みなさん、こんにちは。
二学期の授業お疲れさまでした。
授業でふれられなかったところを以下にまとめておきたいと思います。参考にしてくださいね。
まず、5行目。
□しかじ、うき世を厭ひ、まことの道に入りなむには。
(出家して、仏道に入るのにこしたことはないだろう)
「しかじ」に注意してください。これは頻出語です。
普通は「しかず」という形が辞書に出ています。「しかず」には二つの意味があり、
①AはBにしかず〈AはBに及ばない〉
(例)百聞は一見にしかず。〈百回聞くのは一回見るのに及ばない〉
② Bにしかず〈Bにこしたことはない〉
(例)逃ぐるにしかず。〈逃げるのにこしたことはない〉
②の方が大切ですから、しっかり覚えておいてくださいね。
また、よく出てくる形として、
※ しかじ、Bには。〈Bにこしたことはないだろう〉
(例)しかじ、まことの道に入りなむには(「な」は強意、「む」は婉曲の助動詞)。
〈仏道に入るのにこしたことはないだろう〉
というのがありますが、これは、「Bにしかず」をひっくり返して「しかず、Bに」にし、さらに「ず」を打消推量の「じ」に、「Bに」を強めて「Bには」にしたものです。
軍記物語などの中世の作品によく出るものなので注意してください。
さて、7行目以降は、とりあえず重要語のみを先にチェックしたいと思います。
まず8行目「心強し」。これは、「①意志が強い ②つれない」という意味。②がよく出るので気を付けること。
9行目の「あくがる」は有名ですね。「①離れさまよう ②疎遠になる」。
10行目の「なつかし」は大丈夫でしょうか。これは「なつく」という動詞の形容詞形です。「犬が人間になつく」というときの「なつく」。これを形容詞にしたものが「なつかし」ですから、クンクンクンと尾を振ってなついていきたい気分をあらわします。「①したわしい②好ましい」という意味。ここは②で訳しましょう。
12行目「やすらふ」は「休らふ」と書きます。「①立ち止まる ②滞在する ③ためらう」。
13行目「たづねかぬる」の「かぬる」は、補助動詞「かぬ」の連体形が、動詞の「たづぬ」にくっついています。補助動詞の「動詞+かぬ」は「~が難しい・~できない」という意味ですから、「たづねかぬ」で「訪ねることができない」という意味になります。
その下の「むざんなり」は「①残酷だ ②痛ましい」という意味。現代語でも「伊勢エビの無残焼き」といえば①の意味ですし、「英雄の無残な最後」といえば②の意味ですよね。
最後に19行目の「力なし」。これは「力及ばず」ともいい、「どうしようもない・仕方がない」という意味です。かなりよく出ますから、きちんと覚えておいてくださいね。
では、次に問題の解説を。
問三は「ねんじゅ」とよみます。意味は「念仏をとなえ、お経をよむこと」。
問四はわかりましたか?
いきなり解答をいうと、波線部aのような文体を「道行文(みちゆきぶん)」といいます。
□道行文・・・旅行く道の景色や感情を記した七五調の文。
(例)この世の名残 夜も名残
死ににゆく身を たとふれば
あだしが原の 道の霜
一足づるに 消えてゆく
夢の夢こそ あはれなれ (『曽根崎心中』)
「道行文」というのは、出題されるとすぐにわかります。まず「七五調」です。これで一目瞭然。例にあげた『曽根崎心中』は「このよのなごり・よもなごり・しににゆくみを・たとふれば・・・」と、ちゃんと七五調になっているでしょう?波線部aも「うめづのさとの・はるかぜに・よそのにほひも・なつかしく・おほいがはの・つきかげも・・・」とほぼ七五調。「おほいがはの」のところだけはちょとリズムが狂っていますが、あとはだいたい七五調です。
それから、この「道行文」は、本来が「道を行く」という意味ですから、必ず登場人物が旅をして行くときにあらわれます。旅ですから「地名」が出てくることが多いんです。傍線部aのところにも、「梅津の里」とか「大井河」という地名が出ているでしょう?
