ウラ伊予弁【愛媛新聞 伊予弁コラムで書ききれなかったコトを綴る】

大三島リモーネ Iターン就農から酒造り(リキュール)6次産業の取り組み色々想う事のコトダマを綴る主観ですのでご了承を

きみは鼻エンピツを知っているか

2017-04-09 15:50:15 | 日記
いい加減、書く方もそして読む方もウンザリだが昨年2016年6月の土砂災害はまだ終結していない。

春になり流れ込んだ土砂の上に雑草が生えてくると土中に根が張り掻き出すのも難儀になる。どうにか時間がさけそうな今、冬の間に土砂をどけてしまおうと考えショベルカーを今治の重機業者からレンタルする。
二トンのショベルカーなら大三島の農協で貸し出しをしているのだが土砂に埋まった園地は奥まった場所にありさらに小型でなければ園地に入れない。コマツのショベルカー研修とは違う機械なので使い方の説明をレンタル業者に求めると係はまるで
「鼻くそのほじり方を教えてください」とせがまれたように困った顔をして
「説明のしようがない」
と苦笑いをした。
それほど簡単なものなら自分で動かしてみればわかるのだろうな。そう解釈しそれなら
帰宅してから翌朝まで軽トラの荷台からいったんおろしていた方が良いのか、聞いてみようとしたがそれも愚問と察して大三島へ帰島。

結論から言うとあんまり使えなかった。
流れ込んだ土砂は海岸の砂のようにさらさらでキャタピラーがめり込み抜け出す時間に多くを費やした。それでも樹木の周りはなんとか土を掻き出した。
スコップと一輪車の人力の方がなんだかはかどった気もする。
排土板で土をガーっと集めてぇ、ビシっと寄せてぇなんて浅はかに考えていたがそんなに簡単なものではなかった。掻き出した砂も予想以上に重く運ぶのに労力を要した。
結局は自分の知識認識に加えて技術不足だった。

そうだよな。

鼻のほじり方だって流儀が人それぞれにある。

私の場合はまず最初に精神を宇宙の波動にあわせ心を無にすることから始まる。
心穏やかになったなら鼻腔より息を徐々に吸い込み鼻の孔を広げるストレッチを行う。
充分に鼻周辺の筋肉が練れてきたら次にゴールを決めたサッカー選手のように利き手の人差しを突き立て天を指す。
目視で爪が鋭利にとがっていないこと、爪先が汚れていないことを確認すると天からの波動を受け止めた指をゆっくりとかぎ状に曲げ厳かに鼻の穴に指を誘い清掃活動につとめる。
下あごを弛緩させ脳内はしばし俗界を解脱、彷徨う旅にでる。
ひざに滴れ(したた)たたよだれの冷たさに我にかえる頃には鼻の通りはすっかり復調。

妻の場合はティッシュで作る「こより」派だ。
その「こより」は楊枝か!と驚くほど強靭かつ繊細で伝統工芸品の域に達していると私はいつも感心している。
妻はその「こより」と言う名の「つるぎ」を鼻の穴に差し込むと次になんの躊躇もなく高速回転で手首を回す。
全盛期の辰吉丈一郎がリングで相手をロープに追い詰めた時に自分の右手をグルグルと回すあのパフォーマンスを彷彿させ私の胸に万感の思いが去来する。
 辰吉丈一郎が王座奪還を期してタイのウィラポンと再戦し返り討ちにあった頃、
私は妻と出逢った。
当時の妻のくしゃみは「くっちゅん!」といった可愛らしいものだった。それにもかかわらず
「ごめんなさい」と哀切の目で私を見たものだった。
今はどうだろう。
まるでウルトラシリーズのヒーローが変身するときのような雄たけびを挙げ
「このバカちん!」
とヒーローに似つかない言葉でくしゃみの終わりを締めくくる。
私は落ち度がないにもかかわらず、M78星雲に帰らずそこに鎮座する妻と目が合うとつい
「ごめんなさい」
そう口に出そうになるので素知らぬ顔をしている。
男の、主としての威厳を守るための素知らぬ顔をという仮面を最後の砦に私は妻が
器の大きな態度と誇大解釈してくれるよう、無関心無表情というガードに磨きをかけている今日この頃。次に重機レンタルの業者にあったなら、困惑されてもこう聞いてみよう。
「鼻のほじり方を教えてください」と。



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