北海道立釧路芸術館

北海道立釧路芸術館のブログです。北海道釧路からさまざまな情報をお届けします。

大人の寺子屋~びじゅつの時間~2021「アートなティータイム♪」を開催しました

2021年03月24日 16時57分43秒 | 日記

【 大人の寺子屋~びじゅつの時間~2021「アートなティータイム♪」を開催しました 】





3/4(木)、3/11(木)、3/18(木)の3回にわたって「大人の寺子屋~びじゅつの時間~2021」を開催しました。このプログラムは、昨年度までおこなってきた「ミュージアム・セミナー」の後継企画。一方向的なレクチャーにとどまらず、参加者の方々により気軽に、たのしく美術・芸術に親しんでいただければと企画したものです。





今年のテーマは「アートなティータイム♪」。開催中の「旅とアート 巡る・還る」展と関連づけ、異なる3種類の喫茶文化をモチーフとして、学芸員による講話と、市内専門店や茶道の先生による講話、そして茶菓を味わうひとときを組み合わせました。喫茶のノウハウがある当館ボランティアの会SOAの皆さんに、共催としてサポートいただきました。
ディスタンシングのため当初、各回の定員を12名として参加者を募集したところ、大変多くの反響をいただいたことから、カフェ会場をミュージアム・カフェSOAから急遽、広いフリーアートルームに変更し、定員を20名に増やして、当日を迎えました。


第1回(3/4)はコーヒー。
展示室では、釧路出身の写真家・長倉洋海さんが撮影した写真作品〈コーヒーを飲む老農夫[内戦に生きる―エル・サルバドル]〉について、井内佳津恵当館学芸主幹が講話しました。撮影地における社会情勢にもふれながら、味わい深いモノクローム写真とじっくり向き合います。



その後、会場をフリーアートルームに移し、珈琲しなもん桜ヶ岡店店長の加藤義勝さんをお迎えしました。


コーヒーにまつわる文化、生産地、そして美味しい淹れ方まで、クイズもまじえながらの楽しい講話に、皆さんメモをとりながら熱心に聴き入ります。




とっておきのコーヒータイム。ロビーにまでただよう香しい薫りとゆたかな味わいに、満ち足りた時間を過ごすことができました。



第2回(3/11)は紅茶。
前半は、熊谷麻美当館学芸員より、写真家・綿引幸造さんによる〈夕日に照らし出された彫刻《天聖・天沐(「沐」のつくりは「禾」)》〉について講話しました。ヨークシャー彫刻公園を舞台とした写真であることから、イギリスと縁の深い紅茶の回にこの作品をとりあげたものです。





後半は、紅茶専門店ラスカベツの店主・岩井正之さんにお越しいただきました。


席に着きしだい、温かいダージリンがふるまわれます。温度管理が繊細なため、この日は朝から岩井さんがお店で淹れてきてくださった紅茶をご提供いただきました。素敵なティーカップも、岩井さんがお持ちくださったもの。また、お菓子は前回にひきつづき、SOAの皆さんが市内の名店よりセレクトしてくださいました。


紅茶文化の歴史や茶葉の種類による特色、ご家庭でのリーフやティーバッグによる淹れ方のコツ、ほほえましいミルクティー論争のエピソードまで、お話しと紅茶に舌鼓をうつ贅沢なひとときとなりました。



第3回は抹茶。
版画家・池田良二さんの作品〈An inside frontier(内在する辺境)〉をとりあげ、筆者よりお話しさせていただきました。触覚と時間にまつわるコメントを読みながら、池田さんの版画と茶の湯文化に通底するものについて、思いをめぐらしました。



いよいよお待ちかねのティータイム。茶道宗徧流不審庵の大谷宗和さんを席主としてお迎えしました。


茶道の歴史、抹茶のすばらしさ、お茶碗やお道具についてなど、ユーモアあふれる語り口に、皆さん心がほぐれた様子。

窓からのぞむ早春を借景とした会場の配置やしつらえも、大谷さんによるもの。


室内のちいさな景色には、鮮やかな黄色のれんぎょうとともに、この日にぴったりのことば「一期一会」(尾関宗園(桃林)筆)の短冊が添えられました。




お菓子は「花衣」、お茶は「森の白」。それぞれの銘にも耳を傾け、目でも味わう、まさにアートなティータイムとなりました。



終了後のアンケートには、「つながりを見つけてたのしい企画・・・また参加したい」、「本格的に入れた紅茶ははじめていただきました」、「おいしいお茶と心温まるお話・・・とても充実した」など、参加者より嬉しいお声をいただきました。

