リートリンの覚書

古事記 上つ巻 現代語訳 三十五 八千矛神の歌


古事記 上つ巻 現代語訳 三十五


古事記 上つ巻

八千矛神の歌


書き下し文


 此の八千矛神、高志国の沼河比売を婚かむとして幸行でます時に、其の沼河比売の家に到り歌ひ曰りたまはく、
八千矛の 神の命は
八島国 妻娶きかねて
遠遠し 高志の国に
賢し女を ありと聞かして
麗し女を ありと聞こして
さ呼ばひに あり立たし
呼ばひに あり通はせ
大刀が緒も いまだ解かずて
襲をも いまだ解かねば
嬢子の 寝すや板戸を
押そぶらひ 我が立たせれば
引こづらひ 我が立たせれば
青山に 鵺は鳴きぬ
さ野つ鳥 雉子は響む
庭つ鳥 鶏は鳴く
うれたくも 鳴くなる鳥か
この鳥も うち止めこせね
いしたふや 天馳使
事の 語りごとも こをば


現代語訳


 この八千矛神(やちほこのかみ)は、高志国(こしのくに)の沼河比売(ぬなかわひめ)と結婚しようと行った時に、その沼河比売の家に到り、歌を詠んで曰く、

八千矛(やちほこ)の 神の命(みこと)は
八島国(やしまくに) 妻まきかねて
遠遠し 高志の国に
賢し女を ありと聞かして
麗し女を ありと聞こして
さ呼ばひに あり立たし
呼ばひに あり通はせ
大刀が緒も いまだ解かずて
襲をも いまだ解かねば
嬢子(をとめ)の 寝すや板戸を
押そぶらひ 我が立たせれば
引こづらひ 我が立たせれば
青山に 鵺(ぬえ)は鳴きぬ
さ野つ鳥(さのつどり) 雉子(きぎし)は響む
庭つ鳥(にわつとり) 鶏は鳴く
うれたくも 鳴くなる鳥か
この鳥も うち止めこせね
いしたふや 天馳使 (あまはせつかひ)
事の 語りごとも こをば



・八千矛神(やちほこのかみ)
大国主命の別名の一つ
・高志国(こしのくに)
現在の福井県敦賀市から山形県庄内地方のの一部に相当する地域の、大化の改新以前の日本古代における呼称
・沼河比売(ぬなかわひめ)
日本神話に登場する神。
・八島国(やしまくに)
日本の異称
・鵺(ぬえ)
日本で伝承される妖怪
・さ野つ鳥(さのつどり)
野の鳥。特にキジをいう
・庭つ鳥(にわつとり)
ニワトリの古名
・いしたふや
天馳使 (あまはせつかひ)にかかる枕詞
・天馳使 (あまはせつかひ)
語義未詳・天皇の走り使いをする者の意とする説、天空を駆けて走り使いをする者の意とする説、宮廷神事や雑役の走り使いをする者の意とする説などがある


現代語訳(ゆる~っと訳)


 この八千矛神は、
こしのくにの沼河比売と
結婚しようと出かけた時に、

その沼河比売の家に到着して、
歌を詠んでいうことには、

八千矛の 神の命(みこと)は
八島国に 妻たるべき女性がいないと

遠い遠い 越国に

賢い女性がいると聞いて

麗しい女性がいると聞いて

求婚しようと
繰り返し出てお立ちになり

求婚しようと
繰り返しお通いになり

大刀の下げ緒も
いまだに解くことができず

重ねた着物も
いまだに脱ぐこともできず

乙女が寝ている家の板戸を

何度も押して動かし、
自分が立っていると

何度も強く引っ張り、
自分が立っていると

青い山で 鵺が鳴いた
野の鳥 雉子の声が響いた
庭の鳥 鶏が鳴いた

いまいましく鳴く鳥どもよ

このような鳥は、
打って止めてしまえ

いしたふや 天馳使が
これを、事の伝え語る言葉にしましょう



続きます。

読んでいただき
ありがとうございました。







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