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KUROうさぎのコンサートを聴いて、時々歌って

コンサート鑑賞(主にオペラ)の備忘録としてその感想や自身の音楽趣味を中心に記載して行きます。

神奈川県立音楽堂「オルフェオ」は全てが揃って楽しめた

2025-02-25 13:39:29 | オペラ

 

鑑賞日:2025年2月23日(日)14:00開演
入場料:¥10,000(7列)

主催:神奈川県立音楽堂(指定管理者:(財)神奈川芸術文化財団)

開館70周年記念/音楽堂室内オペラ・プロジェクト第7弾
濱田芳通&アントネッロ
音楽寓話劇『オルフェオ』新制作
モンテヴェルディ作曲
プロローグと全5幕(イタリア語上演/日本語字幕付)
会場:神奈川県立音楽堂


<スタッフ>
指 揮 :濱田芳通
演 出 :中村敬一
装 置 :増田寿子
衣 裳 :今井沙織里(FGG)
照 明 :矢口雅敏(LOY)
音 響 :小野隆浩
映 像 :荒井雄貴(株式会社アライ音楽企画)
字 幕 :タナカ・ミオ
舞台監督:山中 舞(株式会社スタッフユニオン)
イラスト:やまだあいこ
宣伝美術:中島和哉
管弦楽 :アントネッロ


<出演>

オルフェオ     :坂下忠弘
エウリディーチェ  :岡﨑陽香
ムジカ/プロゼルピナ:中山美紀
メッサジェーラ   :彌勒忠史
スペランツァ/精霊 :中嶋俊晴
プルトーネ     :松井永太郎
ニンファ      :今野沙知恵
牧 人       :中嶋克彦
牧 人       :新田壮人
牧 人/精 霊   :田尻 健
牧 人       :川野貴之
カロンテ/精霊   :目黒知史
ニンファ      :田崎美香
牧 人/精 霊   :近野桂介
アポロ/精 霊   :酒井雄一


感想
 県立音楽堂の室内オペラは全て観ており、2022年ファビオ・ビオンディ「シッラ」、BCJによる「ジュリオ・チェーザレ」「リナルド」は素晴らしい公演だった印象があり、今回はアントネッロによるモンテヴェルディ「オルフェオ」公演とのことで、冬晴れの下、桜木町駅から紅葉坂を登って、神奈川県立音楽堂へ向かった。

 客席は文字通り満席。ホワイエでは井上道義マエストロの姿も。
 会員発売日に購入したので座席は中央7列目の通路側を確保。4列目まではオケピット使用で使われているので実質3列目のため、ピット内での演奏の状況もよく見える。

 神奈川県立音楽堂は木のホールで音響は素晴らしのだが、舞台裏、袖含め舞台が狭く、大掛かりな演出は不可能。
 舞台上には石造り風の大きな凱旋門のような門が中央に置かれ、その奥は3段程度の白い山台があるのみ。第3幕では船の帆先に。
 この門に場面に合わせ照明を使って色彩が変えられ、レーザー光で文字も描かれる。
 そして舞台奥一面に画像が表示され、トラキアの野、冥界が表現され、画像が動くことでよりリアルに見え、例えば第3幕の冥土の渡し船はまさに正面へ向かって進んで行くようで、物語の中に入って行けた。
 衣装も牧人、妖精、精霊で分けられ、しっかりメイキャップもされている。

 手の込んだ本格的な演出が出来たのも、兵庫県立芸術文化センター、神奈川県立音楽堂とアントネッロの共同プロジェクトのためでしょう。

 まずはアントネッロの古楽器の演奏が素晴らしい。指揮台正面にオルガン、右にチェンバロ。チェンバロ奏者は、ハープとの掛け持ちで両手で同時に弾いていた場面も。テオルボ、リコーダーも持ち替えが多く見られた。バンダの場面も直前で奏者が舞台裏に移動し演奏する手際の良さ。バロックファゴットの深い響きが場面を引き締める。そして指揮・濱田芳通はリコーダーの名手でもあり、ソロの場面では正面を向いて素晴らしい演奏を聞かせる。
 踊りの場面では、リズムを強調した演奏で指揮者が体一杯に動き、演奏者もリズムに合わせ体を動かす。そして客電を明るくし、客席も演者に合わせ手拍子をして、より楽しんで観ることが出来た。


 バロック・オペラと言うと一昔前は単調に歌うだけのものから、最近はダンスや動きをやたら入れる演出も流行ったが、今回は過度に動きすぎることなく、歌い方も歌詞に合わせた二アンスも入れて、字幕を見なくても物語が分かってくる演出だった。

 歌手は皆さん役にあった歌声でそれぞれの役を熱演。
 その中でメッサジェーラ役の彌勒忠史だけは特別でカウンターテナーながらホール中に響く大声量でエウリディーチェが毒蛇に噛まれ死んでしまった悲しみを演じ歌い上げる。

 一番良かったのは各場面での合唱で、歌手皆さんの歌声がバラン良く重なり美しく響き、モンテヴェルディが宗教曲、マドリガルの大家であることが認識できる演奏だった。


 交通事情で10分遅れで開幕し、プロローグ(序曲)から2幕までを第1部、25分の休憩を挟み3幕から5幕までを第2部として、2時間40分に収めた公演、カーテンコールは拍手が鳴り止まず4回ほど登場。客席はスタンディングオベーションも多く見られた。
 そして、天に登った竪琴が門の中央に表示される細かい演出まで加えられていた。

 公演全体の完成度が高く演奏者の熱量が伝わったのは、今回2/15・16兵庫県立芸術文化センター、2/22・23神奈川県立音楽堂の4回公演の千秋楽であったことも大きかったのでしょう。

 県立音楽堂来年度以降の予定は出ていないが、バロック・オペラにピッタリのホールで、ぜひ今後も質の高い室内オペラ、バロックオペラの公演を続けてほしい。

End


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