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それは完璧なショーだった

2014-04-27 20:19:56 | 日記
 土曜日の夜に、大学時代の友人に誘われて、男三人で、ストリップショーを観に行った。横浜は日ノ出町駅から歩いて2,3分の場所に位置する「浜劇」、有名なストリップ劇場、「浅草ロック座」の系列店で、2000年創業、約14年間のあいだ営業をしているらしい。
 店の入り口までくると、オーナーと思われる男性が対応をしてくれる。年齢は40代後半から50代前半にみえた。短く刈り上げた堅そうな髪は染髪をしており、メガネをかけた顔は強面だったのだけど、どこか面倒見のよさそうな雰囲気もある。実際に、僕らが初めて来る客であることを認めると、店のシステムについて丁寧に説明をしてくれた。料金は3千円ぽっきりであること、21時からは缶ビール飲み放題のサービスがあること、携帯や撮影機材は場内では使用厳禁であること、初めて行くストリップショーに対する不安や緊張というものが緩和された。
 建物の中に入ると小さなロビーがあり、さらに防音扉をあけたところに、劇場がある。ちょうど映画館のような構造だろうか。だから、劇場も映画館のように客席に対して水平になるようにお立ち台であるステージがあるのだと想像していたのだけど、様相はかなり異なるものだった。円形だった。入口から正面に見えるステージから中央にせり出すように円形のお立ち台があり、客席はお立ち台を取り囲むように並んでいる。
 劇場に座り、照明が降り、ショーが始まる。すぐに思ったのは、ストリップに対して漠然と持っていたいやらしいというようなイメージや、下卑た雰囲気が、あまり感じられないということだった。何かに疲れてしまった人たちが行き場を求めるように劇場に通い、溜息をつきながら女の子を眺めているというような、そういうムードを想像していたのだけど、音楽と共に踊り子が登場すると、客は手拍子で盛り上げ、中にはかなり器用な手つきで、タンバリンを叩いている男性もいて、凄く前向きなエネルギーに溢れた場であった。まるでアイドルのライブのように。音楽と共に踊り子が服を脱いでいき、ポーズが決まるときには、歓声と共に拍手が巻き起こる。みんなこそこそとしていないで、堂々と、ショーによって生まれる一体感を楽しんでいるように見えた。
 それは完璧なショーだった。照明が落ち音楽が切り替わると共に衣装もチェンジするので、同じ踊り子をみているのに、飽きるということがなかった。ある時はラピュタのテーマソングに合わせて、少女のような輪郭が曖昧な服装で柔らかい動きをするかと思えば、ハットを被り、ボディラインの際立つスーツを身に着け、マイケルジャクソンのように踊る。ステージが進み、徐々に服を脱いでいくと、汗ばむ身体に、極彩色のスポットライトが妖しく反射をしていて艶めかしい。しかし、あまり性的な意味でいやらしい感じはしなかった。それは、おそらく踊り子の動きは、単にいやらしさを見せつけるという目的ではなくて、自分の身体の美しいところを最も美しい形で魅せるという目的のもと計算されているからだと思う。かなりの努力の上に成り立っていることが伝わってくるからか、観客の眼差しも真剣でいて見守るような優しさがあった。気付いたら3時間もの時間が経ち、終演の23時になっていた。完璧なショーというものは得てして時間を忘れさせる。
 
 
 

