読書とかいろいろ日記

読書日記を中心に、日々のあれこれを綴ります。

第300号 『本からはじまる物語』

2008年07月27日 | メルマガお奨め本
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週刊 お奨め本
2008年7月27日発行 第300号
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『本からはじまる物語』 恩田陸 他
¥1,300+税 メディアパル 2007/12/10発行
ISBN978-4-89610-090-7
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本日のマルマガで、なんと、第300号となりました。
300!
いつのまにやら300号。
なんだか夢のよう。
これもご高覧くださっている読者の皆さまのおかげです。
これからも面白い本を紹介できるよう、心がけます。
皆さまどうぞお付き合いくださいませm(_ _)m。

さて、その記念すべき300号には、やっぱ「本」にまつわる本を紹介したい。
つーことで、本書です。
タイミング的には外れてますけど(^^;ゞ。去年の本だもんなー。
まあ、こういうズレ方もこのメルマガならではってコトで、ご勘弁ください。


で、本書。『本からはじまる物語』。
18篇収録の短篇集。
200頁あまりの本の中に18篇。ということはつまり、一篇一篇はとても短い。
10ページ強。この短さの中に、「本」をテーマにしたお話を紡ぎあげる。
ワリと荒唐無稽なモノが多い。ファンタジーというか、オトギバナシというか。

たとえば恩田陸、「飛び出す絵本」。文字どおり、絵本が飛び出す。羽ばたいて。
絵本の棲む森に分け入るハンター。網を振り、絵本を狩る。おっとりとおとなし
い「ちいさいおうち」。力強く、網の中でも暴れ続ける「せいめいのれきし」。
ゴシック系の絵本が集う妖しの森には「うろんな客」が。
絵本たちは待っている。私たちが訪れるのを。
私たちの両親や、祖父母や、たぶん子どもたちや孫たちも、絵本に出会う。
深く果てしない豊かな森の中で。

本多孝好、「十一月の約束」。
古い商店街の小さな本屋で、登校拒否の中学生は一人の男性に声をかけられた。
60歳過ぎくらいの男性は、一冊の文庫本を薦めた。「君がそれを買って、読む。
一週間後、この店で会って、感想を私に伝える。そうしたら、それを買ってあげ
るよ」。さっきまで立ち読みしていた、18歳以下には売ってくれない系の雑誌を
餌にされ、僕はまんまとその本を買った。翌週、男性は現れなかったが、読書の
面白さを知った僕は、それからも文庫本を買い、それがきっかけでクラスメイト
と会話を交わすようになり、普通の中学生というものになっていた。
あのときの男性は、実は近所に住む作家だった。それを知ったときには、作家は
ずいぶん前に亡くなっていた。
僕は今でも本屋に行くと、彼を探してしまう。そして気がついた。本屋には、僕
と同じように、周囲を見回す人がいることに。
いるはずのない誰かを探して。

山本一力、「閻魔堂の虹」。
本書中、唯一の時代物。
弥太郎は貸本屋閻魔堂の店番である。ある日、小間物屋桔梗屋の奥付き女中が
やってきた。お嬢にいわれて絵草子を借りにきたのだ。桔梗屋の娘といえば、
仲町小町と誉れも高い評判の美形である。弥太郎は気を昂ぶらせて絵草子を選んだ。
返されてきた本は、濡れないように渋紙に包まれ、頁には鏝が当てられていた。
心遣いに、弥太郎はすっかりのぼせ上がった。
ところが数日後、お嬢本人が本を返しにやってきた。玄人のような派手な化粧、
見下すような態度、すっかり幻滅した弥太郎は、今までの心遣いはお嬢ではなく
女中のものだったと気づく。
閻魔堂の猫、タマが女中の足元で鳴く。

本が飛ぶというのはけっこう誰でも思いつくアイデアのようで、本書にも三篇ば
かり。書店員が主人公というのもいくつかあるし、あと、ネコは本と相性がいい
ようですね。ネコも多数出演。
なのでつまり、思わずひざを打つようなみごとな作品があるというわけではない
のだけど、作家ごとの個性が出ていて楽しめる。
うまい人はやっぱりうまい。

本からはじまった物語というものが、きっと人それぞれに、ある。
あなたにも。私にも。
これからも、物語が始まるような本を紹介していけたらなと思います。

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『本からはじまる物語』 恩田陸 他
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※ 収録内容
「飛び出す、絵本」 恩田陸
「十一月の約束」 本多孝好
「招き猫異譚」 今江祥智
「白ヒゲの紳士」 二階堂黎人
「本屋の魔法使い」 阿刀田高
「サラマンダー」 いしいしんじ
「世界の片隅で」 柴崎友香
「読書家ロップ」 朱川湊人
「バックヤード」 篠田節子
「閻魔堂の虹」 山本一力
「気が向いたらおいでね」 大道珠貴
「さよならのかわりに」 市川拓司
「メッセージ」 山崎洋子
「迷宮書房」 有栖川有栖
「本棚にならぶ」 梨木香歩
「23時のブックストア」 石田衣良
「生きてきた証に」 内海隆一郎
「The Book Day」 三崎亜記

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