私はメジャーリーグでプレーする田口という選手はあまり好きではない。
彼の所属するチームはMLBの中でも屈指の強豪カーディナルスで、そもそも彼はレギュラーではない。今年はたまたまレギュラーが相次いで故障したためのおこぼれをもらい、かなりの出場数を稼いだ。
成績は彼のメジャー通算成績からするとベストシーズンだが、メジャーでは平凡だ。来年からレギュラーメンバーが復帰すれば、守備要員としての日々が待っていることがはっきりしている。私から見れば、彼がこのチームに所属することで、彼のパフォーマンスが最大阮に発揮できるとは到底思えない。
スポーツ選手の寿命は短い。だから、自分の能力を一番発揮できる環境を選ぶのが使命だ。彼の実力はメジャーの基準から言えば一般的。よく言っても中の中であって、それ以上ではない。
彼は去年、一度解雇同然の扱いをされて、破格の安さで再契約を結ばれた。もちろん今年は彼としては一番のシーズンを送ることができた。しかし、このような扱いをされても彼は来年もこのチームでやりたいと言っている。ひとつのチームで野球人生を過ごすことに慣れている日本人としての甘えなのか、プライドのなさなのか。それとも彼はベンチウォーマー同然の選手としての方がモチベーションが上がるのか、それは定かではない。
彼はもっと出場機会の望めるチームで全試合出場を目指すべきだ。残念だが、彼の実力では来年のカーディナルスでは一昨年同様ベンチを暖めることが多くなる。
前置きが長くなったが、これは仕事でも多少関連することかもしれない。
私は就職活動の一番の企業選びの指針として、「海外で仕事ができること、そのチャンスが一番多いところ」を挙げていた。
内定をもらったうち一つの企業は海外営業として、3年以内に海外に駐在することが約束されていた。一方の企業は、前者よりも大きな企業で、配属は研修を通してでないとわからない。海外で仕事ができるかどうかもまったくわからない。
私は最終的に後者をえらんだ。理由はさまざまあるが、シンプルに言えば後者の方がやりがいをもって働けると思ったからだ。後者の企業の内定者は海外志向をしている人が多く、その中で切磋琢磨しながら、海外で仕事ができるチャンスをつかむことができる。それが自分の成長にとって重要ではないかと考えた。
考えてみると、カーディナルスの田口と少し似てはいないか?人はやはりチャレンジのし甲斐があると思うほうにより魅力を覚えるのだろうか。
ただ、田口のように会社から解雇同然の扱いを受けたり、会社が社会から信用を失うような行為を続けて行ったら、そこにとどまる理由は一切ない。私は会社のために自分を犠牲にしようという考えはまったくない。私は会社愛というのは所詮聞こえのいい建前であって、会社は個人の集まりだと思う。
この点はイチローの言葉に共感できる点がある。彼はここ数年不振のチームをどう立て直したらいいかと尋ねられたとき、こう言った。「チーム一人一人がチームのためにプレーするのは当たり前。その前提に一人一人が自覚をもって最高のパフォーマンスをすることがチームにとって一番のプラスになる」。
「チームワーク」という安易な発想も確かに大事だが、個性の違う人たちがそれぞれの最高の力を発揮してこそ組織が機能する。だから個人個人がより厳しくなければいけない。僕もこの考え方はとても共感する。
ちなみに、松井のコメントはイチローとは反対で巨人時代から超優等生だ。「チームのために」が彼のキーワードだ。これは彼は頭がいいのでこういった発言をしているだけで、実際に考えていることだとは思わないでほしい。プロならチームより自分の成績の方が100倍気になるに決まっている。個人の成績は給料に跳ね返るからだ(私はお金が一番大事であとは二の次ということを言っているのではなく、自分が納得できる基準は何か、ということを言いたい。それはお金であるかもしれないし、自分のアイデアがどれだけ採用されたかなどいろいろあるだろう)。
松井やイチローの発言に限らず、政治、国際問題、恋愛などすべて含めて、言葉面だけを追いかけては、本当の意味、考えを見失う。また関係ないが、この点をうまく利用している代表例が、小泉首相である。
話が飛んだ。
人はチームワークとか団結とか、なるべく平穏で安直な方向に逃げようとするが、それが本当にいいのか。いつでも会社を離れてもいいように、来たるべく自分にとって最高の舞台を掴むことができるように、やはり自分を磨き続けることを忘れてはいけない。だから自分に厳しく…、しかし当たり前だが、日常に忙殺されるとこれはとても難しいんですね…(今は言いたい放題)。
私としては田口のことはまったく他人事で、やはりほかのチームに移って活躍の場を求めたほうがいいと思うのが本音だ。
(※写真…北京。北京オリンピックまであと…。2005年11月撮影)