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KUROうさぎのコンサートを聴いて、時々歌って

コンサート鑑賞(主にオペラ)の備忘録としてその感想や自身の音楽趣味を中心に記載して行きます。

新国立「ナターシャ」はあっさり目の地獄めぐりで

2025-08-13 09:47:23 | オペラ


鑑賞日:2025年8月11日(月)14:00開演
入場料:5,940円(D席4階1列)

【主催】(財)新国立劇場

新国立劇2024/2025シーズン
<新制作 創作委嘱作品・世界初演>
オペラ「ナターシャ」
細川俊夫作曲
全1幕〈日本語、ドイツ語、ウクライナ語ほかによる多言語上演/日本語及び英語字幕付〉
会場:新国立劇場オペラパレス

スタッフ
台 本 :多和田葉子
作 曲 :細川俊夫
指 揮 :大野和士
演 出 :クリスティアン・レート
美 術 :クリスティアン・レート、ダニエル・ウンガー
衣 裳 :マッティ・ウルリッチ
照 明 :リック・フィッシャー
映 像 :クレメンス・ヴァルター  
電子音響:有馬純寿
振 付 :キャサリン・ガラッソ  
舞台監督:髙橋尚史
合唱指揮:冨平恭平
合 唱 :新国立劇場合唱団
管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団


出演
ナターシャ  :イルゼ・エーレンス
アラト    :山下裕賀
メフィストの孫:クリスティアン・ミードル
ポップ歌手A :森谷真理
ポップ歌手B :冨平安希子
ビジネスマンA:タン・ジュンボ
サクソフォーン奏者:大石将紀
エレキギター奏者:山田 岳


感想
 新国立劇場の新制作・委託作品は新型コロナ感染症前の2021年8月「スーパーエンジェル」を子供向けとすると2020年11月「アルマゲドンの夢」になり、実に5年振り。事前に新国立HPの指揮者、作曲者、台本作者、歌手の動画で予習し、時折雨が降る中、新作を楽しみに初台まで出掛けた。

 Webチケット販売は空きがあったが、客席はほぼ満席。

 動画のアナウンス通り、指揮者が振り始めると直ぐに幕が上がり、暗い中に紗幕に波のような映像が映り、その奥に人々が横たわり、紗幕が上がって動き出し、難民のナターシャとアラトが登場。
 二人はメフィストの孫に導かれ合計7つの地獄を巡る。

序章「海」「デュエット」
第1場 森林地獄
第2場 快楽地獄
第3場 洪水地獄
第4場 ビジネス地獄
第5場 沼地獄
第6場 炎上地獄
第7場 旱魃地獄

 1幕7場になっているが、4場と5場の間に30分の休憩が入り2部構成、2時間40分の公演。
 多くの場面は薄暗い中で、紗幕や移動する壁に映像が写っている中で人々がうごめき、その中にナターシャとアラトが歌っているのみ。第2場「快楽地獄」は真っ赤なドレスを着たポップス歌手と動く演台に乗ったエレキギターとサックス奏者が出て来て、第4場「ビジネス地獄」は舞台上の多数の四角い穴の中に仮面を付けたビジネスマン達がPCをひたすらタイプしている場面で面白かったが、最後第7場「旱魃地獄」での解決を期待したが、ほぼ同じ基調で終わってしまった。

 音楽は、波の音や風の音、人の声をPAを使って流れる中にオケや合唱の音が加わる。現代音楽で無調性だが不快や不気味に感じる所はなく、PAの音に合わせるため大音量の演奏も少なく、淡々と流れていく印象。エレキギターも迫力なし。
 歌詞はナターシャがドイツ語、アラトが日本語、メフィストの孫やその他出演者、合唱は、ウクライナ語ほかによる多言語らしい。主役の歌手は、皆さん明確な歌声で、特にアラト約の山下裕賀は明確に響く中域が良かった。
 舞台は暗く抽象的で、音楽も環境音との組み合わせで抑揚が少ないため、オペラのストーリーを理解するには字幕を読み取るしかない状況であり、客席左右の女性はほとんど夢の中だった。

 地獄巡るならメフィストが登場し過去を巡る「ホフマン物語」のような物語を想像したが、セリフ中心の心理劇をそのままオペラにしたように感じ、その心理描写も言葉だけで感情移入が出来ない。男性アラトをズボン役にしたことで、恋愛観やエロチシズムも感じられない。
 日本人的侘び寂びの世界観でフランス辺りでは受けそうだが、わざわざオペラとして上演する意味があるのだろうか?と思ってしまった公演だった。

