北海道立釧路芸術館

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ようこそ「ビーズのはなやぎ・刺繍の美」展へ❷

2021年01月07日 17時34分16秒 | 日記

【 ようこそ「ビーズのはなやぎ・刺繍の美」展へ❷ 】



今回は、北米先住民の人びとの作品から。




こちらは北西海岸インディアン/ツィムシャンのボタンローブ(F. ギャスリー作)。ボタンローブは舞踊や儀式の際に羽織るものです。中央の絵柄は、全体でシャチの姿をあらわしていて、背びれにワシの顔、尾びれには人間の顔が組み合わされています。



貝製のボタンのほか、シャチの吹き潮など要所要所にビーズが装飾として用いられています。北西海岸インディアンの人びとの身の回りの品々にあらわされる動物や生き物は、家系にかかわる神話、物語に由来するものといわれています。




つづいてアサバスカンの人びと。中央の大きな〈ヘラジカ皮製ジャケット〉では沢山のフリンジとともに、可愛い花柄のビーズ刺繍が華やぎを添えています。



鮮やかな橙色や淡いピンクの花びらと丸みを帯びた蕾に、真っ白な茎が清新な印象です。





こちらのカラフルなベルトは、織機をつかったビーズ織りによるもの。植物の曲線的で複雑なかたちが、色鮮やかに瑞々しくあらわされています。




19世紀後期につくられたこちらの歴史あるベルトは、ウエストの帯に極小粒のビーズを、また、吊り下げられた多数の皮ひもには鳥の骨(長い筒状の飾り)を用いています。先住民の人びとにとって、ガラス製のビーズはかつて毛皮交易を通じて西欧からもたらされた新しい素材でした。鳥の骨は、ビーズを入手する以前より、先住民の人びとが装飾に生かしてきた自然素材の一つです。



自然素材による装飾の作例はほかにも。こちらの〈子ども用ヘラジカ皮製靴〉では、足の甲の部分の縞模様の飾りにヤマアラシの刺を用いています。
こうした、北方での生活を自分たちの手で彩る文化が、ビーズという新しい素材を巧みに取り入れながら今日まで受け継がれてきた様子も、あわせてご覧いただければ幸いです。







つづくセクションは、極北で暮らすエスキモー/イヌイトの人びとの作品です。一枚目の写真の右の衣服は、女性用アザラシ皮製パーカー〈アマウティク〉。豪奢なビーズ装飾、個性的な色づかいから、逞しいエネルギーが伝わってくるようです。大きなフードの下にみえるふくらみは、おんぶした赤ちゃん用のスペース。




〈アザラシ毛皮製靴〉では、ぬくぬくしたフェルトインナーに素朴な花柄が刺繍されています。外側にみえる星形のモチーフは、毛皮を切り抜いて嵌め込み、縫い合わせたもの。縫いしろわずか1ミリという、超絶技巧…!




あわせてご紹介している〈ダッフル製壁かけ〉は、カナダのイヌイトの女性たちが1960年代以降に手がけてきたもの。狩猟を主な生業としていた伝統的な生活情景や、自然のモチーフがあらわされています。




同じくダッフル製の小さな靴や手袋もとってもキュート!




〈女性用トナカイ歯付きセイウチ皮製帯〉は、下辺に装飾として白や青のビーズとともに、裁縫用の指貫きと薬莢が吊り下げられています。これを身に着けると病気やけがを治す力が備わるとされ、母から娘へ受け継がれてきたものです。
今回の展示では儀式やおまじないの用具など、祈りの世界に通じる品々もご紹介しています。そこには、北方の厳しい自然のなかで暮らす人びとが大切な拠り所としてきた精神世界の一端が垣間みられるようです。





こちらはグリーンランドに暮らすエスキモーの女性用衣服です。首・肩周りのビーズケープは、ビーズが西欧より流入してからつくられるようになったもの。アザラシ毛皮製のショートパンツ、アザラシ皮製のロングブーツを組み合わせた洗練された出立ちからは、手仕事の伝統とともに、新しい素材やスタイルを巧みに取り入れる鋭敏な感性もうかがわれます。こうした衣服は今日、お祭りの日などに民族衣装として着られるそうです。

次回はふたたび太平洋を渡って西へ、サハリンに暮らしてきた人びとの作品をご紹介します。(北海道立釧路芸術館/藤原乃里子)
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