空(間)論

ロハス・デザインという言葉が注目されています。人にとっての快適な空間デザインを考える不定期ブログを筑波から発信します!

「人間工学」を辞書で引いてみたが……

2006年01月13日 | Weblog
「身体の空間」に入ろう。

 もう、ぼくが書く前から、読み手のほうで、ああだろうこうだろうと、予想や希望が浮かんでるかもしれないな……。「身体の空間」と言えば、すぐ、「身体に楽な」ということになるだろう。体の休まる、疲れない、と言えば、たぶん君にもピーンと来た「人間工学」が答えを与えてくれるかな。立つとき、歩くとき、ゆったりと座っているとき……。う~ん、すぐ、気の利いたことが浮かんでこないときは、辞書でも引いてみよう。

 B5サイズで8センチの厚みがある『日本語大辞典』(講談社)で「人間工学」を引いてみたらこうある。
「Human engineering 機械や道具を人間にとって使いやすく設計するため、医学や心理学および工学などの境界領域に生まれた新しい学問。エルゴノミクス」
 で、「エルゴノミクス」を引いてみると、
「エルゴノミクス ergonomics人間工学」
 と書いてある。引いてみたのがバカみたい!
 すこし小さいA5サイズ、厚みは同じくらいの『広辞苑』第3版(岩波書店)には、こうある。
「人間と人間の取り扱う機械とを1つの系(人間-機械系)として考え、その関係を医学・物理学・工学の各方面から研究して、人間の生理的心理的特性に適合した機械を設計することを目的とする学問。アーゴノミクス」
 と、小型のわりにすこし詳しい(詳しいわりに、わかりにくい!)。で、「アーゴノミクス」を引いてみると、こちらは……ない。「エル」と「アー」は発音でゲルマンとブリティッシュの違いだろう。

 どうやら、機械を設計するときとか、工場を設計するときに気をつけるべき心得というようなものらしい。椅子やベッドやキッチンを設計するうえで、勉強しておくほうがいいことらしい。どうも「空間」という概念論とは、かけ離れているようだ。
 人間工学的には、あとはもう空間にしろ、家具にしろ、必要な設計ごとに各論的に自分で考えろということか。そんなときに、人体がどんな風に動き、どんな空間を占めるかを参照するのにいい本がある。デザイン系のひとは学校で目にしたかもしれないが、挙げておこう。計測値のデザイン資料『人体を測る』(小原・内田・上野・八田共著、日本出版サービス刊)。これはいい本だ。

 まてよ。こんなことはみんな、デザイナーに任せておけばいいことだ。依頼者としてはただひと言、「疲れない空間を頼むよ」と言いさえすればよかろう。
 
あとは、また次に。

人体を測る―計測値のデザイン資料

【資料】
●紀元前1世紀のローマのM・ウィトルヴィウス『建築十書』
「神殿の構成美は均整によって決まってくる。容姿の立派な人間のように、各部分が均整をもって割り付けられていなければならない」
●エルンスト・カップ(1808~96)技術哲学者
●『手と機械』F・ヘリッヒ ドイツの研究者
●黄金分割 golden section 1:1.618
●The nude (円に内接して人体を描いたもの)K・クラーク