End
 

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新国立「せリビアの理髪師」は歌手、演出が揃って楽しめた

2025-06-02 19:53:40 | オペラ


鑑賞日:2025年5月25日(日)14:00開演
入場料:5,940円(D席4階3列)


【主催】(財)新国立劇場

新国立劇2024/2025シーズン
オペラ「セビリアの理髪師」
ロッシーニ作曲
全3幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉
会場:新国立劇場オペラパレス


スタッフ
指 揮 :コッラード・ロヴァーリス
演 出 :ヨーゼフ・E.ケップリンガー
美術・衣裳:ハイドルン・シュメルツァー
照 明 :八木麻紀
再演演出:上原真希
舞台監督:CIBITA 斉藤美穂
合唱指揮:水戸博之
合 唱 :新国立劇場合唱団
管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団


出演
アルマヴィーヴァ伯爵:ローレンス・ブラウンリー
ロジーナ   :脇園 彩
バルトロ   :ジュリオ・マストロトータロ
フィガロ   :ロベルト・デ・カンディア
ドン・バジリオ:妻屋秀和
ベルタ    :加納悦子
フィオレッロ :高橋正尚
隊 長    :秋本 健
アンブロージオ:古川和彦


感想
 新国立劇場は昨年末の「ウィリアム・テル」以来の訪問。本演出は2005年プレミエで既に5回公演されており、2020年公演もチケット購入したが所要で行かれず縁がなかったが、今回ようやく脇園彩のロジーナを楽しみに雨模様の下、初台まで出掛けた。

 客席は満席で演目、出演歌手の影響か女性が多い。

 序曲の間に幕が上がり、夜明け前の街の広場に娼婦ほか人々が行き交う。
 中央の建物が周り、そのままバルトロの屋敷の内部に。
 屋敷内部は中央が階段で左右2階の部屋が設けられ、各部屋の1階、2階の間にも周り階段が設けられている。

 全部屋が客席から見えているので、歌手は歌わない場面でも各部屋で演技を続けている。

 歌手は皆さん良く、特にバリトロ役マストロトータロ、フィガロ役カンディアでお得意の役で安定した歌声、演技で良かった。
 一番良かったのはロジーナ役の脇園彩で、4つの部屋を走り回りながらお転婆でハツラツとしたロジーナを歌い上げた。バルトロのアリアの場面では、部屋でシャドーボクシングの様なダンスまで。また伯爵に裏切られたと気付いたレチタティーヴォは、地声の様な発声ではっとさせられた。

 1幕、2幕のフィナーレはロッシーニ・クレッシェンドで、オペラ・ブッファの音楽を楽しむことが出来た公演だった。

 脇園彩は新国立劇場来シーズンの「ウェルテル」シャルロット役が決まっており、今から楽しみに。


End

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MET-LV「フィデリオ」はノーマル演出で歌手が素晴らしく

2025-05-04 17:50:29 | オペラ


鑑賞日:2025年4月28日(月)12:00開演
入場料:3,700円(シアター8/H列)
会 場:109シネマズ湘南

【配給】松竹株式会社

METライブビューイング2024-2025
オペラ「フィデリオ」
ベートーヴェン作曲
全2幕(ドイツ語上演/日本語字幕付)
MET上演日:2025/3/15


指 揮:スザンナ・マルッキ
演 出:ユルゲン・フリム
管弦楽:メトロポリタン歌劇場
合 唱:メトロポリタン歌劇場合唱団

出演:
レオノーレ/フィデリオ:リーゼ・ダーヴィドセン
フロレスタン :デイヴィッド・バット・フィリップ
ロッコ    :ルネ・パーペ
マルツェリーネ:イン・ファン
ジャキーノ  :マグヌス・ディートリヒ
ドン・ピツァロ:トマシュ・コニエチュニ
ドン・フェルナンド:スティーヴン・ミリング


感想:
 都合が付いたので2年振りにMETライブビューイングを観に辻堂・テラスモール湘南へ出掛けた。
 開演前のランチに名物生しらす丼を食べようとしたが、不漁で未入荷とのことで釜揚げしらす丼を選択。
 それなりに美味しかったが、今年はしらすの不漁が続いているらしい。取り過ぎか?