3回ともに20名全員が元気に、熱心にご参加くださったこと、そして快くお力添えくださった各回講師の方々、サポートくださったSOAの皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。

釧路芸術館では、感染症予防対策を慎重に講じながら、これからも体験的な内容をふくめたプログラムをおこなってゆきたいと考えています。皆さんとまたご一緒に、たのしく美術・芸術にふれられる日を心待ちにしています。(北海道立釧路芸術館/藤原乃里子)

最終回;ようこそ「ビーズのはなやぎ・刺繍の美」展へ❺

2021年01月10日 16時05分16秒 | 日記

【 最終回;ようこそ「ビーズのはなやぎ・刺繍の美」展へ❺ 】



いよいよ展覧会の最後の部屋へ。はじめは、ロシアのサハ共和国を中心に暮らすサハの人びとの作品です。



人間の居住域としては、世界で最も寒いサハ共和国。毛皮を豊富に用いた服飾品は、華やかなデザインや装飾におおわれています。カラフルで豪奢なビーズ飾りがあしらわれ、とても贅沢な雰囲気です。





文様では、S字状の巻軸形や十字形を組み合わせたパターンがみられます。刺繍の色づかいも明るく鮮やかです。




〈馬の飾り布〉にも、伝統の民族文様が刺繍されています。サハ共和国の中央部では馬や牛の牧畜が生業とされ、とくに馬は共和国の紋章にも描かれるなど、人びとと密接な関わりがあります。立派な飾り布からも、サハの人びとが馬を大切に思う心が伝わってくるようです。





つづいて、モンゴルのバヤン・ウルギー県に暮らすカザフの人びとによる作品をご紹介します。みどころは大きな〈布製壁かけ〉の数々。横幅2メートル以上もあるほぼ全面に、かぎ針刺繍によってさまざまな模様がほどこされています。




上の写真の作品で、円形の内外を構成する曲線的な文様は「羊の角」がモチーフになっているといいます。また、上の写真の中央にみられる「蕾」や「花」、円を描く縞模様の線は「まだらな虫」・・・といったふうに、具体的な呼び名のついた図柄が組み合わされているのです。



丹念に紡がれた壁かけは、外気や砂埃から室内を守るため、住居の内壁に何枚もかけられます。フェルト製のマットも床に敷かれます。カザフ刺繍で空間全体が覆われるイメージです。
室内を美しく飾ることはカザフの女性たちの大切な役割とされます。刺繍はカザフの装飾文化を象徴する技術であり、家族の幸せが永遠につづくことを願う表現でもあるといえるでしょう。





展覧会最後のセクションでは、スカンジナビア半島北部を中心に暮らすサミの人びとの作品をご紹介します。




サミの人びとはすず(錫)を素材とした手工芸を得意としてきました。すず糸刺繍による作品とともに、刺繍用のすず糸をつくるためのトナカイ角製道具もあわせて展示しています。



精緻な手技によって、金属特有の硬質な輝きや張りのある質感が引き出されています。有機的な曲線模様は、うごめくような生命感も感じさせてくれます。






フィンランドのスコルトサミタイプと呼ばれるスタイルの衣服、服飾品には、装飾にビーズが用いられます。どこまでも緻密な表現はすず糸刺繍と通じ合うところがあります。
サミの人びとは、自然を描写する語彙をゆたかにもつといいます。そうした自然を語る優しく、鋭敏な感性や表現力は、その手仕事にも息づいているように感じられます。



日用品や儀式の用具としての用途をもちながら、民族によって異なる技と表現によって装飾された品々。私たちをゆたかな気持ちにさせてくれるのは、こうした手仕事の数々が、北方の自然と光のなかで生きる人びとの丁寧な暮らしの縮図であり、根源的な美を宿しているからなのかもしれません。みなさまはいかが感じられるでしょうか。

