古文総合・第四回『更級日記』
解答・解説
みなさん、こんにちは!
一学期の授業お疲れさまでした。
17ページ『更級日記』の解答・解説をアップします。
参考にしてくださいね。
問一~問三は二学期にやりますから解答を記すにとどめ、ここではそれ以外の問題を解説しておきます。
『更級日記』の作者は、菅原孝標の女(むすめ)。
作者の父は地方長官として上総(千葉県)に赴任します。
まだ子供だった作者はもちろん、継母も一緒でした。
上総というのは、今の千葉県とはちがいます。
今の千葉は大都会ですが、当時はどうしようもない僻地でした。
継母はもともと京で宮仕えをしていた都会人ですから、地方ではいろいろと予想外の不愉快なことがあって、だんだん作者の父
親としっくりいかなくなっていきます。
それで離婚。
作者の家を出て行くことになりました。
継母は作者と仲がよかったようです。
3行目を見てください。
――「あはれなりつる心のほどなむ、忘れむ世あるまじき」
(「しみじみやさしかったあなたのお気持ちを、私が忘れるときはないでしょう」)
継母はそういっています。
そして、梅の木を指さして、作者に、
――「これが花の咲かむ折は来むよ」
(この梅の花が咲く時は帰ってきますよ)
といいおいて、作者の家から出て行きました。
そして、その翌年。
作者は素直に継母のことばを信じて継母の帰りを待っていました。
――「いつしか梅咲かなむ、(母は)『来む』とありしを、さやある」
(「はやく梅が咲いてほしい、(お母さんは、梅が咲いたら)『帰って来るつもりです』といっていたが、本当に帰ってくるのか
」)
作者はそう思いました。
これが問四です。
問四
まず傍線部a。
「梅咲かなむ」の「未然形+なむ」は、他者への願望をあらわす終助詞です。
意味は「~てほしい」。
「梅咲かなむ」で「梅が咲いてほしい」という意味になりますね。
正解は4。
次に、傍線部b。
「来むとありしを、さやある」。
これは、指示副詞の「さ」が、前にある「来」を受けていることに注目してください。
「あり」は「言ふ」という動詞のかわりに使われています。
(継母は)「来む」とあり(言ひ)し (お母さんは、「帰って来る」といったが)
↓
さやある(そうであるのか=帰って来るのか)
これで、正解は1であるのがおわかりいただけると思います。
さて、そう思って作者は梅を見守り続けています。
梅はいつ咲くのか・・・。
梅が咲いたら、お母さんが帰ってくる!
ところが、
――花もみな咲きぬれど、音もせず。
(花はすっかり咲いたけれど、(お母さんからは)何の頼りもない)
これが問四の傍線部cです。
「音もせず」。
「音」は重要単語で、「①うわさ ②頼り・訪れ」という意味。
「音にきく」という熟語は、「うわさに聞く」。
「音もせず」という熟語は、「便りもない・訪れもない」という意味になります。
この熟語にも気をつけてください。
正解は2。
継母を待ちわびた作者が、継母の歌をおくります。
それがAの歌。
――頼めしをなほや待つべき。霜枯れし梅をも春は忘れざりけり。
(あてにさせたことばを、やはり待つべきでしょうか。霜に枯れた梅をも、春は忘れずに訪れて花を咲かせましたよ)
これに答えた継母の歌。
それがBの歌です。
――なほ頼め。梅の立ち枝は契りおかぬ思ひのほかの人も訪ふなり
(やはりあてにして待っていなさい。梅の高く伸びた枝は外からも見えるので、約束もしていない思いがけない人も訪れるといい
ますよ)
問五を見てください。
問五
Aの「頼め」とBの「頼め」の文法的な違いをきく問題です。
これは第二回『大和物語』で勉強済みですね。
「頼む」には、四段活用「あてにする」と、下二段活用「あてにさせる」がありました。
傍線部⑦は「頼めし」。
「し」が過去の助動詞ですから、「頼め」は連用形。
連用形が「頼め」なら、「め・め・む・むる・むれ・めよ」と下二段で活用していることになります。
したがって、正解は4。
「(お母さんが私を)あてにさせた」という意味。
一方、傍線部⑧は「なほ頼め」。
これは下に「梅」があるので、一見連体形かと思えますが、四段なら連体形は「頼む梅」、下二段なら連体形は「頼むる梅」に
