kurogenkokuです。
431冊目は・・・。
憲法とは何か
長谷部恭男 著 岩波新書
憲法改正について大きく取り上げられていますが、結局のところ「何のために」「何を変えるのか」をしっかり学んでおかなければなりません。そういった面で本書は非常に参考になりました。
本書にはいたるところに「立憲主義」というキーワードが登場します。立憲主義は多様な考え方を抱く人々の公平な共存をはかるために、生活領域を公と私の二つに区分しようとします。著者はすべてこの立憲主義を基本として憲法改正について言及されています。
たとえば憲法九条の改正について。
自衛のための実力の保持を全面的に禁止する主張は、特定の価値観・世界観で公共空間を占拠しようとするものであり、日本国憲法を支えてあるはずの立憲主義と一致しないため、立憲主義と両立するように日本国憲法を理解しようとすれば、九条はこの問題について特定の答えを一義的に与えようとする準則としてではなく、特定の方向に答えを方向づけようとする原理にとどまるものとして受け取る必要がある。こうした方向づけは軍の存在から正統性を剥奪し、立憲主義が確立を目指す公共空間が軍によって脅かされないようにするという憲法制定権者の意図を示しており、そうである以上、九条を改変して軍の存在を明確化しようとする提案は、自衛のための実力の保持を認めるいう意味では不必要であるというのが著者の考え方です。
また先行して96条を改正しようという考え方については、日常的な政治過程を支える社会の基本原理を日常的な政治過程の手の届かないところに隔離するのが憲法の重要な役割であるため、特別多数決を必要としていると理解すべき。
特別多数決について、著者は①少数派の権利の保障のように、人々が偏見にとらわれるために単純多数決では誤った結論を下しがちな問題については、より決定の要件を加重することに意味があり、②憲法に定められた社会の基本原理を変更しようとするのであれば、変更するのが正しいという蓋然性が相当に高いことを要求するのは不当とは言えない、としています。
今後、憲法改正手続きが行なわれるかどうかわかりませんが、kurogenkokuは「投票は複数の論点を一括して行うのではなく、個別の論点ごとに行う。」という著者の提言は受け入れて欲しいと考えます。
【目次】
第1章 立憲主義の成立
第2章 冷戦の終結とリベラル・デモクラシーの勝利
第3章 立憲主義と民主主義
第4章 新しい権力分立?
第5章 憲法典の変化と憲法の変化
第6章 憲法改正の手続
終 章 国境はなぜあるのか
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