シリーズの最後までおつきあいくださり、大変ありがとうございました。「紡ぐ心と暮らし ビーズのはなやぎ・刺繍の美~北海道立北方民族博物館コレクション」展は1/20(水)までご覧いただけます。(北海道立釧路芸術館/藤原乃里子)

ようこそ「ビーズのはなやぎ・刺繍の美」展へ❹

2021年01月09日 16時36分03秒 | 日記

【 ようこそ「ビーズのはなやぎ・刺繍の美」展へ❹ 】

今回はロシア、カムチャッカ地方とアムール川流域に暮らす民族の作品をご紹介します。まずはカムチャッカ地方に暮らすコリヤークから。


写真右は〈女性用ビーズ装飾付きトナカイ皮製衣服〉。


ハンノキで赤茶色に染められたトナカイ皮製の生地に、色とりどりのビーズを使った飾りがつけられています。




ビーズの彩り、輝きが際立つたくさんの素敵なオーナメントは、コリヤークの女性たちが日頃からなめした皮や布にビーズ刺繍をほどこして、つくりだめているもの。衣服や帽子を新調するときに、こうした飾りをアップリケしていくのです。



ビーズ装飾をあしらった帽子も、特集してご紹介しています。装飾の丸いかたちは、守り神である月や太陽をあらわしています。


子どもの帽子には、トナカイの耳がそのままつけられているものも。人びとが動物の毛皮や身体の一部を身に着ける背景には、動物の力をいただくという意味もあると考えられています。



花を想わせる模様のビーズ刺繍がほどこされた右の作品は〈針さし〉(展示しているのと反対面がクッションになっています)。また、左にみえるのはトナカイの骨(もしくは角)に彫刻をほどこした〈針入れ〉です。このシリーズの初回でご紹介した北海道アイヌの作品にも、木製の針入れが含まれていました。



おまじないや儀式にかかわる品々にも、ビーズが用いられています。こちらは〈お守り〉。ひとをかたどったふたつのオブジェが手をとり合うように、紐やリボンでひとつに結び合わされています。何事かあると人びとはこれを戸口に下げて、食べものを与えてきたといいます。「甘いもの好き」というエピソードを聞くと、祈りや願いを託すお守りが、愛すべき妖精にもみえてきます。




つづいてアムール川流域に暮らしてきたツングース諸民族の作品をご紹介します。



こちらはナーナイの〈花嫁用刺繍付き衣服〉。絵柄ばかりではなく、豊富な色数による刺繍糸の配色まで、緻密に左右対称に構成された刺繍が全面にほどこされています。


黒地の部分には、生命樹と呼ばれるモチーフがあらわされています。木の周りに鳥たちや鹿、魚やカエル、トカゲのような生きものの姿が…! 花嫁が新しい生命や沢山の幸福に恵まれるよう願う思いが込められています。


背中は布地を白、茶色、白と三つに色分けして、上からそれぞれ天上界、祖先が暮らす森、現世をあらわしています。天上界にあたる一番上の部分には、龍のモチーフが刺繍されています。淡い色調も用いられていて、優しく神秘的な印象です。
ナーナイなどアムール川流域の民族の刺繍には、北海道やサハリンの民族文様とも通じる渦巻きがみられますが、それとともに具象的な動物や生きものをモチーフとしている点に特徴があります。


前身頃には、龍のうろこ模様の図案が全面にあらわされています。会場では前後ともご覧いただけるように展示しています。



刺繍の制作過程の見本や型紙もご紹介しています。ナーナイの人びとの刺繍は、型紙や芯になる糸などを刺繍糸で巻き込んでつくられているため、刺繍がより厚みをもって布地から浮かび上がってみえる効果をもたらしています。



後ろ身頃に龍のうろこ模様を配した〈子ども用衣服〉と、魚皮を多用することで知られるナーナイに特徴的な〈魚皮製衣服〉。このほかにも日用品や、作品として制作された壁かけにも緻密な刺繍がほどこされています。



ナーナイに加えて、ウリチ、エベンキの人びとの壁かけ作品もご紹介しています。見事な手仕事の技とともに、あちこちに散りばめられた動物たちを探しながら鑑賞するのも楽しいセクションになっています。