ブラジル女のショーパブで

2014-04-13 22:34:24 | 日記
 誕生日である4月3日の前日である4月2日のことであったが、父親から電話があった。大体、夜の9時をまわろうかという時分の頃で、その時は、もう仕事が終わって家でくつろいでいた。父親は、電話で、僕に一緒に飲みに行こうと誘ってきたのだった。僕はその時はもう風呂にも入っていて、夜も遅い時間だし、出かけるのがかなり億劫に思っていたが、なにしろ誕生日の前日だったので、父親が誕生日を祝う為にわざわざ誘って来てくれてるのだと思うと、父親の誘いをむげに断るのも気が引けるような思いだった。いいよ、場所はどこなのかな?と尋ねると、今は仕事で付き合いのある人と渋谷で飲んでいて、次はお前の住んでいる所の近くの店で飲むことになった、だいたい10時頃になると思う、そこに来てくれ、という答えが返ってきたのだった。
 僕は寝間着から再びスーツに着替えると、指定された店に向かった。大体、歩いて15分くらいの距離だった。その店は繁華街の中にある「ようこそブラジルへ」という看板を掲げた、ブラジル系の女性ダンサーが在籍するいわゆるショーパブであった。ほどなくして父親と連れ合いの男性サラリーマンが到着した。父親は電話越しの会話からある程度、予想はしていたのだが、かなり酔っぱらっているようだった。
 ショーパブには入ったことがなくて、戸惑う僕を尻目に、父親はずんずんと店の中に歩みを進めていく、レジにいる店主と思われる男性と親しげに会話を交わしている、かなりの常連であるらしいことがすぐに分かった。
 席につくと、ダンサーの女性が二人、僕らの間に入るように座る。タバコを吸おうと口にはさむと、すぐに女性がライターで火をつけてくれる…そういうタイプの店だ。父親は店のダンサーの女性とも親しいらしく、彼女らと軽い会話を交わしているのを僕に見せるのが、かなり得意そうだった。恐らく、僕を誘った時から、この話をしてみんなを驚かせてやろうと、酔った頭で考えてあたためていたのだろうが、席に座る女性たちに、今日は俺の息子を連れてきたんだ!と僕のことを紹介する。彼女たちは、笑いながら、嘘をつくんじゃない、全然似ていないじゃないか(僕は母親似なのである)、と父親に軽口を叩いていて、父親はそういう意味のないやり取りを女の子とするのが、とても楽しそうだった。
 もう僕は、誕生日に親からプレゼントを貰うことが一年の中での一大行事であるような幼年期を過ぎ去ってから久しいが、父親が中々、僕の誕生日について言及をしないので、もしかして父親は僕を誕生日だから呼んだのではなくて、店の女の子に息子を連れてきたという話をして驚かせる為だけに呼んだんじゃないのか、という疑惑が浮かび上がってきた。我慢できなくなって、自分の誕生日のことを話すと、やはり父親は僕の誕生日が4月3日であることなど忘れていたのだった。えー誕生日だから呼んだのだと勘違いしてた!と話すと、一同は笑いこけていたが、流石に父親は少しキマリが悪そうにみえた。自分がしてしまったミスを必死で挽回しようと店に入る時に親しげに話していた店主と思われる男性に、ケーキを買ってきてくれ、と頼み込んでいた。店主と思われる男性は、面倒くさそうにしてたが、しばらくすると、コンビニで買ったケーキが運ばれてきた。間に合わせのケーキに、予定されていなかったハッピーバースデーソングの大合唱、店の中は盛り上がったが、ケーキを食べるなんてことも一緒に席に座った一同は計算に入れず飲み食いをして腹を満たしていたので、ケーキはほぼ手つかずのままだった。それはしょうがないと思った。
 父親は10年間この店に通っているらしい。父親は家では酒も飲まないし、ただ座ってボーっとテレビを見ているだけのことが多く、あまり楽しそうな姿は見た事がなかった。ショーパブでの父親はダンサーの女の子とかなり際どい下品な会話などもしていて、威厳というものを全く感じさせなかったが、なにより父親は楽しそうだった。誕生日を祝ってもらったことよりも、内容はどうであれ心から楽しそうにしている父親をはじめて見られたことの方が、自分にとってうれしくもあり、特別でもある日だったのかもしれない。

人民広場の嘘の劇

2014-03-31 19:41:07 | 日記
エイプリルフールが近づいているせいか、自分が騙された経験について考えていて、大学時代の最後の春休みに行った上海旅行のことを思い出した。上海旅行で、僕はまんまと詐欺に引っかかり、当時の為替レートにして7千円ほどのお金を無為に払う羽目になったことがあるのである。そのときはお茶を飲まされたのであったが、見事に一杯喰わされたのだ。

