リートリンの覚書

日本書紀 巻第十 譽田天皇 五 ・剣池、軽池、鹿垣池、厩坂 ・髪長媛 ・大鷦鷯尊の恋


日本書紀 巻第十 譽田天皇 五

・剣池、軽池、鹿垣池、厩坂
・髪長媛
・大鷦鷯尊の恋



十一年冬十月、
剣池(つるぎのいけ)
軽池(かるのいけ)
鹿垣池(かのかきのいけ)
厩坂池(うまやさかのいけ)を作りました。

この歳、
ある人が奏して、
「日向の国に嬢子(おとめ)がいます。
名は髪長媛(かみながひめ)といいます。

諸県(もろあがた)の君、
牛諸井(うしもろい)の娘です。
国色之秀者(かおすぐれたるひと)です」
といいました。

天皇は喜んで、
心の裏で娶りたいと欲(おも)いました。

十三年春三月、
天皇は専使(たくめつかい)を遣わして、
髪長媛を召し出しました。

秋九月の中、
髪長媛が日向からやってきました。
桑津邑(くわづむら)に安置しました。

この時、
皇子・大鷦鷯尊(おほさざきのみこと)は、
髪長媛を見てしまい、

その形の美麗(うつくし)に感じて、
常に恋情をもっていました。

天皇は、
大鷦鷯尊が髪長媛に感じているのを知り、
会せようと欲(おも)いました。

こういうわけで、
天皇は後宮で宴する日に
始めて髪長媛を呼び寄せ、
宴席に坐らせました。

そして大鷦鷯尊を呼び寄せ、
髪長媛を指さして、歌いました。

さあ吾君(あぎ)
野に蒜(ひる)を摘みに
蒜(ひる)を摘みに
我が行く道に
よい香の 花橘が咲いている
下の枝らは 人が皆取り
上の枝は 鳥がいて摘み枯した
三つ栗の 真ん中の枝の
ふほ籠る(ふほごもる)
赤みをおびた乙女
さぁ花開くかな

大鷦鷯尊は歌をいただき、
髪長媛を授かることができると知り、
大変喜び、返歌して、

水をたたえる 依網池(よさみのいけ)で
蓴(ぬなわ)を手繰り
伸ばしていると知らず
堰(せき)の杭を築く 
川俣江(かわまたのえ)の
菱茎(ひしがら)が
遠く伸びていることを知らず
わたしの心は なんとも愚かで

大鷦鷯尊は
髪長媛すぐに交わり慇懃(ねんご)
なりました。

独り髪長媛に歌いかけて、

都から遠い 古波陀(こはだ)乙女よ
神の如くと 聞いていた
今枕を共にしているよ

また歌って、

都から遠い 古波陀(こはだ)乙女よ
争わず 寝てくれたのを
愛しいと思う



・諸県(もろあがた)
宮崎県東・西諸県郡辺

・専使(たくめつかい)
そのための特使

・桑津邑
大阪市東住吉区桑津町

・大鷦鷯尊(おおさざきのみこと)
仁徳天皇

・ふほ籠る(ふほごもる)
中に含まれる。まだ開かない状態にある

・蓴(ぬなわ)
じゅんさいの古称

・川俣江(かわまたのえ)
大阪府布施市川俣辺

・慇懃(ねんご)
=いんぎん親しい交わり、よしみ



感想

11年冬10月、
剣の池、軽の池、鹿垣池、厩坂池を
作りました。

この年、
ある人が奏言して、
「日向の国に乙女がいます。
名は髪長媛といい、
諸県君牛諸井の娘です。
美人です」
といいました。

天皇は喜んで、
心の中で娶りたいと思いました。

13年春3月、
天皇は、
そのための特使を遣わして、
髪長媛を召し出しました。

秋9月九の中旬、
髪長媛が日向からやってきました。
桑津邑に安置しました。

この時、
皇子・大鷦鷯尊は、
髪長媛を見てしまい、

その容貌の美しさに感じて、
常に恋情を持つようになりました。

天皇は、
大鷦鷯尊が髪長媛に恋しているのを知り、
会せてあげようと思いました。

こういうわけで、
天皇は後宮で宴会する日に
始めて髪長媛を呼び寄せ、
宴席に坐らせました。

そして大鷦鷯尊を呼び寄せ、
髪長媛を指さして、歌いました。

さあ吾君
野に蒜を摘みに
蒜を摘みに
我が行く道に
よい香の 花橘が咲いている
下の枝らは 人が皆取り
上の枝は 鳥がいて摘み枯した
三つ栗の 真ん中の枝の
まだ開かない状態にある
赤みをおびた乙女
さぁ花開くかな

大鷦鷯尊は、
歌をいただき、
髪長媛を授かることができると知ると、
大変喜び、
返歌して、

水をたたえる 依網池で
蓴を手繰り
伸ばしていると知らず
堰の杭を築く 川俣江の
菱茎が遠く伸びていることを知らず
わたしの心は なんとも愚かで

大鷦鷯尊は髪長媛すぐに交わり
親しい関係となりました。

独り髪長媛に歌いかけて、

都から遠い 古波陀乙女よ
神の如くと 聞いていた
今枕を共にしているよ

また歌って、

都から遠い 古波陀乙女よ
争わず 寝てくれたのを
愛しいと思う


大鷦鷯尊は、
髪長姫を垣間見てしまった、と。

髪長姫の噂を聞いて
わざわざ見に行ったのかなぁ。

父親の妃に恋をする。
源氏物語を思い出しました。

源氏物語は寝取っちゃったけど。
大鷦鷯尊は、
父親に譲ってもらえたのね。

心広いなぁ、
応神天皇。
(それに比べて大鷦鷯尊は…)

しかし今回のお話、
やたら歌がでてきました。

やはり…
歌の訳は苦手…

明日に続きます。

読んで頂き
ありがとうございました。


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