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Lに捧げるちいさな図書館

≪ L ≫至上主義の図書館へようこそ。司書は趣味嗜好のまま、気の向くまま、あちこちへと流浪しますゆえー♪

崔洋一監督「血と骨」

2008-07-09 | 本・映画・ドラマのレビュー&気になる作品

カムイ外伝の撮影は順調なのでしょうか?
崔洋一監督が撮られた映画はあの盲導犬をめぐる感動巨編「クイール」しか
観たことがなかったのですが・・。カムイ外伝を観る前に、ひとりでも
多くの方が崔監督のすさまじさを事前に知っててほしいなと思います。
知ったら、カムイを正座して待ちたくなる思いになりますよ。
どんだけの現場なんだろう。松山くん、無理しないで!!
 2/20付のレビューですが、
どうしても知っててほしいので再掲載しました。よろしくお願いします。



崔洋一監督「血と骨」


あらすじ


1923年。成功を夢見て祖国から大阪へ渡った少年・金俊平。
朝鮮人集落での裸一貫の船出から、持ち前の腕力と上昇志向で
自分の蒲鉾工場を構えるまでにのし上がった俊平だが、
並外れた凶暴さと強欲さで悪名も高く、
家族までがその存在を怖れていた。
俊平の息子・正雄は、父を「頭のおかしいオッサン」と軽蔑しつつ、
その巨大さに憧憬とも畏怖ともつかない感情を抱く。
そんな折、俊平の息子を名乗る武という青年が現れ、
金家に転がり込んで好き勝手に暮らし始める。
俊平の存在にびくともしない武の姿に、正雄は羨望の眼差しを注ぐが…。

一大センセーションを巻き起こした梁石日の
自伝的小説の映画化となる本作は、激動の大正・昭和を生きた朝鮮移民と
その家族の肖像を描く壮烈な人間ドラマ。
原作者の実父をモデルとした主人公・金俊平は、在日一世として
裸一貫から身を立てるが、狂気じみた言動で周囲を怖れさせ、
生涯を孤独の中に生きた男。
そんな父を見つめる息子の視点から、物語は語られる。
映画はそれをある移民家族の伝記に終わらせず、
かつてこの国にあった時代、そこに生きた人々の、
今なお受け継がれてゆく原風景として、神話的な威厳とともに活写する。

監督は『月はどっちに出ている』以来、念願の梁作品に再び挑んだ崔洋一。
                          (goo映画)

主人公の金俊平を北野武が演じている。
この映画で脱臼したと聞いていたので、どの場面で?と
思ったのだけれど、どの場面でもありえると思った。

全編が主人公・俊平の暴力に彩られている。
暴力だけが信じられる唯一の言語であるかのようだ。
祖国を出て、日本の戦前戦後を生き抜いてゆくためには、
誰にも弱みを見せられなかったばかりか、倣岸でなければ、
身の置き所もなかった。ゆえに身を横たえて眠れないみたいな、
安寧のなかに身をおけない主人公の怒りをまざまざと
見せ付けられるばかりだった。

自分がまだ若いときに人妻を強姦するようにして孕ませた息子、
オダギリジョーが自分のもとに、強請りのためのようにやってくる。
その息子が女を引っ張り込み、あげく、出て行くときの殴り合いが
すさまじい。雨の中をのたうちまわり、殴りあう。
このとき、崔監督の作り出す画面は容赦ない。

「ALWAYS3丁目の夕日」、あの作品にたいする、
在日韓国人、在日朝鮮人からのカウンターパンチのようにも思えた。
崔監督がファイティングポーズで、「ALWAYS」にむかって、
「かかってこい」と言っているような気がした。

貧しいながらも支えあって、かばいあって・・そんな現実も
あったのかもしれないが、その時代は等しく万人にとっての
美しく懐かしい時間ではなかっただろう。

なかば拉致されるように強制連行されてきたひとびとの、
社会保障も満足に受けられないで、祖国同胞も2つに分断され、
背骨を踏みにじられてしまったかのような暮らしの中で、
唯我独尊としてしか己を生きられなかった男の、
あたりをつんざくような咆哮としての暴力が
いつまでも脳裏から消えない。

