
スーパー兄弟 於 梅田呉服座
【大岡政談:悪の華】2015/8/5 遅ればせながら・・
LINK公演のあと、来月の若丸劇団のチケット予約をしに、呉服座に行ったのです。
そのあとお芝居だけ見よっかな。という軽い気持ち。いや、こわかった。
スーパー兄弟としては、この日、
どんなお客が呉服座につめかけるかわかっていたはず。
だからこそ、プライドをかけての外題。
いやあ、ああいうお芝居には慣れていないので、度肝を抜かれました。
めちゃめちゃ怖かったです。
若丸劇団のファン、を意識して、
若丸劇団では絶対に演じないだろう種類のお芝居を当てて、
大衆演劇にはこういう劇団もあるんだよ、
面白い芝居というのはこういうものもあるんだ、と教えたい意図があったんだろうなあ。
たまたま、この演目ってはずがないもの。
呉服座の5日がどういう日なのか、劇団として知らないはずがないから。
若丸ファンでお芝居を見たほかのファンは何を感じたのかなあ。
京橋でLINK公演を見て、梅田に直行。
呉服座で渡された予約のための整理番号は118番でした。
スーパー兄弟のお昼の部が4時前には終わっているはずなんですけど、
4時過ぎに行ったとき、予約の受付はまだ50番台!
呉服座って太っ腹、5日に行けばよその劇場とは違って、1ヶ月分の予約が取れるんですね。
しかも予約枚数に制限がなく、予約天国(笑)
よそだと、1日、16日が翌月の予約受付開始日ですから、2回分はそのために木戸銭を払うという・・・
朝から並んだ人お疲れ様でした、ですよ。
私が予約を入れているとき、すでにお芝居が始まっていて、
すぐ横に客席後ろから登場する予定の美麗座長がスタンバイしてました。
フードをかぶってて表情はまったく見えず。にじみでる迫力。
障らぬ神に祟りなし、ってフレーズが脳裏をかすめました^^
無事に初日、千秋楽の予約が取れて、ほっとしつつ客席へ!
【大岡政談:悪の華】************************************************************************
南町奉行所の大岡越前ととりいが狂死郎(龍美麗座長)について話している。
大岡越前は殺人犯の羅紗面・狂死郎をとらえたが、生い立ちの悲惨さから罪を減じ、島送りとした。
だが、狂死郎は島抜けをして行方知れずだ。
大岡はもう一度自分にとらえさせてくれ、ととりいに談判する。
とりいは21日の間に大岡が狂死郎を捕らえられなければ、切腹を、
捕らえることができたら自分が切腹すると、その死を賭ける。
狂死郎はあんまの風体となり、とある大店の伊勢屋の主人に招かれる。
油断している主人は狂死郎に斬られてしまう。
伊勢屋の墓で、店の一人娘が墓参りをしている。そこに行方不明だった兄が通りかかる。
狂死郎に父親が殺されてしまった娘は兄に家に戻ってくれるように頼むが、
兄はやることがあると妹に告げる。
墓を通りかかった狂死郎に(実は狂死郎の手下に成り下がっていた)兄が、伊勢屋は自分の父であったこと、
殺人をやめて、父親に謝ってほしい、と頼むが、狂死郎は聞き入れない。
それどころか、狂死郎の情婦に鉄砲で射殺されてしまう。
大岡越前の部下・吉田(三代目南條隆座長)は懐刀として15歳のときから働いている。
吉田はなんとか21日の間に狂死郎を捕らえようとして探し回る。
そして明けて21日になるという大雪の日に、とうとう狂死郎と対峙する・・・。
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お芝居の写真撮影はできないので、その大掛かりで派手な舞台装置、演出を
お伝えできないのが残念なのですけれども、
とにかく、視覚と聴覚に訴えるお芝居でした。
たとえば、あんまから殺人者に豹変した狂死郎伊勢屋主人を惨殺すると、
舞台が黒子たちによって人力で回され、回ってきた裏側には羅紗面・狂死郎の文字と飛び散った血が。
また拍子木の音、鉄砲の音など、その大きな音にそのつどびっくりさせられます。