 入口でパンフレットを購入しようとしたが、2024-2025シーズン日本語版は発行されていないとのこと。

 客席数75席のキャパだが平日の割に半数以上は入っていた。

 本演出は2000年プレミエとのことで、原作通りにオーソドックスで最後まで安心して観ることが出来た。

 オーケストラは、テンポでどんどん進んで行く演奏。
 歌手は、タイトルロールのリーゼ・ダーヴィドセンが正確な音程と場面に合せた歌声で素晴らしかった。
 そしてロッコ役ルネ・パーペも同役を何度も歌っているらしく、安定した歌声と演技でよかった。
 残りの歌手や合唱もさすがMETでした。

 所長ドン・ピツァロの悪役独裁者の描き方にウクライナやガザ地区戦争を思い起こされ、トランプ大統領にも見えて来てた。最後に銅像の馬に乗せられ絞首刑にする所も追加された演出か。
 世界情勢や政治体制に反対的な演出が出来るのも、METが公的補助金頼りでない運営を維持しているためでしょう。
 

 余裕のある映画館の座席もあり、料金分は十分に楽しめた公演だった。

End

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フェリス「蝶々夫人」は無料なのに十分楽しめた

2025-03-09 18:30:41 | オペラ

鑑賞日:2025年3月8日(土)16:00開演
入場料:無料

フェリス女学院大学PAオペラ
オペラ「蝶々夫人」
プッチーニ作曲
全3幕(イタリア語上演/日本語字幕付)
会場:フェリスホール


<スタッフ>
指 揮:星野 聡
管弦楽:グランベーネ管弦楽団
合 唱:グランベーネ合唱団


<出演>
蝶々夫人  :中田みのり、世古友里奈
スズキ   :廣田優芽
ケイト   :角田彩莉
ピンカートン:小野弘晴
シャープレス:岩田健志
ゴロー   :阿部修二
ヤマドリ、ホンゾー、神官:松井永太郎
子供    :山本彩矢

 

感想
 フェリスの学生さんのオペラ公演があるとのことで、みぞれが振り始めた冬空の下、JR石川町から西野坂の長い急階段を登って、フェリスホールへ向かった。開場15:30前には既に30人程の列ができ、開演には100人程の1階席は満席、2階に20人程の観客となっていた。

 正面の舞台上には、白い屏風が2組と灯籠があるのみ。照明とスポットで場面が変わっていく。
 ホールのスペースの関係でオケは舞台下上手に広がって、中央から下手側が客席にっている。

 第1幕は1階席のオケ側に座ったため、歌手とのバランス悪く聞きづらかったため、2幕以降は2階席へ。舞台は見づらくなったが、下手側だったのでオケとの距離が取れて、バランスよく聞くことが出来た。2階席正面はパイプオルガンがあるため、客席がないのが残念。

 歌手は、蝶々夫人、スズキ、ケイト役が学生さんで、男声は全てプロ歌手の方々。安定した歌声と演技が加えられ、舞台上の壁に表示された訳詞で、十分にオペラの内容が伝わってくる。子供の演技も良かった。
 学生さんも美しい歌声で、高音も十分に届いており、「ある晴れた日に」含め素晴らしかった。

 そしてオーケストラの演奏が素晴らしい。ハープがキーボードに変わったり、トロンボーンが1本だったりと少ない楽器もあったが、基本全ての楽器が揃って、きびきびとした演奏でプッチーニの音楽を表現していた。

 幕間に15分の休憩が2回入り、約3時間弱。無料にかかわらず「蝶々夫人」の音楽を楽しむことが出来た公演だった。


End

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神奈川県立音楽堂「オルフェオ」は全てが揃って楽しめた

2025-02-25 13:39:29 | オペラ

 

鑑賞日:2025年2月23日(日)14:00開演
入場料:¥10,000(7列)

主催:神奈川県立音楽堂(指定管理者:(財)神奈川芸術文化財団)

開館70周年記念/音楽堂室内オペラ・プロジェクト第7弾
濱田芳通&アントネッロ
音楽寓話劇『オルフェオ』新制作
モンテヴェルディ作曲
プロローグと全5幕(イタリア語上演/日本語字幕付)
会場:神奈川県立音楽堂


<スタッフ>
指 揮 :濱田芳通
演 出 :中村敬一
装 置 :増田寿子
衣 裳 :今井沙織里(FGG)
照 明 :矢口雅敏(LOY)
音 響 :小野隆浩
映 像 :荒井雄貴(株式会社アライ音楽企画)
字 幕 :タナカ・ミオ
舞台監督:山中 舞(株式会社スタッフユニオン)
イラスト:やまだあいこ
宣伝美術:中島和哉
管弦楽 :アントネッロ


