北海道立釧路芸術館

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「羽生輝展」前期展示より

2021年11月04日 11時53分45秒 | 日記

【 「羽生輝展」前期展示より 】



釧路芸術館で10月9日(土)に開幕した「傘寿記念 日本画家 羽生輝展―悠久の岬を望む」も、はや3週間余りが経ちました。いち早くご観覧くださった方、お気にかけてくださっている方、このブログで初めて知ってくださった方、さまざまな方がいらっしゃることと想います。

釧路、道東に根ざして制作を続けてきた日本画家、羽生輝さん。本展では、その一貫した立脚点のもとに深く掘り下げられてきた表現内容や、研ぎ澄まされた造形世界を、全106点の作品を通してご覧いただければと願っています。

さて、本展は11月7日(日)いっぱいで前期が終了し、一日間の展示替え休館をいただいたのち、11月9日(火)より後期がはじまります。会場で配布し、また当館ホームページにも掲載中の出品目録に記しておりましたが、絵画17点、挿絵原画13点は前期のみの展示となります。お見逃しのないよう、また展覧会の記録として、まもなく見納めとなる作品を今回のブログではご紹介したいと思います。




「羽生輝展」は全5章構成。第2章では、4点が前期のみの展示となります。



向かって右から:▷〈暮れる北浜〉1977(昭和52)年/釧路市蔵 ▷〈冬来〉1974(昭和49)年/若山直氏蔵 ▷〈厳寒北崖〉1979(昭和54)年/若山直氏蔵
〈冬来〉は、第1回創画展(1974年)に2点出品し、2点とも入選を果たしたうちの1点。釧路・道東の浜辺に主題を定め、道外の日本画界に自らの表現を問い始めた最初の記念すべき作品です。


 

中央:▷〈漁待つ北浜〉1984(昭和59)年/辻谷守氏蔵
釧路市三津浦のイメージをもとにした作品。荒れて波音を立てる海。出漁のときを寡黙に待つ漁村。旗や掲揚台は、後の作品において、漁のシンボルとして重要なモチーフとなってゆきます。




第3章では、6点が見納めとなります。



中央:▷〈白い海〉1989(平成元)年/辻谷守氏蔵
胡粉の白色に覆い尽くされた波の描写。風土に適したモチーフを、モチーフに適した描き方を・・・。自問自答を重ねる画家の姿勢が伝わってくるようです。




向かって左から:▷〈北の岬(愛冠)〉1993(平成5)年/釧路弁護士会蔵 ▷〈北の浜辺(床丹)〉1993(平成5)年/釧路市立美術館蔵
鈍色の夕闇、重々しく横たわる漆黒の海原、番屋が立ち並ぶ陸地に、線条を刻んでしばれつく氷雪・・・。この土地に生きる実感が強くうかがわれます。2点はそれぞれ独立した作品ですが、一方で、イメージが一続きに繋がるパノラマとしても構成されています。所蔵先も別々のため、今回の展示は、両作品を隣同士に並べて鑑賞いただける貴重な機会です。右の作品〈北の浜辺(床丹)〉で、羽生さんは、出品を継続する創画展において初めての創画会賞を受賞しました。




向かって右から:▷〈北の浜辺(桂恋)〉1989(平成元)年/市立釧路総合病院蔵 ▷〈浜辺に暮らす(千代の浦)〉1994(平成6)年/釧路市立美術館蔵




中央:▷〈北の浜辺(オホーツク)〉1999(平成11)年/北海道立釧路芸術館蔵
遠く海を望みながら、漁村を俯瞰したのち、今度は上方へと視線を導く構図が生み出されています。月光の下、淡い青緑色にきらめく氷雪、温もりを感じさせる褐色の家並みが印象的です。




つづく第4章では、原田康子さん作の新聞連載小説『海霧』のために、羽生さんが手がけた挿絵の原画13点と、小説世界との関わりから触発されて生み出された大作の「海霧」連作も複数点が見納めとなります。

  

ケース内:▷〈原田康子『海霧』新聞連載小説 挿絵原画より〉2000-2002(平成12-14)年/一般財団法人くしろ知域文化財団蔵




向かって左から:▷〈海霧(オダイト)〉2001(平成13)年/北海道立釧路芸術館蔵 ▷〈海霧(07. オソツナイ)〉2007(平成19)年/北海道立釧路芸術館蔵




向かって右:▷〈浜風(釧路崎)〉2009(平成21)年/小川勝弘氏蔵




▷〈北辺・昆布森〉2003(平成15)年/北海道立旭川美術館蔵
逆光で影になった岬の岩肌。そこにしっとりとまとわりつく海霧の様相を、唐刷毛(空刷毛)によって巧みに描きあらわしています。




海外取材作品のコーナーより。



左から:▷〈古都(スペイン・トレドにて)〉1985(昭和60)年/作家蔵 ▷〈シャルトル〉1989(平成元)年/南大通ギャラリー ▷〈フィレンツェにて〉2020(令和2)年/南大通ギャラリー
海外に身を置くことで釧路、道東の風土を外からみつめなおす視点を画家にもたらした重要な意味をもつ作品群のうち、3点が見納めです。



展覧会冒頭のプロローグとしてご紹介している小学生時代の作品も、2点が見納めとなります。



▷〈金魚〉1951(昭和26)年頃/作家蔵 ▷〈すいか〉1952(昭和27)年頃/作家蔵



名残惜しい作品の数々、お時間ございましたらぜひ会場へ会いにいらしてくださいね。また11月9日(火)からの後期には、全期展示される46点に加え、絵画16点、挿絵原画13点が新たにお目見えいたします。どうぞお楽しみに・・・!(北海道立釧路芸術館/藤原乃里子)

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