その集団とは泊まっていた宿の近くにある人民広場をうろついている時に出会った。人民広場は上海の中心街に佇む緑あり噴水ありの都会のオアシスのような場所、多くの人が集まる。一緒に旅行していた友人とあてもなく歩いている時に、中国人に英語で、「僕たちの写真を撮ってくれませんか?」と話しかけられたのである。男一人に女二人のグループだった。見た目は若い。茶色に染髪をしている者もいた。年は自分たちと同じくらいに見えた。
写真を撮り終え、カメラを返す時に、ごく自然な流れで僕たちに話かけてきた。年はいくつ?どこから来たの?あ、日本から来たんだ、俺も名古屋に友達が一人いるよ。彼女はいるのかな?俺は日本人の彼女、作ったことあるぜ!日本のアニメ、面白いよねぇ。大学生なんだ、俺たちも北京から上海に旅行しているところなのさ…英語はほとんど話せないが、軽いコミュニケーション程度なら、とることができる。異文化交流の甘い罠とでもいうべきか、すっかりと、彼らと話すことに夢中になってきていて、意気投合してしまった。なので、彼らが良い店を知っているからお茶を一緒に飲みに行こうと誘ってきた時も、その時は何も予定がなかったし、彼らともっと一緒にいたかったので、快く承諾をしてしまった。
道中も拙い異文化交流は続けられていた。人民広場で中心になって話していたのはメンバーでただ一人いる男であったが、道中では女と話していた。彼女は英語のみならず、日本語もしゃべることができるのである。私、日本語勉強してるよ、アナタかっこいいね、というようなことを言ってくる。自慢じゃないが、かっこいいなんて言葉をかけられたことはほとんどないので、この時は、この女、怪しいんじゃないか、なんて考えも浮かんだのだが、いや、太っている人がモテる国があるなんて話も聞いたことがあるし、美の価値観は国によって違うので、この女はマジになって言っているに違いない、とかなり強引な自己正当化をすることで気持ちを平常心に持っていった。いまになって振り返ると恥ずかしい。
茶店に着いた時には、流石にヤバいことに巻き込まれているんじゃないかという疑惑が頭に浮かんでいた。その茶店は人気のない裏通りにある、こじんまりとした店で、30代前半くらいの若い女が一人で切り盛りしていた。どうして北京から来たと言っている旅行者がこんな店を知っている?しかし、お茶を飲もうと約束してしまった以上、ここまで来たら引き返すわけには、いかないことも分かっていた。結局、そのまま彼らと2、3杯の、どう考えても安物としか思えないお茶を飲み、日本円にして7000円程度の金を店に払うことになったのだ。茶店の女主人と若者三人組はグルだったのである。

自分が騙された体験を書くのは恥ずかしいことであるが、いま思い返すと、なかなか手の込んだ詐欺というか、あざやかとでも言える手口だったと思う。
社会心理学者であるロバート・B・チャルディーニが著した「影響力の武器」という本によると、人間は、一度自分がとる態度を示してしまうと、それが不利になると分かっていても、一貫してその態度を取りつづけてしまうという習性があるらしい。つまり人民広場で、彼らの誘いに対してyesと言ってしまった時点で、片がついていたのだ。怪しい茶店ではあると警戒したが、一度自分の態度を示した以上、「あ、悪いちょっと急な用事思い出したんで、俺はここで、じゃ」なんて言って逃げるのは、確かにキマりが悪い。
この詐欺はこのyesを引き出す為に、考え練られた犯罪だった。トリックが何重にも用意されたインテリ犯罪、劇を見ているような気分にさえなる。写真を撮ってくれ、というごく自然な流れから発生する会話。異文化交流をしたいという海外旅行客の欲につけこんだ、軽いコミュニケーション。安心を誘う男女という組み合わせ。普通の見た目をした若者の起用。茶店の目の前で客引きをして茶を飲ませようとせず、見るからに怪しげな茶店というネック・ポイントを舞台の奥に隠して、進行させていく話の構造…
ちなみに人民広場で行われる茶店詐欺は、流行している手口であるらしく、インターネットで検索をすると、かなりの数の被害の声がヒットする。しかし、それぞれの被害レポートを読んでいると、被害にあった茶店の場所はまちまちであり、最初に声をかけてくる若者のグループも何組もいることが分かる。単に誰かが考えた結果広まって、流行している手口なのだろうか、それともいわゆる元締めみたいな組織があるのだろうか、謎である。

伊香保温泉旅行

2014-03-23 22:04:09 | 日記
3/21から3/22にかけて伊香保の温泉街方面に旅行をしてきたので、そのことを写真を交えてざっくりと。

〇珍宝館



伊香保温泉街のすぐ近くにある秘宝館。秘宝館とはいわゆる下系の工芸品や資料などを集めた博物館とも言うべき場所か。その他の秘宝館は熱海にあるものしか行ったことがない。あまり覚えていないが、熱海の秘宝館は、映像が楽しめたり、スイッチを押すと反応して動く装置的なものが多かった。博物館というよりは、作られたテーマパークといったものに近いのかもしれない。対して、珍宝館にはそういった機械仕掛けの装置は一切なく、コレクションを集めて展示したという、上に書いた博物館の定義に沿った場所であったと思う。



珍宝館の名物館長のチン子さん。中に入ると、展示してある品について解説をしてくれる。メディアにも多数取り上げられたことのある名解説で有名。youtubeなどで「珍宝館」で検索をすると、彼女の解説動画がいくつか見られる。詳しい内容は動画を見てほしい。表情を一切崩さずに、淡々と下系の単語を交えて解説する。マジなのだろうか。



展示されている木製人形。作者の人は元々は剥製作りなどを趣味にしていたらしいが、80歳になる頃に珍宝館に行き、インスピレーションを受け、亡くなるまでの数年を展示されているような木製人形を作る事に費やしたらしい。狂気を感じる。