なるはずなので、連体形ではなく、「頼め」で文が切れていると考えます。
「なほ頼め。」で文が切れるなら、「頼め」は四段(ま・み・む・む・め・め)の命令形だと考えるのが自然です。
「やはり(あなたは)あてにしていなさい」と、継母が作者に命令しているわけですね。
最後に問七を。
これは「句切れ」を明らかにする問題です。
「句切れ」というのは、和歌の中にある文の切れ目のこと。
和歌は文の切れ目に「。」を打ちませんが、もし「。」を打つとしたらどこか、と考えてください。
当たり前のことですが、文の切れ目には、文末の形が来ているはずです。
日本語の文末の形は、代表的なものが四つあります。
①終止形
②命令形
③係り結び
④終助詞
の四つです。
①は、
荒れにけり。あはれいくよの やどなれや・・・
のような場合。
「けり」は終止形ですから、ここで文が切れるはずです。
②は、
なほ頼め。梅の立ち枝は 契りおかぬ・・・
のような場合。
「頼め」は命令形ですから、ここで文が切れます。
これがBの歌の句切れ。
初句で切れていますから、「初句切れ」ということになりますね。
③は、
頼めしを なほや待つべき 霜枯れし・・・
のような場合。
「や→べき」は係り結びですから、「べき」で文が切れます。
Aの歌がこれで、二句で切れていますから、「二句切れ」の歌です。
④は、
身にかへて あやなく春を 惜しむかな・・・
のような場合。
「かな」は終助詞(詠嘆)ですから、ここで文が切れます。
では最後に、解説でふれなかったところの解答を記しておきます。
問一 ①=5 ②=1 ⑥=2
問二 ③=1 ⑤=2
問三 ④=2 ⑨=4
問六 3
解答・解説
みなさん、こんにちは!
一学期の授業お疲れさまでした。
17ページ『更級日記』の解答・解説をアップします。
参考にしてくださいね。
問一~問三は二学期にやりますから解答を記すにとどめ、ここではそれ以外の問題を解説しておきます。
『更級日記』の作者は、菅原孝標の女(むすめ)。
作者の父は地方長官として上総(千葉県)に赴任します。
まだ子供だった作者はもちろん、継母も一緒でした。
上総というのは、今の千葉県とはちがいます。
今の千葉は大都会ですが、当時はどうしようもない僻地でした。
継母はもともと京で宮仕えをしていた都会人ですから、地方ではいろいろと予想外の不愉快なことがあって、だんだん作者の父
親としっくりいかなくなっていきます。
それで離婚。
作者の家を出て行くことになりました。
継母は作者と仲がよかったようです。
3行目を見てください。
――「あはれなりつる心のほどなむ、忘れむ世あるまじき」
(「しみじみやさしかったあなたのお気持ちを、私が忘れるときはないでしょう」)
継母はそういっています。
そして、梅の木を指さして、作者に、
――「これが花の咲かむ折は来むよ」
(この梅の花が咲く時は帰ってきますよ)
といいおいて、作者の家から出て行きました。
そして、その翌年。
作者は素直に継母のことばを信じて継母の帰りを待っていました。
――「いつしか梅咲かなむ、(母は)『来む』とありしを、さやある」
(「はやく梅が咲いてほしい、(お母さんは、梅が咲いたら)『帰って来るつもりです』といっていたが、本当に帰ってくるのか
」)
作者はそう思いました。
これが問四です。
問四
まず傍線部a。
「梅咲かなむ」の「未然形+なむ」は、他者への願望をあらわす終助詞です。
意味は「~てほしい」。
「梅咲かなむ」で「梅が咲いてほしい」という意味になりますね。
正解は4。
次に、傍線部b。
「来むとありしを、さやある」。
これは、指示副詞の「さ」が、前にある「来」を受けていることに注目してください。
「あり」は「言ふ」という動詞のかわりに使われています。
(継母は)「来む」とあり(言ひ)し (お母さんは、「帰って来る」といったが)
↓
さやある(そうであるのか=帰って来るのか)
これで、正解は1であるのがおわかりいただけると思います。
さて、そう思って作者は梅を見守り続けています。
梅はいつ咲くのか・・・。
梅が咲いたら、お母さんが帰ってくる!