崔洋一監督の、妥協を許さない映像は、観るものに
カタルシスを一切与えなかった。
主題の重さと厳しさに、そう簡単に答えをあたえてやってたまるか。
ひとりの男の、自分をも破壊しつくすかのような暴力に
歴史に埋没させることを潔しとしない、監督の意志を見た気がした。

蛆虫のわいた肉・・、
その蛆虫をはらいのけながら食べる主人公。
ちんと座ってる観客のよこっつらを張り倒すようだった。

劇中、一頭の豚を捌くシーンがでてくる。
ほとばしる鮮血、手繰りだされる内臓。
それを親族一同で料理していく。

綺麗事じゃないんだ、生き抜いてゆくということは。
鶏ではない、豚をつかって、その生死を叩きつけたところに
ただただ圧倒された。


■一瞬の≪緩み≫も妥協しない作品。
書割の風景はどこまでも懐かしく絵画的で美しいのに、
繰り広げられる眼前の光景のすさまじさ。

カムイ外伝はのほほんと待っていられないと思った。
戦慄した。

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8 コメント

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おはようございます (カンナ)
2008-02-20 09:34:53
あれれれ? 樹さん、ご存知なかったですか?
「カムイ外伝」は現在、中断してます。共演者の一人、菊池凛子さんが12月下旬頃かな?太ももの肉離れを起こして降板したので、それから撮影中断になったかと思います。
制作側は、撮影を立て直して5月頃から再開する予定のようです。
凛子さんは現在、だいぶ快復したと思いますが、ケガが癒えてもアクションをこなすためのトレーニングが間に合わないため、やむなく降板したそうです。残念に思います。
崔監督の「血と骨」は観たこと無いですが、主演のたけしさんも撮影中ケガしたとか。大変だな~、崔監督の現場は。

返信する
カンナさんへ ()
2008-02-20 09:46:08
ごめんなさい、舌足らずで。

5月から再開というのは知っているのですが、
全体の遅れを心配しているのです。
松山くんだけじゃなくて、菊池さんも降板なさって
いるわけですから、全体の流れとして大丈夫
なのかなと。
不適切な書き方をして申し訳ありませんでした。
即刻修正します。
返信する
さっそく、有難うございます (樹さんへ)
2008-02-20 10:14:26
そうですよね。樹さんが知らない訳がありませんでしたね(笑)。私は、樹さんが現在も撮影が続いていると思ったのかな?と勘違いしました。
仰るとおり、全体の流れがどうなっているのか分からないから心配になりますよね。現場の撮影が延期になってクランクアップが遅れることは、他にも聞いた事はありますが…。
想像ですが、凛子さんに代わる女優を選定して、トレーニングしているのかも。
こうなったら、松山君にとっては更にアクショントレーニングを積む余裕が出来たんじゃないかな、と良いほうに解釈してます。二度とケガが無いように願いたいです。
「カムイ外伝」を子供も楽しみにしてます。
返信する
再訪、ありがとうございます!! ()
2008-02-20 12:22:33
カンナさん、ありがとうございました。
ほんっと、ときどきこうゆうことをやらかして、
みんなの頭のなかにはてなマークを点灯させて
しまうんです。
あ、それから、おもいっきり、すぱーーんと
忘れてしまうこともあります。sometimesじゃなくて
oftenです、あるいは alway、はは。

崔監督ってどれだけのすごい監督サンなの?って
思ったんですが、画面、すごかったです。
全編、自虐の詩のちゃぶ台返し状態、ははは。
R15指定だったんですけど、油断して、
きのう、見ていたんですね、そしたら、すっごい
濃厚なベッドシーンがあって、最初、電灯のかげか
と思ったら、黒にぬりつぶした、ぼかしって
やつでした。はじめて観たような気がします。
しかも、しかも部屋に入ってきていたももと
一緒に観ていたんです!!!
親子でR15の画面について語る日がこようとは。
「すごいなああ」と言って、
目をそらしたひと、はーーい!!