「道行文」は「悲しい場面」に登場するということも覚えておくといいですね。傍線部aは、横笛がズタボロになって嵯峨野の恋人を訪ねる場面です。例にあげた『曽根崎心中』も、お初と徳兵衛というカップルが大阪梅田の曾根崎に心中に行く場面。どっちも悲しい場面ですね。
「道行文」はこんなふうに、「七五調・地名・悲しい場面」ということを覚えておくとすぐにわかります。「道行文」はどんな作品でも出てくるわけではありません。軍記物語、謡曲(能の台本)、浄瑠璃(人形芝居の台本)に登場します。それも覚えておくと便利ですね。
問五は1が正解。これは単語のところを参照。
問六は「さまをかへ」がどういうことを意味しているかを問う問題。
正解は「出家する」あるいは「尼になる」「剃髪する」でもOK。
「出家する」という意味の熟語には、「世を厭ふ・世を離る・世を逃る・世を背く・世を捨る・形を変ふ・様を変ふ・頭下ろす・御髪下ろす・もとどり切る」などがあります。どれも頻出ですので、ここで確認しておいてください。
問七は1と5。これは「和歌の修辞」を勉強していただいたときに、この和歌を取り出して説明しましたので大丈夫だと思います。
問八は5が正解。
歌の意味は以前縁語をやったときに説明したので大丈夫だと思います。簡単に選択肢のあやまっているところを指摘しておくことにしましょう。
1は「父を恨んでいた」がおかしいです。2は「あなたに会えない運命を恨んでいた私」、また「弓を射るように」という訳も変ですね。「あづさ弓」は、下の「いる」にかかる枕詞です。枕詞は訳しません。3は「あなたと結ばれない運命をはかなんでいた」が変。4は「二人で父を恨んだ」がおかしいです。
問九は3が正解。これは平治物語のときにやりましたね。テキストの111ページにも軍記についてのまとめがありますので参考にしてください。
二学期の授業お疲れさまでした。
授業でふれられなかったところを以下にまとめておきたいと思います。参考にしてくださいね。
まず、5行目。
□しかじ、うき世を厭ひ、まことの道に入りなむには。
(出家して、仏道に入るのにこしたことはないだろう)
「しかじ」に注意してください。これは頻出語です。
普通は「しかず」という形が辞書に出ています。「しかず」には二つの意味があり、
①AはBにしかず〈AはBに及ばない〉
(例)百聞は一見にしかず。〈百回聞くのは一回見るのに及ばない〉
② Bにしかず〈Bにこしたことはない〉
(例)逃ぐるにしかず。〈逃げるのにこしたことはない〉
②の方が大切ですから、しっかり覚えておいてくださいね。
また、よく出てくる形として、
※ しかじ、Bには。〈Bにこしたことはないだろう〉
(例)しかじ、まことの道に入りなむには(「な」は強意、「む」は婉曲の助動詞)。
〈仏道に入るのにこしたことはないだろう〉
というのがありますが、これは、「Bにしかず」をひっくり返して「しかず、Bに」にし、さらに「ず」を打消推量の「じ」に、「Bに」を強めて「Bには」にしたものです。
軍記物語などの中世の作品によく出るものなので注意してください。
さて、7行目以降は、とりあえず重要語のみを先にチェックしたいと思います。
まず8行目「心強し」。これは、「①意志が強い ②つれない」という意味。②がよく出るので気を付けること。
9行目の「あくがる」は有名ですね。「①離れさまよう ②疎遠になる」。
10行目の「なつかし」は大丈夫でしょうか。これは「なつく」という動詞の形容詞形です。「犬が人間になつく」というときの「なつく」。これを形容詞にしたものが「なつかし」ですから、クンクンクンと尾を振ってなついていきたい気分をあらわします。「①したわしい②好ましい」という意味。ここは②で訳しましょう。
12行目「やすらふ」は「休らふ」と書きます。「①立ち止まる ②滞在する ③ためらう」。
13行目「たづねかぬる」の「かぬる」は、補助動詞「かぬ」の連体形が、動詞の「たづぬ」にくっついています。補助動詞の「動詞+かぬ」は「~が難しい・~できない」という意味ですから、「たづねかぬ」で「訪ねることができない」という意味になります。
その下の「むざんなり」は「①残酷だ ②痛ましい」という意味。現代語でも「伊勢エビの無残焼き」といえば①の意味ですし、「英雄の無残な最後」といえば②の意味ですよね。
最後に19行目の「力なし」。これは「力及ばず」ともいい、「どうしようもない・仕方がない」という意味です。かなりよく出ますから、きちんと覚えておいてくださいね。
では、次に問題の解説を。
問三は「ねんじゅ」とよみます。意味は「念仏をとなえ、お経をよむこと」。
問四はわかりましたか?
