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めざせ!介護の達人

元リーマンの専門学校生
学校で学んだいろんな事を徒然と書いております。ちと理屈っぽいページです。

役割性格

2004-09-24 | 戯言
今回は映画“es”についてのお話。
1971年 アメリカの心理学者ジンバルトによって行われた臨床実験「囚人と看守の実験」というのがありました。
この実験は戦後に行われた心理学の実験の中で“最悪”とも言われています。
その実験を2002年に映画化したのが“es”で、ドイツ語で「本能」という意味の題名です。

ではジンバルトの実験(アメリカ)とはどんなモノだったのでしょうか?

まず21人の中流階級でキリスト教信者である白人男性を集めました。
被験者の条件を同じようにするために敢えて揃えたそうです。
その21人をランダムに“看守11人”と“囚人10人”に振り分けました。
実験施設の中に刑務所の施設を作り、看守には制服を与え、囚人にも囚人服と囚人番号を与えました。
さらに看守役の人達には囚人を厳しく監視するように伝えてあり、実験がスタートしました。
実験開始2日後位から、看守役は看守らしく振舞い、抑圧的・暴力的な行動が目立ちはじめました。
一方、囚人役の人も気力が無くなり、その後人間としての尊厳が無くなってしまった態度が見られるようになりました。
実験開始後、4日目に囚人役の人が自我崩壊し発狂した為に、実験中止となった。被験者が受けた心理的苦痛が問題になり訴訟にまで発展した実験である。


この実験で得られた成果というのが、パーソナリティーを構成する“役割性格”と呼ばれるモノの検証でありました。
ヒトは置かれている環境や地位によって“自ら取る行動が変っていく”という事なんです。それが作為的に作られた環境であっても、変化していくという事が証明されました。

これが障害を持つ人達に当てはめてみると、
ネガティブな視点を持つ社会的態度(環境)が障害を持つ人の考え方をネガティブなモノにしていくんです。
障害を持つ事が“普通ではない”とか“可哀想なこと”という視点が社会一般的に存在しているん事が、障害をもつ人やその家族にネガティブな影響を与えているんですね。
しかしコレをポジティブに捉えれば、作為的に作った環境でも“役割性格”はポジティブなものに変えていけるという事が重要なんです。
私達、一人一人の意識が少しずつでもポジティブなモノに変っていければ世の中が変っていくという事なんです。
障害を持つ人達と触れ合う機会がありましたら、是非そういう視点で接してみてもらえると嬉しいです。


*看守が看守らしく振舞う所では“役割性格”という視点もありますが、ミルグラムの実験などで言われている“権威からの指示”も多分に含まれていると思われます。今回はその部分の説明は割愛します。