次回は最終回。サハ共和国、モンゴル、さらに西へ進み、北欧に暮らす北方民族の作品をご紹介します。(北海道立釧路芸術館/藤原乃里子)

ようこそ「ビーズのはなやぎ・刺繍の美」展へ❸

2021年01月08日 16時53分04秒 | 日記

【 ようこそ「ビーズのはなやぎ・刺繍の美」展へ❸ 】

今回は、サハリンに暮らしてきたサハリンアイヌ、ウイルタ、ニブフの作品をご紹介します。



サハリンアイヌでは、戦後北海道へ移住し、アイヌ文化の継承にも尽力した口承文芸伝承者の藤山ハルさんと、長女の金谷フサさんが制作した刺繍付きの衣服を中心に、帯、はちまき、そして大きなガラスビーズを使用した首飾りを展示しています。



渦巻き、曲線や星のようなかたちを連続させていった文様は、前々回ご紹介した北海道アイヌの刺繍と通じるところがあります。また、より賑やかな色づかいが特徴的で、大陸との関係という点において興味深く感じられます。



サハリンアイヌ、北海道アイヌの人びとの作品は、隣り合う空間でご紹介しています。





つづいてウイルタです。ウイルタの人びとの作品には、渦巻きを向かい合わせに並べて、ハートのようにみえるかたちが特徴的です。こちらは大きなテーブルクロス。



落ち着いたトーンのところどころに鮮やかな色で双葉のようなかたちが刺繍であらわされ、アクセントを添えています。丁寧にほどこされた刺繍はとても穏やかな雰囲気です。




こちらはトナカイ皮に絹糸でウイルタ文様を刺繍した皿敷きとお財布。
日露戦争の講和条約以降、第二次世界大戦まで日本領だった南樺太では、敷香(現・ポロナイスク)郊外の「オタスの杜」において、ウイルタやニブフの人びとが、日本人観光客向けのお土産品としてこうした品々を制作しました。なかには、函館出身の画家・木村捷司(1905-1991年)が1938年に収集した品も含まれています。




佐藤チヨさんが手がけたバッグには、犬とトナカイが何ともいいお顔で、またその下には、南樺太の地形(西の方角を上にした向き)とお魚が刺繍されています。もう一方の面には、同じ青い糸で、先ほどの皿敷きと同様の文様が刺繍されています。




左の黒い衣服は北川アイ子さん(1928-2007年)の作。北川さんは、かつて網走にひらかれていた資料館ジャッカ・ドフニの初代館長をつとめたダーヒンニェニ・ゲンダーヌさんの義妹にあたります。網走に移住してから、市内でウイルタ刺繍の普及に貢献されました。
右のピンク色の衣服は、北川さんのお母さんが手がけ、北川さんが生前、身に着けていたそうです。




右開きのスタイルや裾周りの金属の飾りなど、民族伝統の衣服の形式をもとにしています。淡い色調や繊細な素材と刺繍、丸みを帯びた襟のかたちなど、ひときわ愛らしい印象です。





ニブフの人びとの作品にも、オタスでつくられた皿敷きや財布が含まれています。ウイルタの人びとの作品と、互いによく似通っています。




〈縫い方見本〉は言語学者・服部健博士の旧蔵資料。1941年頃にニブフの作り手が縫いあらわしたもので、白い木綿布に赤い糸で15種類のステッチを例示しています。なかにはウイルタや次回ご紹介するアムール流域の民族でも使われているステッチもみられます。




右開きの伝統的な形式に、細やかな刺繍をほどこしたニブフの衣服。



よくみると、左の衣服ではデニム生地やリボンも用いられています。受け継がれてきた伝統のうちに、新しい素材やスタイルを巧みに採り入れる柔軟な感性が、北方民族の人びとの作品に共通して息づいているように感じられます。



次回はロシア、カムチャッカ地方とアムール川流域に暮らす人びとの作品をご紹介します。(北海道立釧路芸術館/藤原乃里子)