いきなり解答をいうと、波線部aのような文体を「道行文(みちゆきぶん)」といいます。
□道行文・・・旅行く道の景色や感情を記した七五調の文。
(例)この世の名残 夜も名残
死ににゆく身を たとふれば
あだしが原の 道の霜
一足づるに 消えてゆく
夢の夢こそ あはれなれ (『曽根崎心中』)
「道行文」というのは、出題されるとすぐにわかります。まず「七五調」です。これで一目瞭然。例にあげた『曽根崎心中』は「このよのなごり・よもなごり・しににゆくみを・たとふれば・・・」と、ちゃんと七五調になっているでしょう?波線部aも「うめづのさとの・はるかぜに・よそのにほひも・なつかしく・おほいがはの・つきかげも・・・」とほぼ七五調。「おほいがはの」のところだけはちょとリズムが狂っていますが、あとはだいたい七五調です。
それから、この「道行文」は、本来が「道を行く」という意味ですから、必ず登場人物が旅をして行くときにあらわれます。旅ですから「地名」が出てくることが多いんです。傍線部aのところにも、「梅津の里」とか「大井河」という地名が出ているでしょう?
「道行文」は「悲しい場面」に登場するということも覚えておくといいですね。傍線部aは、横笛がズタボロになって嵯峨野の恋人を訪ねる場面です。例にあげた『曽根崎心中』も、お初と徳兵衛というカップルが大阪梅田の曾根崎に心中に行く場面。どっちも悲しい場面ですね。
「道行文」はこんなふうに、「七五調・地名・悲しい場面」ということを覚えておくとすぐにわかります。「道行文」はどんな作品でも出てくるわけではありません。軍記物語、謡曲(能の台本)、浄瑠璃(人形芝居の台本)に登場します。それも覚えておくと便利ですね。
問五は1が正解。これは単語のところを参照。
問六は「さまをかへ」がどういうことを意味しているかを問う問題。
正解は「出家する」あるいは「尼になる」「剃髪する」でもOK。
「出家する」という意味の熟語には、「世を厭ふ・世を離る・世を逃る・世を背く・世を捨る・形を変ふ・様を変ふ・頭下ろす・御髪下ろす・もとどり切る」などがあります。どれも頻出ですので、ここで確認しておいてください。
問七は1と5。これは「和歌の修辞」を勉強していただいたときに、この和歌を取り出して説明しましたので大丈夫だと思います。
問八は5が正解。
歌の意味は以前縁語をやったときに説明したので大丈夫だと思います。簡単に選択肢のあやまっているところを指摘しておくことにしましょう。
1は「父を恨んでいた」がおかしいです。2は「あなたに会えない運命を恨んでいた私」、また「弓を射るように」という訳も変ですね。「あづさ弓」は、下の「いる」にかかる枕詞です。枕詞は訳しません。3は「あなたと結ばれない運命をはかなんでいた」が変。4は「二人で父を恨んだ」がおかしいです。
問九は3が正解。これは平治物語のときにやりましたね。テキストの111ページにも軍記についてのまとめがありますので参考にしてください。