b.~g.がいわゆる中間構文である。a.~g.は段階的に変化しており、典型的な中間構文はe. である。各例文の特性を挙げる。

a. 状態変化
b. 状態変化、動作主の存在
c. 状態変化、行為の様態、認知属性(力点は状態変化、行為の様態にあり)
d. 状態変化、行為の様態、認知属性(力点は状態変化、行為の様態にあり)
e. 状態変化、認知属性(力点は認知属性にあり)
※認知属性は人間と対象の相互作用を介して生じる
f. これはe.より状態変化の意味合いは薄まっている
g. このgでは状態変化の意味合いはなくなっている



・中間構文とは、アフォーダンス(生態心理学における知覚のメカニズム)が言語に反映されたものである。生態心理学によれば、知覚の成立には人間の能動的探索活動が必要であり、知覚と行為を切り離すことはできない。知覚が成立するためには、感覚刺激の受容ではなくて、知覚者側の能動的行為が必要である。知覚による情報獲得の背後には、探索過程が観察される。



・知覚システムには、聴くシステム、触るシステム、嗅ぐシステム、見るシステムなどがある。多くの場合、複数の知覚システムから獲得される情報は冗長である。例えば、火の知覚は見ることによっても触れることによっても可能である。



・情報の冗長性が言語に反映されると、共感覚表現となる(涼しい音色、明るい声など)。



・知覚と行為とは、アフォーダンスによって結びつけられている。あるモノのアフォーダンスとは、そのモノが知覚者に提供する行為の可能性のことをいう。例えば、椅子は「座る」という行為を人間にアフォードする。環境の中のすべてのモノはアフォーダンスを持つ。その環境の中で活動している動物は、探索活動を通じて環境内部のアフォーダンスを知覚している。



・このアフォーダンスは中間構文に反映されている。中間構文を動詞句・副詞句・文全体によって分析すると、以下の通りである。

動詞句は、主語の指示対象が可能にする話し手の行為であり、探索活動を表しており、主語の指示対象が持つアフォーダンスを表している。
副詞句は、名詞句の指示対象についての行為を通じて獲得された情報を表している。
文全体は、探索活動の結果として生じる知覚・行為者にとって対象がどう見られているか、を表現している。

e. This book sells easily.

この文では、動詞句sells easilyは主語this bookが可能にする話し手の行為であり、探索活動であり、this bookの持つアフォーダンスを表している。
また、副詞easilyは、主語this bookについての行為を通じて獲得された情報を表す。
また、文全体は、探索活動の結果として得られる知覚・行為者(話し手)にとって対象がどのように見られているかを表現している。