ようこそ「ビーズのはなやぎ・刺繍の美」展へ❷

2021年01月07日 17時34分16秒 | 日記

【 ようこそ「ビーズのはなやぎ・刺繍の美」展へ❷ 】



今回は、北米先住民の人びとの作品から。




こちらは北西海岸インディアン/ツィムシャンのボタンローブ(F. ギャスリー作)。ボタンローブは舞踊や儀式の際に羽織るものです。中央の絵柄は、全体でシャチの姿をあらわしていて、背びれにワシの顔、尾びれには人間の顔が組み合わされています。



貝製のボタンのほか、シャチの吹き潮など要所要所にビーズが装飾として用いられています。北西海岸インディアンの人びとの身の回りの品々にあらわされる動物や生き物は、家系にかかわる神話、物語に由来するものといわれています。




つづいてアサバスカンの人びと。中央の大きな〈ヘラジカ皮製ジャケット〉では沢山のフリンジとともに、可愛い花柄のビーズ刺繍が華やぎを添えています。



鮮やかな橙色や淡いピンクの花びらと丸みを帯びた蕾に、真っ白な茎が清新な印象です。





こちらのカラフルなベルトは、織機をつかったビーズ織りによるもの。植物の曲線的で複雑なかたちが、色鮮やかに瑞々しくあらわされています。




19世紀後期につくられたこちらの歴史あるベルトは、ウエストの帯に極小粒のビーズを、また、吊り下げられた多数の皮ひもには鳥の骨(長い筒状の飾り)を用いています。先住民の人びとにとって、ガラス製のビーズはかつて毛皮交易を通じて西欧からもたらされた新しい素材でした。鳥の骨は、ビーズを入手する以前より、先住民の人びとが装飾に生かしてきた自然素材の一つです。



自然素材による装飾の作例はほかにも。こちらの〈子ども用ヘラジカ皮製靴〉では、足の甲の部分の縞模様の飾りにヤマアラシの刺を用いています。
こうした、北方での生活を自分たちの手で彩る文化が、ビーズという新しい素材を巧みに取り入れながら今日まで受け継がれてきた様子も、あわせてご覧いただければ幸いです。







つづくセクションは、極北で暮らすエスキモー/イヌイトの人びとの作品です。一枚目の写真の右の衣服は、女性用アザラシ皮製パーカー〈アマウティク〉。豪奢なビーズ装飾、個性的な色づかいから、逞しいエネルギーが伝わってくるようです。大きなフードの下にみえるふくらみは、おんぶした赤ちゃん用のスペース。




〈アザラシ毛皮製靴〉では、ぬくぬくしたフェルトインナーに素朴な花柄が刺繍されています。外側にみえる星形のモチーフは、毛皮を切り抜いて嵌め込み、縫い合わせたもの。縫いしろわずか1ミリという、超絶技巧…!




あわせてご紹介している〈ダッフル製壁かけ〉は、カナダのイヌイトの女性たちが1960年代以降に手がけてきたもの。狩猟を主な生業としていた伝統的な生活情景や、自然のモチーフがあらわされています。




同じくダッフル製の小さな靴や手袋もとってもキュート!




〈女性用トナカイ歯付きセイウチ皮製帯〉は、下辺に装飾として白や青のビーズとともに、裁縫用の指貫きと薬莢が吊り下げられています。これを身に着けると病気やけがを治す力が備わるとされ、母から娘へ受け継がれてきたものです。
今回の展示では儀式やおまじないの用具など、祈りの世界に通じる品々もご紹介しています。そこには、北方の厳しい自然のなかで暮らす人びとが大切な拠り所としてきた精神世界の一端が垣間みられるようです。





こちらはグリーンランドに暮らすエスキモーの女性用衣服です。首・肩周りのビーズケープは、ビーズが西欧より流入してからつくられるようになったもの。アザラシ毛皮製のショートパンツ、アザラシ皮製のロングブーツを組み合わせた洗練された出立ちからは、手仕事の伝統とともに、新しい素材やスタイルを巧みに取り入れる鋭敏な感性もうかがわれます。こうした衣服は今日、お祭りの日などに民族衣装として着られるそうです。

次回はふたたび太平洋を渡って西へ、サハリンに暮らしてきた人びとの作品をご紹介します。(北海道立釧路芸術館/藤原乃里子)