〇ホテル富久住

伊香保温泉街にある唯一のビジネスホテル。値段の提示はされていなくて、受付をする時に女将が「えーと、一泊5千円でいいかしら?」と聞いてきた。言い値なのだろうか。
他の旅館はどこに電話をかけても満室の一声で切られて、観光所の人に相談をすると「三連休初日だから今日はどこも一杯ですよ、空いてる旅館はないです。あ、でもホテル富久住なら可能性がありますね」という答えが返ってくる。確かに、客はほとんどいなかった。泊まれなくなる日が近いかもしれない。

〇ジャパンスネークセンター



伊香保から30分ほど車を走らせたところに位置する、主に蛇類を展示する動物園。





活気はほとんどなくて、半分廃墟と化している。



この期間以外の時はあまり動いていないのだろうか。ダーナちゃんが心配になる。



蛇を展示するはずの温室では、なぜか恐竜の模型が置いてあったりする。子供うけを狙っているのかもしれない。



大蛇。

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泊まる場所や途中で寄る場所もあまり決めずに旅行をしてきましたが、こういう旅行もたまにはいいものだと思いました。

本業のかたわらは、鼻持ちならない

2014-03-09 21:18:27 | 日記
 大学時代の友人たちと飲んでいて、プロフィールに「本業のかたわら」という文面を載せるのは鼻持ちならない、という話題が出た。そのとき飲んでいた店は、祐天寺にあるもつ焼の名店、「ばん」というところだった。自分が持っている「東京居酒屋名店三昧」という本にも「ばん」は掲載されており、各種メディアで取り上げられることも多いのだろう、店内の壁には「ばん」を取り上げた雑誌の記事や新聞の切り抜きが所せましと貼られている。友人の一人が、その中にあった太田和彦が書いた「ばん」に対するコラムを読み、彼のプロフィール欄の「グラフィックデザイナー。東北芸術工科大学教授。本業のかたわら居酒屋の著作多数」という文面を見て「本業のかたわらというのは、鼻持ちならないねぇ」と言ったのだった。



 居酒屋関連の雑誌を読むと、太田和彦の名前を見かける事も多く、「素性は良く分からないが居酒屋関連の文章を良く書いている人」、ということは知っていたが、それが「グラフィックデザイナー、大学教授という本業のかたわら」で行っていることだとはこの時にはじめて知った。かくして自分の太田和彦に対する認識は「良く分からないけど居酒屋の文章を書いて金を稼いでる人」から、本業の仕事を持っているが、居酒屋について書くコラムが人気がありメディアに寄稿を求められる人物というものに転じていった。太田和彦の文章は、隣に貼られている、良く分からない素性だが有名居酒屋ブロガーだと思われる人がブログに載せている文章よりも、客観的にみて語彙が豊富だ。料理の味がどうであるとか、そういった論評だけにとどまらず、店主や他の常連客との何気ない会話などを盛り込み、うまく言えないが、「ばん」という居酒屋にある"情"が伝わってくる。名文だ。しかし、確かに「本業のかたわら」というのは鼻持ちならないような気もする。
 もちろん記事の編集者がこのプロフィールの文面を書いたのだとは思うが、「本業のかたわら」と言われると、どうしても「本業に、集中しろよ」と考えずにはいられない。太田和彦は恐らくこういう人ではないが、「本業はまぁ、グラフィックデザイナーやってるんですけど、居酒屋の文章を書いていたら人気が出ちゃって、メディアとかから、けっこう依頼が来るっていうか、そんな感じの人です、俺は」みたいなちゃらちゃらした印象が、プロフィールにさりげなく「本業のかたわら」と載せられると、どうしても頭に浮かんできてしまう。
 とはいえ、さりげなく公表するのではなくて、自身の本業がグラフィックデザイナーであることを、堂々と居酒屋コラムの中に盛り込むことも、なかなか難しいような気もする。「…ばんの名物、トンビ豆腐とは「豚尾」、豚のテールを汁たっぷりに、葱、セロリ、赤唐辛子で超激辛に煮込み、豆腐を入れたもの。出てきただけで辛さが目にツーンとくる、味に関しての説明は、俺はグラフィックデザイナーが本業だからそこのところはちょっと。ところでグラフィックデザイナーの多くは他者の作品を鑑賞する場合と、自らが作品を創作する場合ではそれぞれ違う"目"の使い方をしている。…」ばんの名物であるトンビ豆腐の説明をしている筈が、よく分からないうちに意味不明な「目」の話になっていってしまう。記事のタイトルは「居酒屋コラム 太田和彦の『本業はグラフィックデザイナーだけれども』」。さりげなく「本業のかたわら」と公表されるのも嫌だが、こんな馬鹿みたいな記事も読みたくないのである。