ウラ伊予弁【愛媛新聞 伊予弁コラムで書ききれなかったコトを綴る】

大三島リモーネ Iターン就農から酒造り(リキュール)6次産業の取り組み色々想う事のコトダマを綴る主観ですのでご了承を

農ほど黒い仕事はない。

2013-11-10 15:55:32 | 日記
最近、ブラック企業がメディアで取り上げられる。
「労働時間が長い」「達成不可能なノルマを課せられる」etc…。
どれも会社の体質や上司の圧力が起因とされている。
そんな劣悪な労働環境から豊かな自然に囲まれた農業へ夢をはせ移住を考えている人も多かろう。
 しかしハッキリ言っておくが農業ほど理不尽でブラックな仕事はない。
自然という上司のパワハラに毎年叩きのめされる俺が断言するのだから間違いない。
猛暑に干ばつ。豪雨に突風、寒波に獣害。
 3年間、大切に育てた苗木がたった一夜の寒波で枯れてしまうことも経験した。
恨み言の一つもこぼしたいが全ては「自己責任」と消化するしかない。
 
果たして会社側だけの責任なのか?
ブラック企業の窮状を訴える人間の言葉は同情するものもあるが
自己弁護に走った融通の利かない印象を受ける事も多く、俺としては正直、寄り添えない。

例えば彼らをリモーネで雇用した場合…
かん水するため積載制限350キロの軽トラに水で満タンにした
600リットルタンクを積んだら重量をオーバーしてしまう。
 収穫したみかんを25ケース、荷台に積むと350キロを超えてしまう。
彼らはそんな農家の日常を
「これは違反行為です。告発します」
と糾弾するのだろうか。
されたらリモーネは指導されるかしら。
たしかに「事故」があってからでは遅いから言い分は正しいのだけど。
そんな人は農業に適性がないし第一就農しないだろう、と人は笑う。
ならば、就農した時点で清濁合わせ呑む覚悟が、できているとこちらは判断させてもらおう。
 
「男は血の小便がでて一人前」
東京にいた頃、それが会社の訓戒だった。辛かったが
「俺も血の小便を出すんだ!」
とガムシャラに働いた。十六年ガムシャラに働いたつもりだったが血尿は出なかった。

対策はするが自然災害は農家として受け入れ、乗り越えるべき課題なのだろう。
いやでも自然というパワハラ上司と付き合っていく覚悟が農家には必要なのだ。
それが達観なのか諦観なのか自分でもわからない。

都会でも通勤地獄にクレーマー。セクハラ、パワハラ、ノルマに競争。
勤め人なら身近な出来事。
でもそれらに耐える、いやあえて毒と知りつつ飲み込む時期が人生には必要かと思う。
少なくとも自分にとっては薬にはなった。

リモーネを開業して五年。毎年八月は一日も休まず店を開けていた。
だが今年に限っては酒造免許申請や諸々の事情で数日を公休日に充てた。
それが悔しい。こぼす俺に妻は
「特区認定」の次は「過労死」認定を狙っているのか、
「リモーネはブラックだ」と突っ込まれ、そして笑った。

 ブラック企業に入社しても出世する奴はいるのだから
諧謔(かいぎゃく)の精神で今だけと割り切ってみるのも一興か。
いつの日か思い描くバラ色の世界に身を置きたいのなら
黒い世界も知らないよりは知っておいた方が良い、とも感じるのは
俺の腹がすでに黒いからなんだろうな。