カムイ伝に黒いぼかしはないかと思うんですけど、
でもなあ、わかりませんよ。そういうの、
大々的に宣伝ででてこなくてもあるかも。
いやだなあ、人セクどころじゃないですよ。
でもカムイってR15にはならないですよね、
だったら大丈夫・・ですよね、ですよね。

ももとはこれで免疫ができました。
今度は一緒に人セク、余裕で行けそうです(笑)
返信する
うーん、男性的・・・ (Rainy)
2008-02-21 00:11:13
こんばんは☆素敵なレビューをありがとうございます。

「血と骨」、まだ見てないんですが、暴力と
ホラー映画が極力苦手なので、おそらく見ることは
ないかと思うんですが()、描写が強烈ですね。
生きることのすさまじさを直接的に表現している映画、
という印象です。

個人的には、直接的な描写より、隠喩が好きです
そのほうが、私にとっては直接的に響くので・・・
全然この映画とは関係ないですが、「デスノート」の
中で、Lの心情と比例して、だんだんLの食べるお菓子が
シンプルなものになっていく、という、ああいう演出が
好きです・・ 血が飛び散ると、もうそれだけで貧血
起こしそうになるぐらいの、ヘタレなので・・・

樹さんと、ももちゃんの関係は、私の理想の親子関係です
ももちゃん、幸せですね・・・
返信する
原初的というか・・ ()
2008-02-21 07:10:37
Rainyさん、おはようございます。
ちょっと無理だと思います(って、いきなりかい!)
豚を捌くシーンも強烈でしたから。
生命力の豊穣さなら、中上健次の小説に似ていると
思うのですが、それともまた違うのです。
中上の小説は不屈の、生命賛歌のような部分も
あったじゃないですか、側面ではありますが。
だけど、そうじゃないんですね、生まれてしまう命、というか、生ませた命というか。
カタルシスがないので、この監督の本質をしりたい、
って興味がないとかなりしんどい映画です。
時間的にも長く感じましたし。
とてもあの「クイール」を撮られた監督だとは
思えませんでした。
小林薫さんと香川照之さんの演技が素晴らしい映画でしたが。

でもRainyさんには読んでもらいたいかもしれません、
小説はいかがでしょう。「血と骨」。
返信する
Unknown (SS)
2008-02-21 17:13:53
生易しくなさそうですね~。
これが公開されていた時も、気にはなりましたが、やはり描写が生理的にうけつけられないかも、と思って未だ観ておりません。

豚のシーンなど、現実は甘くない、ってこと、それを食べて、私たちは生きていること、なんかいろいろ考えさせられそうですね。

ポール・オースターの「最後の物たちの国で」という小説も、けっこうすさまじかった。普通に豚とか牛みたいに人間もされて出荷されたりしてて。。小説だからかろうじて読めましたけど、時になまやさしくない描写は、何かを気づかせてくれますね。

+アクトで、監督の要望以上のことをしたい!とアクションも頑張ってしまう、と言っていたまっつん。果たして、それだけすさまじいものになるのでせうか。。ドキドキ。
でも、楽しみですね。
返信する
すごいの読みましたね! ()
2008-02-21 19:54:12
SSさん、こんばんは。
世の中にはポテチ食べながら、ごろんと寝そべり、
ケータイのメールうちながら観てていい映画と
そうでない映画があると思います。
どちらが精神にとっていいのかよくわからないけど、
一心に見ざるをえなかった映画は
こころに何かを深く刻み込みますね。
傷かもしれないし、感動かもしれません。
「血と骨」は傷でした。
すさまじかったな。
どうしてくれるんだと、血だらけの腕を
みせられてるみたいでしたよ。

ポール・オースターも怖いの書いてられるんですね。
村上龍なんかいっそすがすがしいのに・・・。

カムイ外伝、少し怖くなってきました。
ちょうど人セクを待ってたくらいの時間ですね。
やっぱり怖い気がします。
返信する

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