ところが、
――花もみな咲きぬれど、音もせず。
(花はすっかり咲いたけれど、(お母さんからは)何の頼りもない)
これが問四の傍線部cです。
「音もせず」。
「音」は重要単語で、「①うわさ ②頼り・訪れ」という意味。
「音にきく」という熟語は、「うわさに聞く」。
「音もせず」という熟語は、「便りもない・訪れもない」という意味になります。
この熟語にも気をつけてください。
正解は2。
継母を待ちわびた作者が、継母の歌をおくります。
それがAの歌。
――頼めしをなほや待つべき。霜枯れし梅をも春は忘れざりけり。
(あてにさせたことばを、やはり待つべきでしょうか。霜に枯れた梅をも、春は忘れずに訪れて花を咲かせましたよ)
これに答えた継母の歌。
それがBの歌です。
――なほ頼め。梅の立ち枝は契りおかぬ思ひのほかの人も訪ふなり
(やはりあてにして待っていなさい。梅の高く伸びた枝は外からも見えるので、約束もしていない思いがけない人も訪れるといい
ますよ)
問五を見てください。
問五
Aの「頼め」とBの「頼め」の文法的な違いをきく問題です。
これは第二回『大和物語』で勉強済みですね。
「頼む」には、四段活用「あてにする」と、下二段活用「あてにさせる」がありました。
傍線部⑦は「頼めし」。
「し」が過去の助動詞ですから、「頼め」は連用形。
連用形が「頼め」なら、「め・め・む・むる・むれ・めよ」と下二段で活用していることになります。
したがって、正解は4。
「(お母さんが私を)あてにさせた」という意味。
一方、傍線部⑧は「なほ頼め」。
これは下に「梅」があるので、一見連体形かと思えますが、四段なら連体形は「頼む梅」、下二段なら連体形は「頼むる梅」に
なるはずなので、連体形ではなく、「頼め」で文が切れていると考えます。
「なほ頼め。」で文が切れるなら、「頼め」は四段(ま・み・む・む・め・め)の命令形だと考えるのが自然です。
「やはり(あなたは)あてにしていなさい」と、継母が作者に命令しているわけですね。
最後に問七を。
これは「句切れ」を明らかにする問題です。
「句切れ」というのは、和歌の中にある文の切れ目のこと。
和歌は文の切れ目に「。」を打ちませんが、もし「。」を打つとしたらどこか、と考えてください。
当たり前のことですが、文の切れ目には、文末の形が来ているはずです。
日本語の文末の形は、代表的なものが四つあります。
①終止形
②命令形
③係り結び
④終助詞
の四つです。
①は、
荒れにけり。あはれいくよの やどなれや・・・
のような場合。
「けり」は終止形ですから、ここで文が切れるはずです。
②は、
なほ頼め。梅の立ち枝は 契りおかぬ・・・
のような場合。
「頼め」は命令形ですから、ここで文が切れます。
これがBの歌の句切れ。
初句で切れていますから、「初句切れ」ということになりますね。
③は、
頼めしを なほや待つべき 霜枯れし・・・
のような場合。
「や→べき」は係り結びですから、「べき」で文が切れます。
Aの歌がこれで、二句で切れていますから、「二句切れ」の歌です。
④は、
身にかへて あやなく春を 惜しむかな・・・
のような場合。
「かな」は終助詞(詠嘆)ですから、ここで文が切れます。
では最後に、解説でふれなかったところの解答を記しておきます。
問一 ①=5 ②=1 ⑥=2
問二 ③=1 ⑤=2
問三 ④=2 ⑨=4
問六 3