
徳島県立近代美術館が25日、フランスの画家ジャン・メッツァンジェ作として所蔵していた絵画「自転車乗り」が実は贋作であったと発表し、静かな騒動となっている。問題の絵は1998年に6720万円で購入されたもので、美術館側は当時「傑出したキュビスム作品の一つ」として胸を張って展示していた。
だが今回、ベルリン州警察からの情報提供、著作権管理団体の判断、さらに贋作師ベルトラッキ本人の供述によって、絵画が彼の手による贋作であることが明らかになったという。ヴォルフガング・ベルトラッキは、20世紀のヨーロッパ美術界を震撼させたドイツ人贋作師で、ピカソやマックス・エルンストなどの名画を模写し、その贋作を市場に流通させたことでも知られる。とはいえ、専門家の目をも欺くほどの技術を持ち、ひと目見ただけでは判断できないほど精巧な仕上がりであることから、今回の件も美術館にとっては「やられた」というしかない事案だったようだ。
しかもこの話、当時の購入額が6720万円だったという点で、多くの人々の関心を集めているが、むしろ「贋作に6720万円を払うことができた」という点で、ある種の気前の良さが感じられないこともない。今後は弁護士と相談のうえで購入先との交渉を進めつつ、県民に向けた「説明」を目的に、この贋作を展示することも検討しているという。つまり本物ではないが、逆にベルトラッキの作品として展示すれば一種の話題性にはなる。まさか美術館が贋作の展覧会を開催するとは思わなかったが、時代が進めば「贋作師列伝展」などが市民講座になる日もそう遠くはないのかもしれない。それはそれで、オリジナルより集客力があるような気がしてならない。
そしていつか、県立博物館で「徳島名物・偽お土産大集合展」が開催され、鳴門金時が実は千葉産だったという展示に人だかりができる未来も、決してありえない話ではないのである。
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