<出演>

オルフェオ     :坂下忠弘
エウリディーチェ  :岡﨑陽香
ムジカ/プロゼルピナ:中山美紀
メッサジェーラ   :彌勒忠史
スペランツァ/精霊 :中嶋俊晴
プルトーネ     :松井永太郎
ニンファ      :今野沙知恵
牧 人       :中嶋克彦
牧 人       :新田壮人
牧 人/精 霊   :田尻 健
牧 人       :川野貴之
カロンテ/精霊   :目黒知史
ニンファ      :田崎美香
牧 人/精 霊   :近野桂介
アポロ/精 霊   :酒井雄一


感想
 県立音楽堂の室内オペラは全て観ており、2022年ファビオ・ビオンディ「シッラ」、BCJによる「ジュリオ・チェーザレ」「リナルド」は素晴らしい公演だった印象があり、今回はアントネッロによるモンテヴェルディ「オルフェオ」公演とのことで、冬晴れの下、桜木町駅から紅葉坂を登って、神奈川県立音楽堂へ向かった。

 客席は文字通り満席。ホワイエでは井上道義マエストロの姿も。
 会員発売日に購入したので座席は中央7列目の通路側を確保。4列目まではオケピット使用で使われているので実質3列目のため、ピット内での演奏の状況もよく見える。

 神奈川県立音楽堂は木のホールで音響は素晴らしのだが、舞台裏、袖含め舞台が狭く、大掛かりな演出は不可能。
 舞台上には石造り風の大きな凱旋門のような門が中央に置かれ、その奥は3段程度の白い山台があるのみ。第3幕では船の帆先に。
 この門に場面に合わせ照明を使って色彩が変えられ、レーザー光で文字も描かれる。
 そして舞台奥一面に画像が表示され、トラキアの野、冥界が表現され、画像が動くことでよりリアルに見え、例えば第3幕の冥土の渡し船はまさに正面へ向かって進んで行くようで、物語の中に入って行けた。
 衣装も牧人、妖精、精霊で分けられ、しっかりメイキャップもされている。

 手の込んだ本格的な演出が出来たのも、兵庫県立芸術文化センター、神奈川県立音楽堂とアントネッロの共同プロジェクトのためでしょう。

 まずはアントネッロの古楽器の演奏が素晴らしい。指揮台正面にオルガン、右にチェンバロ。チェンバロ奏者は、ハープとの掛け持ちで両手で同時に弾いていた場面も。テオルボ、リコーダーも持ち替えが多く見られた。バンダの場面も直前で奏者が舞台裏に移動し演奏する手際の良さ。バロックファゴットの深い響きが場面を引き締める。そして指揮・濱田芳通はリコーダーの名手でもあり、ソロの場面では正面を向いて素晴らしい演奏を聞かせる。
 踊りの場面では、リズムを強調した演奏で指揮者が体一杯に動き、演奏者もリズムに合わせ体を動かす。そして客電を明るくし、客席も演者に合わせ手拍子をして、より楽しんで観ることが出来た。


 バロック・オペラと言うと一昔前は単調に歌うだけのものから、最近はダンスや動きをやたら入れる演出も流行ったが、今回は過度に動きすぎることなく、歌い方も歌詞に合わせた二アンスも入れて、字幕を見なくても物語が分かってくる演出だった。

 歌手は皆さん役にあった歌声でそれぞれの役を熱演。
 その中でメッサジェーラ役の彌勒忠史だけは特別でカウンターテナーながらホール中に響く大声量でエウリディーチェが毒蛇に噛まれ死んでしまった悲しみを演じ歌い上げる。

 一番良かったのは各場面での合唱で、歌手皆さんの歌声がバラン良く重なり美しく響き、モンテヴェルディが宗教曲、マドリガルの大家であることが認識できる演奏だった。


 交通事情で10分遅れで開幕し、プロローグ(序曲)から2幕までを第1部、25分の休憩を挟み3幕から5幕までを第2部として、2時間40分に収めた公演、カーテンコールは拍手が鳴り止まず4回ほど登場。客席はスタンディングオベーションも多く見られた。
 そして、天に登った竪琴が門の中央に表示される細かい演出まで加えられていた。

 公演全体の完成度が高く演奏者の熱量が伝わったのは、今回2/15・16兵庫県立芸術文化センター、2/22・23神奈川県立音楽堂の4回公演の千秋楽であったことも大きかったのでしょう。

 県立音楽堂来年度以降の予定は出ていないが、バロック・オペラにピッタリのホールで、ぜひ今後も質の高い室内オペラ、バロックオペラの公演を続けてほしい。

End

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