たった3枚の板を組み合わせたその上に狂死郎が仁王立ちするとか、
大量の雪を降り積もらせ、そのなかで殺陣をおこなうとか・・・、
美しい、と書きたいところですが、衝撃的で怖かった。
劇場の中の雰囲気も違うというか。
ん^^^、知らない場所に来てしまったというか。
今まで私が大好きな都若丸劇団をはじめとする大衆演劇と全然違うやん、みたいな違和感が。
狂死郎のいでたちが、銀髪長髪で、片方の目だけがグレーなんですよ。
刀傷があって、見得を切るたびに長い舌を出すんです。
そのたびに客席から嬌声があがる、ハンチョが飛びかうって、そういうリアクションについてゆけん^^
この狂死郎は手下の仲間に言われて、墓で手を合わすとき、拍手をうつんですね。
墓参りの仕方なんてしらないと。
母親が女郎で、父親が不明、生まれてきて日本人の風体ではなかったため、
母親に見世物小屋に売られてしまう。
そこでそういう不幸な子らを救ってくれる篤志家がいるのだけれども、
それは表の顔で、実は人買いの悪党だった、世の中はそんなものなんだ、
そいつを殺したのが人殺しのはじめ、
人を殺すのが楽しくてしようがない、と話すんです。
そういう人物、お芝居として、すごーく高みの見物的な感じで拍手喝采できるんですかね、
ダークヒーローとして?
私は衝撃的すぎて、びびりまくって、ちょっと変なテンションになっていたんですけど、
翌日、勤務が早いからと芝居だけで帰ってきたのも、
実は、今にして思えば、自分の身の置き所がなかったからじゃないかと思うのです。
たしかにすごいし、狂死郎を演じた美麗座長も、
大岡越前の子分、吉田を演じた3代目南條隆座長も芝居上手だったのですけど、
この芝居を見て、どう納得しろというのか、というような意味不明の、しかし大きな疑問符があって。
この劇団、美麗さんが特にこういう犯罪者を演じるのが得意らしいんですけど、
人情話を演じて、人の情にふれてうるうるしたり、ほのぼのしたりできるのかなあ、
たえず、【どうだ、こういうの、ほしかったんだろう?】と薄ら笑いを浮かべて、
ひとにショックを与え続け、エスカレートするだけなんじゃないか、などと、
よからぬ想像をしてしまうのでありました。
私は口上を聞いて、舞踊ショーまでの休憩の時間に出てきたんですけど、
その口上で、美麗さんが26歳という年齢にこだわって言う事に???って思ってしまいました。
京橋でLINK公演をやっているのに、こっちを見に来てくれて、って言われてましたけど、
【40前のおっさんたち】などというわけですよ、4人の座長さんたちを。
もっともそれは南條隆さんとの雑談のなかで出た言葉ですけど。
「10代でできたら、【そんなことができるのか。すごいな】と褒めてもらえたけど、
今は誰もほめてくれない、こどもぐらいや、パパすごいって。
今はすごく中途半端な年頃」
だそうですよ。
なんで中途半端なのかわからないし、その中途半端を超えた年齢には何が待っているのか、と思う。
40前のおっさんになるんとちがうのん?
中途半端って言う言葉のうらに、14歳から座長をやってきて26歳でこういう芝居ができてます、という
自負というか自慢があるんじゃないのかなあ。
たしかに、南條隆さんと美麗座長はお芝居がうまいかもしれないけど、
私が大衆演劇に求めるものを見せてくれる劇団じゃあないのかもしれないと思いました。
私にとってはバンジージャンプみたいな度胸試しの側面をもつ芝居の内容だし、
怖かったり、意表をつく仕掛けがあったりして、お見事です、とは言いたいけど、
私自身が彼らのファン層から弾かれる人間なんだろうなあというか。
スーパー兄弟は去年、座員にたいするひどい暴力事件を起こして逮捕されましたけど、
その逮捕の3日前くらいに見て、今回で2回目。
去年、千秋楽をつとめられなかった8月呉服座に今年帰ってくるという、
その度胸とリベンジの思いの強さを感じますけど、
3度見ないとその劇団はわからない、と言われても、
3度目を観る勇気がなかなかわかないだろうなあ^^