鑑賞日:2025年8月11日(月)14:00開演
入場料:5,940円(D席4階1列)
【主催】(財)新国立劇場
新国立劇2024/2025シーズン
<新制作 創作委嘱作品・世界初演>
オペラ「ナターシャ」
細川俊夫作曲
全1幕〈日本語、ドイツ語、ウクライナ語ほかによる多言語上演/日本語及び英語字幕付〉
会場:新国立劇場オペラパレス
スタッフ
台 本 :多和田葉子
作 曲 :細川俊夫
指 揮 :大野和士
演 出 :クリスティアン・レート
美 術 :クリスティアン・レート、ダニエル・ウンガー
衣 裳 :マッティ・ウルリッチ
照 明 :リック・フィッシャー
映 像 :クレメンス・ヴァルター
電子音響:有馬純寿
振 付 :キャサリン・ガラッソ
舞台監督:髙橋尚史
合唱指揮:冨平恭平
合 唱 :新国立劇場合唱団
管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団
出演
ナターシャ :イルゼ・エーレンス
アラト :山下裕賀
メフィストの孫:クリスティアン・ミードル
ポップ歌手A :森谷真理
ポップ歌手B :冨平安希子
ビジネスマンA:タン・ジュンボ
サクソフォーン奏者:大石将紀
エレキギター奏者:山田 岳
感想
新国立劇場の新制作・委託作品は新型コロナ感染症前の2021年8月「スーパーエンジェル」を子供向けとすると2020年11月「アルマゲドンの夢」になり、実に5年振り。事前に新国立HPの指揮者、作曲者、台本作者、歌手の動画で予習し、時折雨が降る中、新作を楽しみに初台まで出掛けた。
Webチケット販売は空きがあったが、客席はほぼ満席。
動画のアナウンス通り、指揮者が振り始めると直ぐに幕が上がり、暗い中に紗幕に波のような映像が映り、その奥に人々が横たわり、紗幕が上がって動き出し、難民のナターシャとアラトが登場。
二人はメフィストの孫に導かれ合計7つの地獄を巡る。
序章「海」「デュエット」
第1場 森林地獄
第2場 快楽地獄
第3場 洪水地獄
第4場 ビジネス地獄
第5場 沼地獄
第6場 炎上地獄
第7場 旱魃地獄
1幕7場になっているが、4場と5場の間に30分の休憩が入り2部構成、2時間40分の公演。
多くの場面は薄暗い中で、紗幕や移動する壁に映像が写っている中で人々がうごめき、その中にナターシャとアラトが歌っているのみ。第2場「快楽地獄」は真っ赤なドレスを着たポップス歌手と動く演台に乗ったエレキギターとサックス奏者が出て来て、第4場「ビジネス地獄」は舞台上の多数の四角い穴の中に仮面を付けたビジネスマン達がPCをひたすらタイプしている場面で面白かったが、最後第7場「旱魃地獄」での解決を期待したが、ほぼ同じ基調で終わってしまった。
音楽は、波の音や風の音、人の声をPAを使って流れる中にオケや合唱の音が加わる。現代音楽で無調性だが不快や不気味に感じる所はなく、PAの音に合わせるため大音量の演奏も少なく、淡々と流れていく印象。エレキギターも迫力なし。
歌詞はナターシャがドイツ語、アラトが日本語、メフィストの孫やその他出演者、合唱は、ウクライナ語ほかによる多言語らしい。主役の歌手は、皆さん明確な歌声で、特にアラト約の山下裕賀は明確に響く中域が良かった。
舞台は暗く抽象的で、音楽も環境音との組み合わせで抑揚が少ないため、オペラのストーリーを理解するには字幕を読み取るしかない状況であり、客席左右の女性はほとんど夢の中だった。
地獄巡るならメフィストが登場し過去を巡る「ホフマン物語」のような物語を想像したが、セリフ中心の心理劇をそのままオペラにしたように感じ、その心理描写も言葉だけで感情移入が出来ない。男性アラトをズボン役にしたことで、恋愛観やエロチシズムも感じられない。
日本人的侘び寂びの世界観でフランス辺りでは受けそうだが、わざわざオペラとして上演する意味があるのだろうか?と思ってしまった公演だった。
End